不動産ニュース

2023/9/19

令和5年基準地価、業界各トップがコメント

国土交通省が19日に発表した「令和5年 都道府県地価調査」結果を受け、業界団体・企業のトップが以下のコメントを発表した(以下抜粋、順不同)。

■(一社)不動産協会 理事長 吉田淳一氏
■(一社)不動産流通経営協会 理事長 太田陽一氏
■(公社)全国宅地建物取引業協会連合会 会長 坂本 久氏
■(公社)全日本不動産協会 理事長 中村裕昌氏
■三井不動産(株) 代表取締役社長 植田 俊氏
■三菱地所(株) 執行役社長 中島 篤氏
■住友不動産(株) 代表取締役社長 仁島浩順氏
■東急不動産(株) 代表取締役社長 星野浩明氏
■東京建物(株) 代表取締役 社長執行役員 野村 均氏
■野村不動産(株) 代表取締役社長 松尾大作氏

■(一社)不動産協会 理事長 吉田淳一氏

 今回発表された都道府県地価調査では、全国の全用途平均・住宅地・商業地のいずれも2年連続で上昇し、上昇率が拡大した。また、地方圏においても住宅地、商業地ともに平均で上昇に転じるなど、地域や用途により差はあるが、地価の回復傾向が全国的に進んだ。コロナ禍から脱却し社会経済活動の正常化が進む中、我が国経済の緩やかな回復が地価にも反映されたものと認識している。先行きについては、物価上昇、世界的な金融引締め等による海外経済の下振れリスク、ウクライナ情勢の長期化等、非常に不透明な状態にあり、不確実性も高まる中、今後の地価動向についても十分に注視していく必要がある。

 こうした中、DXやGX等を加速させ、持続的な成長を実現するためには、我が国全体の投資を拡大することにより様々な社会課題の解決を経済成長のエンジンに変え、我が国の競争力を一層強化していくことが重要である。

 とりわけ、来年度には3年に一度の固定資産税の評価替えが行われる予定だ。経済を腰折れさせることなく、安定的な設備投資の促進等による経済の活性化や地方創生等の取組みを進めるためには、事業者の経営環境や、経済情勢、地価動向等を踏まえつつ、中小企業を含む様々な事業者の税負担軽減を図ることが重要であり、将来への見通しを高める観点からも、土地の固定資産税の負担調整措置の延長等必要な対応を講ずることが不可欠だ。

■(一社)不動産流通経営協会 理事長 太田陽一氏

 新型コロナの影響で弱含んでいた地価は、コロナ後の景気が緩やかに回復するなか、全国的に回復傾向が進んでいることを確認した。今回、三大都市圏において、商業地を中心に上昇率が拡大しただけでなく、地方圏においても住宅地が31年ぶり、商業地が4年ぶりに上昇に転じたことに注目している。住宅地では、地方四市を中心に、地価上昇の範囲が都市中心部から周辺部にも拡大し、生活スタイルの変化による需要者ニーズの多様化ともあいまって、地価の回復と上昇範囲の拡大傾向が明確になったと理解している。

 東日本不動産流通機構によると、首都圏マンションの成約価格は39ケ月連続で前年同月を上回った。成約件数は、3ケ月連続で前年比プラスとなっており、地域差はあるものの昨年までの減少基調にこのところ下げ止まりの傾向が見られる。消費者の根強い住宅取得ニーズに支えられ、営業現場において住宅取引は概ね堅調と言える一方、今後の価格や金利の動向に引き続き注意を払う必要がある。

 景気は緩やかに回復しているものの、海外景気の下振れが景気を下押しするリスクもある。地価が安定的に推移し、経済を成長軌道に乗せていく上で、住宅・不動産流通市場が果たす役割は重要であり、当協会としても内需の牽引役として、安全・安心な不動産取引ができる市場の実現とさらなる活性化に鋭意取り組んでまいりたい。

■(公社)全国宅地建物取引業協会連合会 会長 坂本 久氏

 令和5年の都道府県地価調査は、全用途平均が2年連続で上昇したことから堅調に推移している結果であった。

 住宅地は、これまで都心部を中心に周辺に上昇していた範囲が拡大しており、また、商業地もインバウンド効果による観光地周辺や再開発事業が進展している地域でも回復傾向が示されている。

 新型コロナの影響で弱含んでいた国内景気の回復とともに、これまで、都心部が中心であった地価の回復傾向が全国的にも波及していることが伺える。

 一方、少子高齢化、人口減少の影響により弱含みを示している地方部も一部では見受けられることから、今後、こうした地域をはじめ、社会的な課題である空き地・空き家の増加要因とならないか懸念するものである。

 先般、改正された空き家特措法の施行を本年末に控え、空き家の活用拡大、適正な空き家の管理など政策の確実な実行が望まれるところである。

 全宅連では、令和6年の税制改正においては、地価上昇による急激な負担増とならないよう土地に係る固定資産税の負担調整措置の適用期限延長の実現が重要である。併せて、昨今の建築資材の高騰や金利上昇局面において、住宅購入者への支援策として、住宅ローン減税制度の延長にも向けて鋭意取り組んでいく。

■(公社)全日本不動産協会 理事長 中村裕昌氏

 令和5年の都道府県地価調査においては、全国の全用途平均、住宅地、商業地ともに2年連続で上昇し、上昇率も拡大した。また、三大都市圏に加えて、地方四市、とりわけ札幌市、福岡市の上昇基調は勢いを増しており、その他の地方圏においても全用途平均において30年続いた下落が横ばいに転じるなど、地価公示に続いて脱コロナによる地価の回復傾向がより鮮明になったといえる。

 今回、用途別の全国変動率において、前年、札幌近郊・隣接市で占められていた住宅地の上位10位以内に沖縄県の恩納村と宮古島が入り、また商業地では熊本県の大津町が上昇率32.4%で1位となったほか、同じく熊本県の菊陽町もランクインしている。前者は国内外観光客のV字回復を当て込んだホテル用地需要が地価を押し上げたもの、また後者は台湾半導体メーカーの進出決定によって周辺地域一帯の住宅・事務所需要が高まったことによるものと考えられる。いずれも本年の調査結果の特筆点であるとともに、地方創生の一つの態様を示すものとして興味深く受けとめている。

■三井不動産(株) 代表取締役社長 植田 俊氏

 先日発表された都道府県地価調査では、全国の全用途平均・住宅地・商業地のいずれも2年連続で上昇し、上昇率が拡大しました。また、地方圏においても住宅地、商業地ともに平均で上昇に転じるなど、地域や用途により差はあるものの、地価の回復傾向が全国的に進みました。

 特に地方圏での上昇は、各地域の特色を活かした産業創造の進展が一因と考えます。また都市部においては、コロナ禍以降、人の流れが活発化し、例えばオフィスにおいては出社回帰の動きがみられるほか、住宅市況は堅調な需要に支えられ、ホテルや商業施設における集客がコロナ前の水準で推移するなど、わが国の経済活動の回復が土地の価値へ反映された結果であるととらえています。

 当社としましても、コロナ禍で再認識された「リアルの価値」を一層重視した「行きたくなる」街づくりに加え、従来の事業分野にとどまらない様々なイノベーションを創出していくことが重要であると考えます。時代の変革期にあるいま、需要を座して待つのではなく、当社自らが積極的にアクションを起こし、需要を創出し、産業創造による付加価値創出のお手伝いをする、いわば「産業デベロッパー」という「プラットフォーマー」として、社会の課題解決に貢献してまいります。

■三菱地所(株) 執行役社長 中島 篤氏

 令和5年 都道府県地価調査は、全国の全用途平均・住宅地・商業地いずれも2年連続の上昇となり、上昇率も拡大した。インバウンドを含めた観光客回復を受けた多くの観光地をはじめ、人流回復を受けた店舗やオフィス需要は底堅く推移、地価回復がみられたほか、都市中心部等の生活利便性に優れた住宅地では、地価上昇が継続している。経済活動が持ち直している一方、物価上昇、金融資本市場の変動等の影響には依然として注視が必要と認識している。

 インバウンド需要回復の影響を強く受けるホテル・商業施設は、当社でも利用者数や売上が増加している。都内では、丸ビル開業20周年・新丸ビル開業15周年という節目に商業ゾーン「マルチカ」「丸の内ハウス」をリニューアルオープンし、都市型商業施設「エムズクロス人形町」も開業した。エムズクロス人形町の飲食ゾーン「ハシゴ楼」は想定を上回る集客数となっている。沖縄では「ヒルトン沖縄宮古島リゾート」を開業したほか、「キャノピーbyヒルトン沖縄宮古島リゾート」の着工を迎えるなど、今後も観光産業や地域経済の活性化に貢献できる地方の開発にも力を入れていく。

 丸の内エリアのオフィス空室率は2%台の低水準で推移し、賃料収入も前年対比で増加している。リモートワークやハイブリットワークが定着するなか、立地をはじめ、ABW(Activity Based Working)やコミュニケーションの仕掛けがある、より質が高く、柔軟な働き方ができるオフィスへの移行が進んでいると捉えている。「常盤橋タワー」のような共用部やサービスが充実したセンターオフィスの整備に加え、丸の内エリアにおけるフレキシブルオフィスを2030年までに3万坪まで拡大させることを計画している。今後も多様なオフィス環境の整備を通じ、新しいアイデアやビジネスを創出する空間を提供すると同時に、そこで働く人々の豊かなライフスタイルをサポートしていきたい。

 住宅は、テレワークの浸透などにより生活スタイルの多様化が定着し、「ザ・パークハウス 三郷」や「ザ・パークハウス 松戸」など、郊外の駅近や再開発エリアの販売好調が継続している。都心では住宅価格上昇が危惧されるが、ニーズは依然として底堅く、販売前にもかかわらず「ザ・パークハウス 代々木大山レジデンス」はかなりの購入希望が寄せられるなど、価格に見合う商品設計が評価されている。また、国産木材を利用した「ザ・パークハウス 聖蹟桜ヶ丘」や、ZEH マンション「ザ・パークハウス 松戸本町」など、持続可能性に配慮した住宅ニーズにも応えていく。賃貸マンションでは、居住者が24時間使用できるコワーキングスペースを併設した「The Parkhabio SOHO」シリーズが好調である。本シリーズ第3弾の「The Parkhabio SOHO 祐天寺」は竣工を迎え、リーシングも順調に進んでいる。

 日々刻刻と社会が変化するなか、常に先を見つめ、サステナブルに成長していくことが重要と考えている。スピード感をもってチャレンジを続け、新たな価値を創造するとともに、夢や感動をお客さまと共有するまちづくりを進めていきたい。

■住友不動産(株) 代表取締役社長 仁島浩順氏

 世界的なインフレと利上げ、ウクライナ情勢の長期化など、先行き不透明な情勢が続く一方で、国内では物価や雇用など、欧米とは異なる経済情勢のもと、金融緩和政策も維持されており、企業業績は上向いている。加えて、インバウンドを含む観光需要の回復や各種イベントの再開など、コロナ禍収束により個人消費も回復基調が続いている。

 こうした中、商業地では、ホテルや商業店舗の需要が一層高まりコロナ前に戻りつつある。東京のオフィスビル市況も、企業の出社回帰や採用増を背景に、働きやすいオフィス環境整備を目的とした移転や増床など前向きな需要が顕著になっている。

 住宅地は、資材高などを反映して戸建やマンションの販売価格が上昇したものの、引き続き低金利環境や住宅取得支援策などが下支えとなり、希少性の高い都心や生活利便の高い地域を中心に需給の均衡が何とか保たれている。

■東急不動産(株) 代表取締役社長 星野浩明氏

 今回の都道府県地価では全国の全用途平均は2年連続で上昇し、上昇率が拡大した。新型コロナウイルスの影響が緩和し、インバウンドの復活などで都市部を中心に人流が回復し、商業地の需要が高まっていること、テレワークからの回帰で都心のオフィス需要の縮小懸念が後退したこと、都市部を中心に住宅需要の活況さが続いていることなどが影響している。ただ、今後の金利上昇リスクや、ロシア・ウクライナ情勢や中国の不動産需要の減速などによる世界経済の先行き不安、円安や物価上昇による国内景気に悪影響が生じる可能性など不安定要素もあり、当面は国内の地価動向を注視していく必要があるとみている。

 住宅地では全国平均の住宅地が2年連続の上昇となり上昇基調が続いている。全国の住宅地をみると都市中心部の希少性の高い立地や、交通利便性等に優れた周辺地域では地価上昇が継続するなど根強い需要がある。足元の低金利環境の継続など政策面でも需要を下支えしている効果がある。当社は東京都心部ではJR 埼京線の十条駅直結の再開発マンション「THE TOWER JUJO」など利便性の高い物件、関西では最上階に共用部を設けたタワーマンション「ブランズタワー大阪本町」を提供するなどして、旺盛な住宅需要の獲得を進めている。

 商業地も全国平均で2年連続の上昇となった。都心部を中心に店舗の需要のほか、オフィス需要なども堅調で、地価上昇につながっている。インバウンドの復活などで都市中心部の地価回復は当面続くとみている。当社では今年11月に竣工する「Shibuya Sakura Stage」をはじめとする「広域渋谷圏」の100年に一度ともいわれる再開発を東急グループで連携して進めている。再開発ビルの開発で渋谷のオフィス床面積の拡大や渋谷駅周辺のバリアフリー化を進め、渋谷の街の魅力向上に努めている。東京都心ではオフィス賃料の下落、空室率の上昇などがみられる地域もあるが、当社グループのメイングラウンドである渋谷はIT やコンテンツ産業を中心にオフィス需要が旺盛で賃料水準も安定し、空室率も低い状態が続いている。

 また、今回の地価の上昇地点をみると北海道、特に札幌市近郊の好調さが目立つ。2030年度の北海道新幹線の札幌駅への延伸を見据え、札幌駅周辺を中心に市内で開発が進んでいるほか、グループの東急コミュニティーが管理する北広島市の新しい野球場「エスコンフィールドHOKKAIDO」の周辺でも地価上昇が続くなど、札幌市近郊部の住宅地、商業地にも地価上昇の流れが波及している。北海道の中で札幌市とその近郊に人口集積が進んでいることも影響している。当社も札幌の中心部「すすきの」の玄関口でホテルや商業施設のほかシネマコンプレックスなどが入る2023年秋開業予定の大型再開発「COCONO SUSUKINO」を手掛けているほか、環境先進型の分譲マンション「ブランズ新札幌」を開発するなど、注目度が高まる札幌市内でも積極的に開発事業を進めている。当社は「環境先進企業」を目指し、環境に配慮した事業展開を全国で進めているが、特に北海道では小樽市や松前町、釧路市などで風力発電や太陽光発電所を開発・運営しているほか、石狩市では再生可能エネルギー100%のデータセンターの開発を計画するなど、北海道を重点地域の1つとして事業を推進している。また、インバウンド需要が回復した国際リゾートのニセコでは大規模開発計画「Value up NISEKO 2030」を進めている。

 中長期的な不動産市場については、足元では国際経済情勢などのマクロ要因などを注視する必要があるが、不動産市況は回復基調が続くだろう。中長期的には少子高齢化による単身世帯の増加や空き家問題、「働き方改革」によるオフィス環境の変化等、不動産市場を取り巻く環境の変化が続くが、国内外で環境への意識が高まるなか、今後の不動産市場では「環境」が大きなテーマになるとみている。当社は再生可能エネルギー事業に注力しており、この再エネ電気で2022年12月、オフィスビルなど保有する全244施設の再エネ化を完了した。今後も環境に配慮したオフィスビルやマンションの開発を進めるなど、積極的に環境対応をしていく方針だ。

■東京建物(株) 代表取締役 社長執行役員 野村 均氏

 今年発表された地価調査では、地域や用途により差はあるが、三大都市圏を中心に上昇率が拡大し、地方圏においては、全用途平均・住宅地で31年ぶりに上昇に転じるなど、地価の回復傾向が全国的に進んだ。この背景には、コロナ禍からの社会経済活動がほぼ平時に戻るなか、堅調な分譲マンションマーケットや機能性・利便性の高いオフィス需要の底堅さに加え、再開発により利便性の向上が見込まれる地域の増加、回復傾向が顕著なホテルや商業施設、不動産投資市場の好調さなどがあると考えられる。

 オフィスマーケットは、全般的には空室率高止まり、賃料下落などが見られるが、コロナ禍を経て、オフィス回帰や業容拡大、人材確保を目的とした好立地・高グレードオフィス需要は、その優位性で底堅い。さらにサステナビリティやウェルビーイングなどへの関心の高まりから、それらに対応した付加価値の高いオフィスビルは高い需要が想定される。当社も地権者の皆様と進めている「東京駅前八重洲一丁目東地区第一種市街地再開発事業(A地区・B地区)」をはじめとした再開発事業では、サステナビリティやウェルビーイングなどに配慮したオフィスビルづくりを目指している。

 ホテル・商業施設マーケットは、政府による行動制限や入国制限が無くなり、インバウンドの増加や人流の回復を受けて全国主要都市を中心に稼働率の上昇や売上回復傾向が続いている。よって、ホテルや都心部を中心とした商業施設のマーケットはこの先、より堅調に推移していくものと考えられる。物流施設は、空室率が上昇傾向にあるものの、ECのさらなる普及や「2024年問題」への対応などを背景に、自動化などの先進性・機能性、快適性を兼ね備えた一層付加価値の高い物流施設が求められることから堅調に推移していくものとみている。

 分譲マンションマーケットは、低金利、住宅ローン控除などの政策効果を背景として、実需層の需要は底堅い。都心部のほか郊外や地方都市でも生活利便性の高い立地での販売は引き続き堅調である。一方、建築費高騰による影響も含め住宅用地取得環境が厳しさを増しているほか、住宅ローン金利上昇などの懸念も生じているが、都心部を中心とした底堅い需要は継続するものとみている。

 現在、地政学リスク、世界的な金融引き締めによる景気の下振れリスク、エネルギー・資源価格、国内物価・金利の動向、建築費高騰、急激な為替の変動等により、先行きは依然として不透明な状況が続いているため、地価動向を一層注視していく。同時に、お客様のニーズの変化を的確に捉え、今後も人々が安全・安心・快適に過ごせるまちづくりを推進していきたい。

■野村不動産(株) 代表取締役社長 松尾大作氏

 今回の地価調査は、全国平均で住宅地・商業地のいずれも2年連続で上昇し、上昇率が拡大した。新型コロナウィルスの影響で弱含んでいた地価は、地域や用途により差があるものの、三大都市圏を中心に上昇が拡大し東京圏・名古屋圏・大阪圏の住宅地・商業地はいずれも昨年に引き続き上昇、上昇率も拡大した。地方圏においても住宅地は31年ぶり、商業地は4年ぶりに上昇に転じた。地方四市は11年連続で上昇し、上昇率も拡大した。その他の地域では全用途平均は30年続いた下落から横ばいに転じ、住宅地は下落が継続しているものの下落幅が縮小し、商業地は32年ぶりに上昇に転じるなど、全国的に回復が進んだと考えられる。

 住宅市場に関しては、引き続き需要が堅調で世帯収入も伸びを見せる一方で、供給は限られており、売れ行きは概ね好調である。土地の取得が以前より難しいこともあり、需給バランスはしばらく崩れにくいと思われる。但し、当然ながら今後も物価や金利の上昇リスクについては顧客の購入マインドに影響するため、引き続き注視してゆく。
 一方で、生活スタイルの変化によりニーズの多様化は一層進んでいる。マンション価格も上昇している中で、価格に見合った付加価値のある商品を企画していく必要がある。用地取得環境は厳しさを増しており、法定再開発や建替え案件、公有地の利活用、その他多様な開発手法への継続的かつ中長期的な取組みが以前にも増して重要となる。また地方中核都市においては、中心市街地の再開発ニーズは高く、当社では実現性の高い提案実施により積極的な参画を続ける。

 オフィス市場に関しては、2023年と2025年ともに東京での供給が多く、大型物件の竣工時に一時的にマーケット空室率は悪化する見込みで、賃料も弱含みとなるだろう。ただし、23区全体のマーケット規模を鑑みると需給バランスが急激に悪化するとは考えづらい。コロナ禍を経て我が国でもテレワークが一定程度定着したものの、出社率を増やす企業も増加しており、都市部を中心に人流の増加が見られる。当社ではこれらの企業動向を注視しながら、共用部の充実やサービス提供などを通してリアルに交流する場としてのオフィスの付加価値向上と、働く場所や時間を自由に組み合わせる柔軟性ある働き方の提供を続けていく。

 ホテル市場に関しては、インバウンド需要が本格的に戻ってきたことにより、当社運営ホテルにおいても稼働が回復している。商業施設については飲食・日用品を中心に堅調で、客数・売上ともに前年から伸びている。

 物流市場に関しては、今後労働人口の不足が懸念される2024年問題を控えており、eコマースの物流網維持のため、大都市圏のみならず、地方においても物流施設が供給される傾向にある。当社では物流施設の開発のみならず、物流を支えるサービス提供により物流・荷主企業の抱える課題への解決策を今後も提供していく。

 コロナ禍が収束し社会情勢が大きく変化する中で、新たな地政学リスクも出現している。また、資材・労務費の高騰に伴う建築費の上昇については昨年にも増して顕著なため、今まで以上に動向を注視していく。当社は移り行く市場の変化に合わせて、お客様に寄り添い、ニーズを的確に捉えた不動産関連商品・サービスを提供していく。
 地価調査は、不動産の取引動向や中期的な展望を反映したものであり、様々なマクロ指標と合わせて今後も重要指標のひとつとして注視していく。

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