不動産ニュース / 調査・統計データ

2022/8/18

客付苦戦ビルの特徴、100坪以上、徒歩6分超など

 三菱UFJ信託銀行不動産(株)コンサルティング部はこのほど、「募集期間が長期化しやすいオフィスビルの特徴」と題したレポートを発表した。

 募集期間が長期化したビルに着目し、立地や規模などどのようなビル属性が影響しているのかを分析し、テナント募集が長期化しているビルの特徴を抽出。さらに、エリアによって大きな開きのある募集期間の長期化が、立地エリアなどの地域特性で説明されるものなのか、個別のビルスペックによるものなのかを分析している。
 具体的には、東京都心部のオフィスビル約2,400棟について、機械学習モデルで評価。各要素が募集期間の長期化にどの程度影響を与えるとモデルが評価したか(寄与度)をSHAP値と呼ばれる指標を用いて定量化した。

 募集期間が長期化したビルであると判別する際に強く影響した(寄与度が大きい)項目は、「募集区画の面積」「エリア」「想定賃料(エリア平均対比)」であった。一方で、寄与度の大きさは相対的に小さいものの、募集期間が長期化しやすいビルの判別において特徴的な傾向を示したものは、「築年数」「最寄り駅距離」。

 「築年数」の影響を確認したところ、築古ビルほど募集期間が長期化しやすいといった単純な比例関係ではなく、築40年手前あたりから、築年数が長くなるにつれて寄与度が大きくなる傾向がみられた。1980年代前半より前に竣工した旧耐震などの築古ビルでは、BCPの観点等から検討対象とするテナントの層が限定され、募集期間が長期化しやすいと分析している。

 一方で、築30年半ばあたりまでは、寄与度はおおむねゼロ程度で変化はなし。築10年でも30年でも、テナントの検討対象という点では大きな差は見られず、築年の差は賃料で調整されていることがうかがえた。

 最寄り駅距離については、駅から徒歩6分までのところは寄与度に大きな差はなく、徒歩6分を超えたあたりから、駅距離が遠いほど寄与度は大きくなった。

 募集区画の面積については、大きいほど寄与度が大きくなる傾向が見られた。まとまった面積のオフィス床はテナント需要が多く難いことから、リーシングが長引きやすい状況とみられる。

 なお、規模や賃料築年数といった影響を除いた上でエリアの地域特性として募集が長期化しやすい傾向にあるのは、有明・台場、豊洲、汐留といった湾岸部に立地しているエリアと指摘。ほかにも賃料相場の高い丸の内・大手町エリアでは寄与度が高いとした。

 モデルの出力結果を定量的に解釈すると、「100坪程度以上の募集面積」「周辺相場より賃料が高い」「1980年代前半以前に竣工」「最寄り駅から徒歩5~6分超」「湾岸部エリアに立地」を、リーシングに苦戦しやすいビルの特徴としてまとめている。

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