(公財)不動産流通推進センターは4日、「不動産業のためのストック最適活用フォーラム2019」を開催。約200人が参加した。
フォーラムでは、「不動産エバリュエーションコンテスト2019」の優秀事例の発表と表彰が行なわれた。同コンテストは、「土地」と「建物」についての深い造詣をもとに対象不動産の真の価値を見極める「不動産エバリュエーション」の考えに沿ったプロジェクトを募集し、優秀事例を表彰するもの。今年4~7月に募集し、13作品が応募。大賞1事例、優秀賞1事例、準優秀賞2事例が選ばれていた。このうち、大賞を受賞した「ちくらつなぐホテル」(千葉県南房総市、(株)ブルー・スカイ・アソシエイツ)と優秀賞を受賞した「AO大宰府」(福岡県筑紫野市、青山地建(株))の代表が、それぞれ事例を発表した。
「ちくらつなぐホテル」は、小学校の保養所を取得し、宿泊施設にコンバージョンしたもの。改修にあたっては遵法性を維持するため減築したほか、事業費のうち2億3,000万円余をクラウドファンディングで捻出。地域の農家や木工所等と提携した体験ツアーも実施する。ブルー・スカイ・アソシエイツ代表取締役の金子岳人氏は「部屋ではなく地域を売る、非日常の体験を売る。今後もストーリーのある不動産や地域の利活用事例を推進していく」と語った。
「AO大宰府」は、3階建てオフィスビルを簡易宿所に改修した。改修にあたっては、インバウンドを意識して和風のデザインを前面に出し、5、6人のグループ利用を前提とした宿泊施設とすることで、観光や飲食で地域貢献できるよう配慮した。青山地建代表の青山博秋氏は「床面積200平方メートル以下の改修であれば容易に用途変更できるようになったこともあり、まさにESG投資に資すると考えチャレンジした。プロジェクト資金は、小規模不動産特定共同事業のスキームで回収したい。地域とのつながりがある当社ならではの取り組みとして、地方創生の起爆剤にしたい」などと語った。
表彰にあたり講評した明海大学不動産学部教授の中城康彦氏は「これまで不動産は、経済的価値だけが重視されてきた。今は象徴・造形、景観、歴史・文化などさまざまな側面からの社会的貢献が評価されるようになっている。両事例は、地域活性化を強く意識したものであり、資金調達や事業持続性でも特長があった」などと語った。