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2020/1/16

良質住宅ストック形成、売却検討者への訴求が課題

 国土交通省は1月15日、令和元年度住宅ストック維持・向上促進事業「『良質住宅ストック形成のための市場環境整備促進事業』シンポジウム」を開催した。

 良質住宅ストック形成のための市場環境整備促進事業では、平成28年度より住宅ストックの維持向上・評価・流通・金融等の一体的な仕組みを開発・普及する取り組みに対して支援を行なっている。事業主体は宅建事業者や不動産鑑定士、建築士などが連携した協議会で、現在、39協議会が事業を実施。うち26協議会が開発を完了させ試行中、13協議会が開発中となっている。

 今回のシンポジウムでは、(株)ブルースタジオ専務取締役の大島芳彦氏と(株)リクルート 住まいカンパニーSUUMO編集長兼SUUMOリサーチセンター長の池本洋一氏による基調講演に続き、5協議会が取り組みや成果について発表。その後、意見交換を実施した。

 大島氏は、「選ばれる住宅、選ばれる街」をテーマに講演。空き家を“問題”ではなく“資源”と捉えるとさまざまなビジネスが生まれる社会的共通資源になること、不動産価値の本質は、敷地ではなく地域にあること、今の家を購入する人の感覚は、家を造る・買うではなく“暮らしを編集する”であること、といった持論を事例を交えて展開した。
 池本氏は、「良質ストックの『良質の本質』」をテーマに講演。既存住宅「耐震性能」「断熱性能」を重視する点として挙げるユーザーが多い一方で、実際には内装済みといった“見た目重視”で購入するユーザーが多い現状を踏まえ、“良質”の本質を見極める必要があると指摘した。

 その後、各協議会が取り組みを紹介。その内容および同事業の総合的検討事業者である(株)ニッセイ基礎研究所の都市政策シニアリサーチャー・塩澤 誠一郎氏が指摘した、現時点での課題・その解決方法を踏まえて意見交換がなされれた。(同氏は、会の冒頭、現時点での課題として「試行につながらない」「消費者への通知」を挙げ、その解決方法として「売却検討者への訴求」「賃貸という選択肢」「買い主への周知」を提示)

 池本氏は、講演で触れた「良質ストックの本質」について、「協議会の取り組み発表を聞いて、耐震改修をしただけ、断熱性能を向上しただけ、では金融機関や消費者から評価を得られないことが分かった。協議会の取り組みに見られるよう、クォリティーの追求やデザインの向上などの何かしら突き抜けた付加価値が求められる」とした。また、「新たな仕組みをつくるだけでなく、既存の仕組みの中で使える仕組みを見極め、それらを組み合わせることで、補助金活用や税制面での優遇など、消費者が得られるメリットを最大化させることの検討も必要」などとコメントした。
 大島氏は、売却検討者への訴求手段として、「既存住宅のモデルハウスなども有効だが、既存住宅を購入した人が、そこでどういう暮らしを手に入れたかを伝えることが非常に大事。ある程度類型化できるので、モデルファミリー、モデルケースなどを用意するといった手段が考えられる」などと話した。

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