国土交通省が16日に発表した「令和7年 都道府県地価調査」結果を受け、業界団体・企業のトップが以下のコメントを発表した(以下抜粋、順不同)。
■(一社)不動産協会 理事長 吉田淳一氏
■(一社)不動産流通経営協会 理事長 遠藤 靖氏
■(公社)全国宅地建物取引業協会連合会 会長 坂本 久氏
■(公社)全日本不動産協会 理事長 中村裕昌氏
■三井不動産(株) 代表取締役社長 植田 俊氏
■三菱地所(株) 執行役社長 中島 篤氏
■住友不動産(株) 代表取締役社長 仁島浩順氏
■東急不動産(株) 代表取締役社長 星野浩明氏
■東京建物(株) 代表取締役 社長執行役員 小澤克人氏
■野村不動産(株) 代表取締役社長 松尾大作氏
■森トラスト(株) 代表取締役社長 伊達 美和子氏
・今回発表された都道府県地価調査では、全国の全用途平均・住宅地・商業地のいずれも4年連続で上昇し、上昇幅が拡大した。地域や用途によって差があるものの、三大都市圏では上昇幅が拡大し、地方圏でも上昇傾向が継続するなど、全体として上昇基調が続いている。我が国経済の緩やかな回復が地価にも反映されたものと認識している。一方、米国の通商政策の影響や、物価上昇の継続、金融資本市場の変動等、国内外の不確実性にも留意する必要があることから、今後の地価動向については引き続き注視していく必要がある。
・加えて、我が国が少子化・人口減少をはじめとした構造的かつ深刻な課題にも直面する中、デフレに後戻りすることなく、当面のリスクに的確に対応しながら「賃上げと投資がけん引する成長型経済」を実現するためには、今こそ、政策を総動員し、我が国の競争力を一層強化するとともにWell-beingの向上等をはじめとした人中心の国づくりを進めていくことが必要である。また、国内外の様々な環境変化に対応できる強い経済構造を構築するとともに、国内投資を拡大させていかなければならない。
・そのためには、まちづくりにおけるDXやGXの加速やイノベーションの創出、都市の国際競争力強化や防災性能の向上、多様化する住宅ニーズに対応した良質な住宅ストックの構築と豊かな住生活の実現、不動産市場の活性化を進めていくことが重要である。とりわけ、本年は住宅ローン減税をはじめ、多くの重要な不動産関連税制が期限切れを迎えるが、我が国経済や国民生活に直結するこれらの延長等が不可欠である。
本年の地価調査は、全国および三大都市圏の全用途平均の上昇が継続しているとともにいずれも上昇幅が拡大していることを確認した。また景気が緩やかに回復している中、地方四市以外のその他の地方圏の住宅地においても、29年続いた下落から横ばいに転じていることに注目したい。
東日本不動産流通機構によると、地域により差はあるものの、首都圏マンションの成約件数・成約価格は、ともに対前年比で10ケ月連続の増加・上昇となっており、大いに注目したい。その上で、消費者の根強い住宅取得ニーズに影響を及ぼす今後の不動産価格や金利の動向に引き続き注視する必要がある。
景気が緩やかに回復している中、経済を成長軌道に乗せていく上で、地価の安定的な推移に加え、住宅・不動産流通市場が果たす役割は重要である。当協会としても米国通商政策等の影響による景気の下振れリスクに十分注意しつつ、内需の牽引役として、安全・安心な不動産取引ができる市場の実現とさらなる活性化に鋭意取り組んでまいりたい。
令和7年の都道府県地価調査は、全用途平均が4年連続で上昇し、上昇幅も拡大した。住宅地は、堅調な住宅需要により大都市圏で引き続き上昇幅が拡大すると共に、地方四市を除く地方圏が29年ぶりに下落から横ばいに転じるなど、地方圏においても上昇傾向が継続している。商業地では、主要都市においてオフィスにおける収益性の向上や観光地でのインバウンド需要が地価上昇をけん引している。
全宅連不動産総合研究所による最新の土地価格動向でも実感値でプラス12.5ポイントと前回調査時と比べ5.2ポイント上昇し18期連続でプラスとなっており、緩やかな景気回復局面を背景に、地域や用途により差はあるものの全国的な地価の上昇基調が継続している。
一方で、米国による関税措置問題や物価上昇による消費者マインドの低下などの日本経済における下振れリスクが散在しており、特に住宅市場においては住宅価格の高騰や住宅ローン金利の上昇が、消費者の住宅取得意欲への懸念として顕在化しているため、これらの要素が今後の地価動向に及ぼす影響について引き続き注視する必要がある。
こうした中、本会では令和8年度税制改正要望において、住宅ローン減税や本会が創設に尽力した低未利用地の活用管理に係る100万円特別控除等の各種特例措置の適用期限延長の実現に取り組んでいきたい。
令和7年の都道府県地価調査においては、全国の全用途平均、住宅地、商業地ともに4年連続で上昇し、上昇幅も拡大した。3月の地価公示、7月の路線価、8月の地価LOOKレポート(第2四半期)の流れから概ね予想どおりの結果であった。また、名古屋圏と札幌、仙台、福岡の3市において、住宅地及び商業地ともに上昇幅がやや縮小した点も従前の流れに沿ったものと言える。
個別的要因に目を向けると、住宅地では、リゾート開発やインバウンド需要が地価を押し上げている富良野市、真狩村(ニセコエリア)、宮古島市、恩納村、白馬村、高山市、また子育てしやすいまちづくりが奏功しているつくば市、流山市などが目に留まる。そして、住宅地・商業地を通じて“半導体需要”により千歳市が引き続き堅調であるほか、都内一等地における再開発事業への期待からか中央区湊一丁目(八丁堀・京橋エリア)、渋谷区円山町、中央区銀座七丁目などが25%前後の上昇率を示している。このほか、首都圏ではさいたま市大宮区、千葉市中央区、横浜市中区なども同様にターミナル駅・主要駅周辺の大型再開発が地価を押し上げている例であろう。
しかしながら、少子高齢化・人口減少社会を迎えた我が国において、30年後、50年後、100年後という長期的スパンで将来を見据えたとき、既存のものを取り壊し、より大きな新しい建物を建てるという手法は限界を迎えつつあると言わざるを得ない。
さらに、都心6区を中心とした東京23区の不動産価格の異常な高騰についても全く収束する気配が見えず、もはや実需層(言うなれば「地域の社会と経済を支えるエッセンシャル層」)の手から完全に乖離してしまっている。先ごろ該当自治体から事業者団体に異例の要請がなされたことが大きな話題となったが、根拠の当否はさておき、少なくともそうした懸念の淵源については一定の理解をし得るところである。
持続可能な都市の再生、住宅・土地利用の最適化、多様性・包摂性の確保(住まいのアフォーダビリティ/多様なライフスタイルとの共生)といった都市政策のあり方に関する諸課題について、我が協会としても知見を深めながら処方を見出していきたい。
今般公表された都道府県地価調査では、全国の全用途平均・住宅地・商業地のいずれも4年連続で上昇し、上昇率が拡大しました。三大都市圏、地方圏ともに上昇傾向が継続し、景気回復の影響が全国的な地価上昇に波及しています。経済活動の活性化に伴い需要が創出され、日本の産業競争力強化、そして国富増大に結びついているといえます。
首都圏のオフィス空室率が低下し賃料は上昇傾向にあり、継続する住宅マーケットの好調さや、活況なインバウンド等から商業・ホテルの需要が堅調であり、地価上昇に反映されました。
また「BASEGATE横浜関内」が2026年春に開業いたしますが、横浜関内エリアを始め大規模再開発事業が進展するエリアの地価上昇がみられます。大規模再開発事業は日本の国際競争力の強化に寄与し経済成長を牽引する役割を果たしており、我が国の未来を担うものとして、一層その必要性・重要性を高めています。
地方圏では、引き続き、半導体関連企業の進出が進む地域や、物流施設需要が高まる地域での地価上昇がみられます。当社においては熊本でサイエンスパークの検討を始めており、各地域の特色を活かした産業創造に取り組み、新しい時代の新しい形での地方創生に貢献してまいります。
米国の通商政策が世界経済に与える影響や、様々な地政学リスクに留意すべき一方、日本経済は堅調な内需等により緩やかな回復が続いています。継続する賃上げによる賃金・物価の好循環に向かっており、デフレから脱却し成長型経済を確実なものとしていく「時代の転換点」にいます。
デフレの時代は付加価値が正当に評価されてきませんでした。付加価値を評価し、物価と賃金のプラスの連鎖を生み、成長型経済の実現につなげたいと考えます。
当社グループとしては、このような転換点を大きなチャンスととらえ、付加価値創造において圧倒的な力を発揮していきたいと考えています。「産業デベロッパー」として、日本の国際競争力の強化・新産業の創造に貢献し、新たな社会的価値と経済的価値の創出を両輪で実現してまいります。
令和7年都道府県地価調査は、全国平均で全用途平均・住宅地・商業地いずれも4年連続の上昇となり、上昇幅も拡大した。経済活動の回復が進み、インフレ傾向も定着しつつある。国内外から人が集まる都市中心部や観光地での需要が底堅く、全体的な上昇基調が継続している。一方で、関税問題や金融市場の変動が経済に与える影響については今後も注視していく必要がある。
人的資本への投資意欲の高まりを背景に、高付加価値なオフィスの需要は多く、空室率の低下と賃料の上昇が続いている。例えば大阪駅前に約4.5haの都市公園を整備した「グラングリーン大阪」では、緑地空間の創出が価値の一つとして評価され、多くの入居希望をいただいた。
なお当社では本年5月に「まちまるごとワークプレイス」構想を掲げ、東京・丸の内エリアにおいて1社単独では実現できないことをまち全体でサポートする、付加価値型のまちづくりを強化している。今後もハード・ソフト両面からまち・ビルの魅力づくりを実践し、良質なオフィスの提供とともに、オフィス賃料水準の向上にも取り組んでいく。
商業施設やホテルの需要は引き続き好調で、2025年に日本上陸25周年を迎えた「プレミアム・アウトレット」は、2024年度のテナント売上高が4,345億円と過去最高を記録した。また当社が空港事業やホテル事業を手掛ける宮古島エリアでは、ウルトラ・ラグジュアリー・ライフスタイル・ホテル「ローズウッド宮古島」が2025年3月に開業したほか、来春には「キャノピーby ヒルトン沖縄宮古島リゾート」の開業を予定しており、今後も宮古島の皆様とともに地域振興に取り組んでいきたいと考えている。
工業地ではeコマース市場の拡大による大型物流施設用地への需要が地価に影響を与えているが、トラック運転手不足など物流をとりまく課題は依然として解決していない。この課題に対応すべく、次世代モビリティに対応する高速道路 IC 直結の基幹物流構想を関西圏(京都府城陽市)・東北圏(宮城県仙台市)で進めているが、このほど関東圏で初となる旧上瀬谷通信施設地区(神奈川県横浜市)での開発計画を始動した。
住宅の需要も堅調で、先月より販売を開始した「ザ・パークハウス 武蔵小杉タワーズ」も実需層を中心に非常に多くの反響をいただいている。分譲マンション価格は引き続き上昇しているが、特に都心部では購入者層の購買力も向上しており、販売は好調。一方、土地代や工事費は高止まりの傾向が続いており、今後も高値で推移すると考えられる。
金利の上昇や米国の政策動向などによって経済の先行きに不確実性が残るものの、企業の設備投資への前向きな姿勢や雇用・所得環境の改善、物価や賃金の上昇を背景に国内景気は緩やかな回復基調が継続している。
こうした中、商業地では、継続するインバウンド需要の増加によりホテルや商業店舗の需要も一段と拡大したほか、東京のオフィスビル市況は、企業業績の回復もあり、優秀な人材確保に向けた働きやすいオフィス環境整備を目的とする移転や人員増による増床などの前向きな移転が一層旺盛となり、空室率は低下傾向が継続。賃料上昇を伴う需給改善が顕著となっている。
住宅地は、地価上昇に加え、資材費及び労務費上昇に伴う建築費上昇により住宅価格は年々高騰しているが、都心・郊外共に底堅い実需ニーズに支えられ、新築・中古取引ともに引き続き堅調に推移している。
今回の都道府県地価では全国の全用途平均は4年連続で上昇し、上昇率も拡大した。景気が緩やかな回復基調にあるなか、首都圏や大阪中心部などで住宅需要が引き続き堅調なほか、主要都市では店舗・ホテルの需要が堅調で、オフィス需要も空室率の低下や賃料の上昇傾向などで収益性が向上していることが地価上昇の背景にはある。一方、金利上昇や世界経済の先行き不安定感、工事金や物価上昇による国内景気の減速の可能性などの不安定要素もあり、当面は国内の地価動向を注視していく。
商業地は全国平均で4年連続の上昇となった。再開発事業等が進展している地域では、利便性やにぎわいの向上への期待感などから地価上昇は継続している。都市部では東急グループのメイングラウンドである渋谷エリアでも地価上昇は継続している。これは東急グループで「100年に一度」ともいわれる渋谷の大型再開発を推進しており、今年7月にまちびらき1周年を迎えた「渋谷サクラステージ」などの大型オフィスビルも複数登場し、渋谷駅周辺に IT・コンテンツ産業中心に企業集積が進んでいる成果である。「流行の発信地」で「インバウンドの訪れたい街 NO.1」に選ばれるなど「遊」の面で注目を浴びてきた渋谷だが、今はオフィス需要も好調で賃料水準は上昇しており、高い稼働率を維持している。今回の大型再開発でバリアフリー化や回遊性向上などに努めてきた取組みの成果が、渋谷の街全体の魅力向上につながり、地価上昇が継続している。今後はこうしたハード面に加え、今年1月に開業したマサチューセッツ工科大学(MIT)の産学連携プログラムを通じた教授陣との連携でディープテックの育成を目指す「SAKURA DEEPTECH SHIBUYA」などのスタートアップ支援や、都市観光などのソフト面の発信も積極化し、「国際都市渋谷」の価値の更なる向上を目指す。
住宅地では全国平均の住宅地が4年連続の上昇となった。金利環境の継続などもあり、都心部を中心に引き続き住宅需要は好調。都市中心部の希少性の高い立地や交通利便性等に優れた周辺地域では地価上昇が継続するなど根強い需要がある。当社は環境先進マンションとして、東京都心部ではJR大崎駅近くで「ブランズタワー大崎」を供給するほか、関西圏では兵庫県西宮市の再開発タワープロジェクト「ブランズタワー西宮」を供給するなど、住環境の良い物件提供を進めている。不動産価格の高騰で主に都心部で賃貸マンションが徐々に注目度を高めており、賃貸レジデンス「COMFORIA(コンフォリア)」では一部大型犬飼育可、防音性能を高めた物件などサービス面の充実で差別化を図っている。
一方、当社は地方でも開発に力を入れている。佐賀県鳥栖市など全国で産業拠点整備を起点とした周辺地域の活性化に資する「産業まちづくり」事業を「GREEN CROSS PARK」という事業ブランドで始めるなど、地域活性化の一助となるべく積極的に拡大していくほか、北海道石狩市で再エネ100%のデータセンターの竣工を予定するなど、地方の特性を活かした事業を推進していく考えだ。こうした新規事業の基盤となるのは当社の再生可能エネルギー事業の国内有数の発電能力だ。当社は共同保有等、一部を除く保有不動産の全施設の再エネ化を完了し、国際的イニシアティブ「RE100」の目標の達成が RE100事務局のCDPより国内事業会社として初めて認められるなどしてきた。今後、都市での不動産開発のノウハウや再エネ活用など、当社の特色を生かした事業拡大を地方部でも進め、新たな不動産の価値を提案していきたい。また、インバウンド需要や出張・観光需要の回復はビジネスホテルの「東急ステイ」のほか、全国に展開する会員制リゾートホテル「東急ハーヴェストクラブ」、沖縄や軽井沢で展開するパブリックホテルの需要拡大にも広がっている。当社がスキー場などを展開する国際的リゾートの北海道・ニセコではリフト架け替え、レストラン新設など来年度までの3年間で累計100億円超の投資を計画しているほか、人手不足に備えた外国人労働者の育成強化などで、リゾート事業の成長を図っている。
中長期的な不動産市場については、足元では国際経済情勢などのマクロ要因などを注視する必要があるが、不動産市場は活況が継続するとみている。少子高齢化による単身世帯の増加や空き家問題、「働き方改革」によるオフィス環境の変化、工事金の高騰等、不動産市場を取り巻く環境の変化が続くが、国内外で環境への意識が高まるなか、今後の不動産市場では「環境」が大きなテーマになるとみている。
今年発表された地価調査では、全用途平均・住宅地・商業地が4年連続で上昇し、上昇幅が拡大した。この背景には、分譲マンションマーケットの堅調さや、好況なオフィス市況に加え、引き続き高いインバウンド需要およびそれに伴うホテル・商業施設等における需要の増加、都市部を中心とした再開発事業の進展により利便性や賑わいの向上が期待されるエリアが増加したことなどがあると考えられる。米国の関税政策の影響や金利の動向等については注視する必要があるものの、不動産投資市場は引き続き好調に推移している。
オフィスマーケットにおいては、好調な企業業績を背景とした増床ニーズに加え、人材獲得を目的として企業が付加価値の高いオフィスへ移転する動きが活発化しており、都心5区では空室率が低下、賃料も上昇基調にある。当社が東京駅前で参画する大規模再開発「TOFOROM YAESU」(トフロムヤエス)についても、ワーカーのウェルビーイングな働き方を後押しする施策をご評価いただき、竣工まで約半年の時点でオフィスフロアの約8割が内定している。ホテル・商業施設マーケットでは、引き続き旺盛なインバウンド需要を背景に東京都心部や観光目的地において顕著な成長がみられる。特に関西エリアは、大阪・関西万博の影響等によりホテル需要が底堅く、昨年開業した「フォーシーズンズホテル大阪」や「ヒルトン京都」の稼働も好調に推移している。当社は、ラッフルズブランドとして日本初進出となる「ラッフルズ東京」(2028年開業予定)をはじめ外資系ハイエンドホテルの開発実績を積んでおり、今後もデベロッパーとしてのノウハウを最大限生かしたホテル開発により地域経済の活性化に貢献していく。物流施設マーケットについては、ECマーケットの拡大や人件費等物流コストの増加を背景とした企業の物流拠点網見直しの動きが活発化しており、継続して需要が増加している。当社は、マルチテナント型の冷凍冷蔵倉庫「(仮称)T-LOGI 大阪弁天町」や危険物倉庫を併設した「(仮称)T-LOGI 厚木」など、需要増が認められる特殊倉庫の開発を強化しているほか、これまで中心だった首都圏など大都市圏近郊に加え、半導体需要が見込める熊本県熊本市や配送拠点として幅広いエリアへのアクセスに優れる宮城県仙台市など地方圏での展開も開始した。現在稼働中の物件に関しては、いずれも高い商品性を評価いただき、満床となっている。
住宅地では、資産性を重視する富裕層やパワーカップル層を中心とした旺盛な需要を背景に、交通利便性や住環境等で優位性のある立地であれば、都心部だけでなく地方都市においても地価は上昇傾向である。当社においても、都心部では、東京メトロ千代田線「乃木坂」駅直結となるタワーマンション「Brillia Tower 乃木坂」が販売前でありながら問い合わせ数が5,000件を超えるなど非常に高い反響があった。また、地方都市の一例としては JR「長野」駅近くで開発している「Brillia 長野北石堂 ALPHA RESIDENSIA」についても長野県内在住の方を中心に多数の問い合わせをいただいている。
地政学リスクや景気動向、建築費の高騰といった不動産市況に影響を及ぼす各要因を一層注視するとともに、お客様のニーズを的確に捉え、安全・安心・快適に過ごせる職場環境や住環境の提供に今後も注力する。
今回の地価調査は、全国平均で全用途平均・住宅地・商業地のいずれも4年連続で上昇し、上昇幅が拡大した。
一方で、資材費や労務費を含む建築費は落ち着きを見せ始めているがまだ増加傾向にあり、各事業セクターは引き続き厳しい事業環境にある。
住宅市場に関しては、郊外の一部で売れ行きに鈍化傾向がみられるが、都心部・準都心部の売れ行きは順調であり、トータルでは好調に推移している。住宅ローン金利は政策金利の引き上げに連動して上昇する銀行がみられるものの、現時点では顧客の購入マインドへの影響は軽微であり、引き続き需要が堅調である。土地取得が難しいことから、急激に供給量が増えることはないため、引き続き当面は需要と供給のバランスは大きく崩れないだろう。一方で分譲住宅の価格も上昇していることから、ハード・ソフト面で価格に見合った付加価値を提供していくことが更に必要になってくる。
オフィス市場に関しては、2025年に東京での新規供給が集中するものの、今後中長期的には建築費増加の影響により建築工期の延期、または建築工事の中断となる物件が増えてくることも予想される。工事延期により供給時期が分散することで、需給のバランスが安定していくと見込んでいる。当社保有のオフィスにおいても空室率は低下しており、今後も低下傾向は続くと想定する。出社や採用の増加により、当社主力ブランドのPMOへの拡張移転ニーズも多い。
今年2月末には「BLUE FRONT SHIBAURA」TOWER Sが竣工し、3月にJR浜松町駅から芝浦エリアをつなぐ緑のアプローチ「GREEN WALK」が開通。7月には日本初進出のラグジュアリーホテル「フェアモント東京」が開業、8月にはオフィスフロアへの入居が始まり、当社グループも本社を移転している。東京ベイエリアを一望できる1フロア約1,500坪の「テナント企業専用の共用フロア「BLUE SKY LOUNGE」を設ける等、競合物件との差別化を図ることでリーシングも極めて順調に進んでいる。多様な働き方に対応した多くのワークスペースが実際に使用可能となり、立地特性である空・海・緑に恵まれた自然環境を活かした新たな働き方が実践され始めている。9月には商業店舗の開業と合わせてグランドオープンを迎えている。商業エリアは「まちのコミュニティハブ」をテーマに、オフィスワーカーに加えて地域の皆様にも開けたパブリックスペースを設けることで幅広い皆様にご利用いただき順調なスタートを切っている。
ホテル市場に関しては、引き続き非常に高い水準でインバウンド顧客の利用が続いており、当社直営ホテルとグループのUDSが運営するホテル共に稼働率やADRが高い水準で推移している。7月には「フェアモント東京」も開業し、今後様々なニーズに合わせたタイプ別のホテルを提供できるように新しいホテルの形も検討している。
当社グループは、不動産開発や関連サービスの提供を通じて、お客様一人ひとりの「Life」や「Time」に寄り添うことを大切にしてきている。従来から、「個々のお客様を起点とした価値創造」の手法の進化・変化を図って参りましたが、刻々と変化する事業環境の中で更なる成長を実現するため、これまで拡大してきた事業基盤を基に、価値創造の進化・変革をグループ一丸となって進めていくべく、4月に新たなグループ経営計画を策定している。野村不動産グループ2030年ビジョン「まだ見ぬ、Life & Time Developerへ ―幸せと豊かさを最大化するグループへ―」の実現を目指し、グループ全体で、新たな付加価値を創造し、お客様に多様な付加価値を備えた不動産関連商品・サービスをこれからも提供していく。
東京都心のオフィスビルは、引き続き空室率は低下傾向であり、賃料は上昇基調となっている。企業のオフィス回帰による規模の拡張ニーズや人材獲得のための立地改善の要望など、新築・既存ビルともに引き合いは多い。実際に、本年10月に第2期竣工を迎える予定の「東京ワールドゲート赤坂」においても、オフィス内定率は95%超である。
地方圏においては、観光需要の高いエリアにおいて、店舗需要の高まりや各種開発事業の進展から、地価上昇トレンドが継続している。三大都市圏を中心とする人気観光地への需要の偏在は引き続きあるものの、地方におけるインバウンド増加率は都心を上回っており、観光需要が地方へ拡大している様子が見て取れ、今後の地方圏の伸びに期待ができる。
特に奈良県奈良市、長野県白馬村、岐阜県高山市などの都市はインバウンド需要がけん引し地価が向上した。岐阜県高山市は昨年1年間で過去最多の約77万人の外国人が観光に訪れるなど、今後も観光地としての人気の高まりが期待される。奈良県奈良市の興福寺にほど近い場所で当社グループが運営する「紫翠 ラグジュアリーコレクションホテル 奈良」においては、3~4割を外国人観光客が占めており、2023年の開業以来、その割合は増加傾向にある。
当社グループでは、2025年の訪日外客数を4,300万人規模、観光収入を10兆円超と見込んでいるが、インバウンドによる経済波及効果を人気観光地以外の地方都市にも拡張するためには、顧客ニーズに合った観光地となるべく機能の更新を進め、各地が受け皿の整備を急ぐ必要がある。よって、第5次観光立国基本方針では、全国における持続可能な観光産業の基盤づくりの強化を明確に掲げる必要があると考える。
一方、日本経済においては、米国の関税措置や地政学的なリスクなど、景気動向を左右する不透明な事象が多く、それらの変化に素早く対応していく力が求められる。不動産業界においては、建築費高騰や深刻な人手不足は今後も継続するとみられ、建設コスト上昇は懸念材料である。
足元では目まぐるしく変化する国内外の情勢に対応しつつも、当社グループは中長期の視点に立ち、首都圏および地方都市の経済発展に貢献していく。