不動産ニュース / 調査・統計データ

2021/5/31

タワマンの管理、大規模修繕等に課題

 大和ライフネクスト(株)の分譲マンション総合研究所「マンションみらい価値研究所」は、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)との共同研究で、タワーマンションの管理データを用いて、居住実態、建物・設備の管理状況、管理組合の運営実態を分析。31日に調査結果を発表した。

 タワーマンションの管理上の課題の把握を目的に実施したもの。大和ライフネクストが管理を受託する、地上20階以上のマンション95棟の管理データを用いた。

 同調査では、実際に居住している区分所有者と居住していない(賃貸や投資目的で保有する)区分所有者との間で管理に対する価値観が異なることや、住居と店舗・事務所部分で区分所有者の意向が一致しないことなどにより、大規模修繕工事等の多額の支出などに向けた合意形成が困難となる可能性があることが分かった。多額の支出を伴う合意形成の難しさゆえに、大規模修繕工事実施を先送りしているケースや、特定の期に集約せず、単年度の支出を抑える形で中小規模の工事を繰り返すケースも見られた。1回目の大規模修繕工事の実施時期は築14年程度と、一般的なファミリータイプのマンションに多い12年周期よりも長期化する傾向があった。

 運営面では、区分所有者間の意見・立場の違いが大きく、かつ理事会への要求レベルも高く、総会運営は困難となりがちであるとし、戸数が多く、総会における意見交換や議論集約に限界があることから、役員が主導して議案を決め、書面による議決権行使を中心にするなど、通常のファミリータイプのマンションとは異なる運営が求められているとした。

 共用部分が充実したタワーマンションでは、一般的なファミリータイプのマンションに比べて区分所有者の資産価値維持に対する意識も高いとした一方、利用が多様化し、非居住者が出入りする住戸が存在するマンションの場合は、マナー違反などのトラブル等のリスクも想定されるとした。建物・維持管理の難易度が高いことから、知見・ノウハウを有する管理会社の果たす役割が極めて大きいとした。

 それらの実態を踏まえ、同社では、管理組合において、タワーマンションとしての居住者の期待や資産価値とのバランスを考えたコストの配分などの管理水準について合意形成を図り、その水準に沿った継続性のある管理組合運営を行なう必要があるとした。また、販売会社等は、購入希望者に対して一般的なファミリータイプのマンションとは異なる点や、災害リスク、永住する場合の自らのライフプランとの整合性を理解できる説明をあらかじめ行なうべきとした。

 また、現在国等において検討されているマンションの管理状況に関する評価制度について、タワーマンションは築年数が浅い場合が多く、一般的なマンションと比べて評価が高くなりやすい一方で、管理組合の意思決定の状況が評価に反映されにくく、購入希望者へ適切に情報が伝わらないことが懸念されるとした。タワーマンションの特徴を反映したマンション標準管理規約の制定や、タワー型の建築・設備を専門とする相談窓口の設置、専門家の育成などを図るべきであるとした。

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