(公社)日本不動産学会(JARES)は24日、シンポジウム「都市再生に余剰容積移転がどう貢献できるか」をオンライン形式で開催した。
2020年に、東京都が都市再生の見地から都市郊外地における緑地の保全・創出、木造住宅密集地域の解消等に資する取り組みを「域外貢献」と位置付けて都市中心部等の容積率を緩和する方針を示した。これを受けて、土地利用活動に伴う公共施設に対する負荷の上限設定や都市環境の確保など、さまざまな視点から総合的に勘案することが重要であるという基本認識に立ち、多角的な見地から理論的・実務的に考察した。
前半は個別報告として、国土交通省都市計画課都市機能誘導室長の後藤暢子氏、中央大学常任理事・中央大学法科大学院教授の大貫裕之氏、政策研究大学院大学教授の福井秀夫氏、明海大学不動産学部長の中城康彦氏、中央大学商学部教授の阿部雪子氏の5人がそれぞれのテーマで研究発表を行なった。後藤氏が都市計画における容積率関連制度について、現行制度を説明した後、大貫氏は「容積率特例制度の隔地貢献」をテーマに、その問題点や課題を指摘。中城氏は「余剰容積利用権の資産価値と評価」と題して、容積率を移転させるという“空間を利用する権利”の取引に関する資産性やその評価の在り方について語った。このほか、阿部氏は税法の観点から、福井氏は法と経済学の観点から余剰容積移転について述べた。
後半は個人報告を行なった5人がパネルディスカッション。福井氏は「容積率取引が行なわれたとして、取引後は増減した容積率を反映させた資産評価によって、課税すべきだ。容積率の売買は不動産の売買に相当するものと考えられ、税法上の整理やルールづくりが必要になる」などと述べた。中城氏は「余剰容積率の移転は、都市再生に有用なものであれば積極的に活用していくべきだと考えられる。しかし、さまざまな側面で課題がある。その解消に向けて、基礎的な制度整備が必要になっている」などと語った。