(株)東京カンテイは29日、「新築・中古マンションにおける修繕積立金の最新動向」を発表した。
国土交通省による「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(2011年発表)が公表されて約10年が経過したのを機に、直近10年間における修繕積立金の水準がどのように変化しているのか、修繕積立金ガイドラインに示されている“目安値”と比較、分析した。
対象物件は、同社データベースに登録された、1985~2020年に竣工した分譲マンション。(1)新築分譲時の各住戸における1平方メートル当たりの修繕積立金および同修繕積立基金のレンジが大きく広がっていない、(2)中古流通事例が連続もしくは断続的に発生して経年での修繕積立金の変化がある程度把握できる物件を選定した上で集計した。
直近10年間(11~20年)における首都圏での新築マンションの修繕積立金の推移をみると、「15階未満/建物延床面積約5,000平方メートル未満」の物件では、修繕積立金ガイドラインが公表された11年当時で1平方メートル当たり80.2円と、ガイドラインの目安下限値(同165円)の半分にも届いていなかったが、12年以降は修繕積立金および修繕積立基金は緩やかに上昇。18年には修繕積立金と修繕積立基金(月額換算)の合計が同166.7円と、初めてガイドラインの目安下限額を上回った。20年は同181.6円だった。
この10年間での修繕積立費用の変化を見ると、修繕積立金が同80.2円→同107円(33.4%上昇)に、修繕積立基金は同5,353.1円→同8,949.6円(67.2%上昇)といずれも上昇。最近分譲されている新築マンションにおいては、修繕積立基金が比較的高めに設定されていることがわかった。
また、竣工後の分譲マンションについても、修繕積立費用の状況を調査した。11年に竣工した分譲マンションについて、竣工から10年目までの修繕積立費用の実績値が修繕積立金ガイドラインの目安下限値をどのくらいクリアしているのかについて分析した。
「15階未満/建物延床面積約5,000平方メートル未満」では、首都圏で調査対象となった98物件のうち、基準をクリアしたのは32物件。新築分譲時の費用設定では目安下限値をクリアしたのは10物件だったが、築後10年間の間に修繕積立金を増額した22物件については、目安下限値を満たしていた。
同社では「調査対象物件の約3分の2に相当する65物件では、修繕積立金の増額が必要となる。ほとんどは初期設定やその後の増額が思うように進んでいないとみられるが、その時期が後ろ倒しになるほど、値上げの幅がさらに上振れるだろう」と分析している。