2023年12月13日に「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律」(改正空き家特措法)が施行されて約6ヵ月が経過し、全国で、官民連携による空き家対策が活発化。各自治体は、空き家対策の担い手として指定「空家等管理活用支援法人」と連携。空き家の適正な管理や有効活用の拡大を図っている。
大阪のベッドタウンとして発展してきた和歌山県橋本市では、空き家バンクに掲載しても買い手や譲渡先が決まらない空き家等の流通手法として「地域内譲渡」を積極的に進めている。23年度には、同市が支援法人に指定した(一社)ミチル空間プロジェクトの協力を得て、地域内譲渡を初めて実施。買い手等が見つからない空き家2棟について、所有者の意思確認を経た上で地域住民を対象とした「空家内覧会」を開催した。1棟は良好な状態、もう1棟は長期間使用されておらず管理不全の状態だったが、いずれも早期に成約するなど、成果を挙げた。
同団体でも、23年度以降同市を含む和歌山県内各自治体に隣地売却や地域内譲渡の提案を本格化しており、同年度は10件の空き家を近隣に公開して7件を成約した。地域住民とのマッチングを目的とした取り組みだが、ホームページでの告知を見て移住目的の人が取得するケースもあったという。
新潟県三条市では、地元の工務店、建築士ら、ソーシャルデザイナーが空き家対策・移住促進・地域活性化を目的に22年に設立した(一社)燕三条空き家活用プロジェクトが「市の空き家対策・移住促進活動の実働部隊」として活動している。
地域住民が空き家に対して抱く漠然とした不安を解消することと、空き家を活用したい人とのマッチング推進を目的に、市内の空き家のデータ整理を実施した。23年度は市と同団体が連携し、市内のすべての自治会長と民生委員に空き家の所在に関してヒアリングを行なった。空き家が所在するという回答に従って現地調査を行ない、地図上にマッピングした。これを第一歩として、将来的には自治会単位で自治会長が空き家の情報を登録・管理できるシステムを開発したいという。
同団体はこのほかにも、活動拠点として市内の商店街の一角にオープンした複合交流施設「三-Me. (ミー)」を23年4月にオープン。空き家となっていた店舗兼住宅を再生したもので、シェアテナントやシェアキッチン等として使える交流スペース、移住希望者向けゲストハウス、移住者向けの住宅を設けており、空き家を活用した地域活性化の拠点としても機能させている。同施設では、「空き家・移住の日」と題してミニ相談会を24年4月にスタート。所有者が空き家の売却・賃貸を希望する場合は市の空き家バンクを紹介したり、地元の不動産会社の協力を得て流通・マッチングにつなげている。また、利活用を希望する場合には立地や建物特性を踏まえ、同団体に寄せられた地元住民や移住希望者の空き家活用ニーズとマッチングすることも可能だという。
◇ ◇ ◇
詳細は、月刊不動産流通2024年6月号「編集部レポート」を参照。このほかにも改正法の成立に尽力した国土交通省の元担当官のコメントや、全国の自治体と民間団体とが連携した空き家対策について紹介しています。