不動産ニュース / 政策・制度

2026/9/15

令和8年基準地価、業界各トップがコメント

 国土交通省が15日に発表した「令和8年 都道府県地価調査」結果を受け、業界団体・企業のトップが以下のコメントを発表した(以下抜粋、順不同)。

■(一社)不動産協会 理事長 吉田淳一氏
■(一社)不動産流通経営協会 理事長 遠藤 靖氏
■(公社)全国宅地建物取引業協会連合会 会長 坂本 久氏
■(公社)全日本不動産協会 理事長 中村裕昌氏
■三井不動産(株) 代表取締役社長 植田 俊氏
■三菱地所(株) 執行役社長 中島 篤氏
■住友不動産(株) 代表取締役社長 仁島浩順氏
■東急不動産(株) 代表取締役社長 田中辰明氏
■東京建物(株) 代表取締役 社長執行役員 小澤克人氏
■野村不動産(株) 代表取締役社長 松尾大作氏
■森トラスト(株) 代表取締役社長 伊達 美和子氏

■(一社)不動産協会 理事長 吉田淳一氏

 今回発表された都道府県地価調査では、全国平均では、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも5年連続で上昇した。地域や用途によって差があるものの、三大都市圏では上昇幅が拡大し、地方圏でも上昇傾向が継続するなど、全体として上昇基調が続いている。我が国経済の緩やかな回復が地価にも反映されたものと認識している。一方、物価上昇や中東情勢、世界的な金融引き締め等により先行きの不透明感が強まっており、共通地点では年後半で上昇率の伸びがやや鈍化するなど、今後の地価動向については引き続き注視していく必要がある。

 加えて、人口減少や地政学リスクの高まり、エネルギー制約、自然災害リスクの増大、AI等の技術革新の急速な進展等、構造的かつ複合的な環境変化にも直面する中、成長と分配の好循環を確かなものとし、民間の活力を最大限に引き出しながら、生産性向上と供給力強化を図ることが重要である。「強い経済」の構築に向け、官民を挙げて国内投資の拡大を図り、潜在成長力を引き上げる成長戦略を強力に推進することが必要だ。

 とりわけ、来年度には3年に一度の固定資産税の評価替えが行われる。商業地等においては現状でも納税者の負担が大きい中で、地価の上昇に伴い、企業業績に関わらず、急激な負担増が生ずる地域が相当数見込まれる。安定的な設備投資の促進等による経済の活性化や地方創生等の取組みを進めるためにも、来年度の固定資産税の負担増の発生状況が納税者に与える影響に十分留意の上、土地固定資産税の負担調整措置の延長等必要な対応を講ずることが不可欠だ。

■(一社)不動産流通経営協会 理事長 遠藤 靖氏

 本年の地価調査は、全国・三大都市圏および地方圏ともに全用途平均・住宅地・商業地のいずれも全体的に上昇傾向が継続しているとともに、東京圏・大阪圏ではいずれも上昇幅が拡大していることも確認された。

 その一方で、東日本不動産流通機構によると、地域によりばらつきはあるものの、首都圏マンションの成約件数は5ケ月連続で減少しており、特に、東京都区部の成約件数は8ケ月連続で減少している状況にある。

 景気が緩やかに回復している中、経済を成長軌道に乗せていく上で、住宅・不動産流通市場が果たす役割は重要である。価格や金利の動向等が足元での消費者住宅取得ニーズにどのような影響を及ぼすか、大いに注視しつつ、内需の牽引役として、安全・安心な不動産取引ができる既存住宅市場のさらなる活性化に鋭意取り組んでまいりたい。

■(公社)全国宅地建物取引業協会連合会 会長 坂本 久氏

 令和8年の都道府県地価調査では、全国平均で全用途平均・住宅地・商業地のいずれも5年連続の上昇となり、商業地では上昇幅が拡大した。三大都市圏では東京圏・大阪圏を中心に上昇基調が続き、地方圏においても全用途平均・住宅地・商業地の上昇が継続している。景気が緩やかに回復する中、地域や用途による差はあるものの、全国の地価は総じて上昇基調を維持している。
 一方、住宅地については、全国平均・三大都市圏・地方圏のいずれも、上昇幅は前年と同水準となっている。住宅価格の上昇や住宅ローン金利の動向は、消費者の住宅取得意欲に加え、今後の地価動向にも影響を及ぼす可能性があるため、その推移を慎重に見極めていく必要がある。
 また、東京圏・大阪圏では上昇幅が拡大する一方、地方四市では上昇幅が縮小するなど、地価動向には地域差が見られる。こうした地域間格差の拡大が懸念されることから、今後の日本経済、金融環境、人口動態、観光需要の持続性などが地価に与える影響について、引き続き注視していく必要がある。
 こうした状況を踏まえ、全宅連としては、国民の住宅取得支援や良質な住宅の供給・流通促進及び地域経済の活性化を図るため、令和9年度税制改正要望において、相続空き家の譲渡所得に係る3,000万円特別控除の適用期限延長及び要件緩和、土地に係る固定資産税・都市計画税の負担調整措置及び条例減額制度等、各種特例措置の適用期限延長や制度改善の実現に向け、引き続き取り組んでいく。
 全宅連は、本年度スタートした5か年計画「ハトマークグループ・ビジョン 2030」に基づき、今後も全国10万社の宅建協会所属会員が住生活サポーターとして消費者に選ばれるための各種施策の実現を通じて、地域の笑顔・消費者の笑顔に貢献していきたい。

■(公社)全日本不動産協会 理事長 中村裕昌氏

 令和8年の都道府県地価調査では、全国の全用途平均・住宅地・商業地のいずれも5年連続で上昇し、上昇基調が続いている。三大都市圏では上昇が続き、東京圏・大阪圏で上昇幅が拡大する一方、名古屋圏では縮小するなど、都市圏内でも温度差が明確となったほか、地方圏も4年連続で上昇したが、地方四市では上昇幅が縮小しており、上昇基調は全国に及ぶが、地域間の濃淡も強まっている。
 個別に見ると、リゾート地域や転入が多い地域で高い上昇が継続し、富良野市、白馬村、野沢温泉村、つくば市、流山市などが変動上位に並び、インバウンドによる観光需要に加え、地域の魅力や住環境を背景とする需要の強さが地価に反映された。商業地でも、店舗・ホテル需要、オフィスの収益性向上、再開発の進展や期待が上昇を支えている。こうした観光・再開発の好循環を地域経済の追い風として評価しつつも、賑わいの拡大が「住む人」「働く人」の居住コストを押し上げないよう、まちの受け皿を一体で整備する視点が不可欠である。
 また、特徴的な動きとして、大手半導体メーカー進出地域では、いずれの用途においても上昇が継続しているほか、好調なeコマース市場を背景に、大型物流施設用地等への需要が強い工業地でも上昇が継続している。産業立地がもたらす成長機会を確かな地域の成果につなげるには、短期的な地価上昇だけにとどまらず、住宅供給の確保、職住近接を支える交通・生活基盤、災害リスクも踏まえた土地利用誘導を、官民で同時に進める必要がある。
 他方、令和6年能登半島地震等の影響を受けた地域では地価下落が継続しており、被災地の資産価値と生活再建の課題が改めて突き付けられている。こうした地域では、取引の停滞や将来不安が連鎖しないよう、住まいの再建と地域の再生を一体で支える環境整備が不可欠である。
 さらに、上昇局面にある地域においても、その“果実”が誰に届くのかという視点が欠かせない。地価上昇は期待の表れである一方、住宅確保の負担増を通じて、地域を支える実需層の居住継続や人材確保に影響し得る。また、金利上昇局面では資金調達コストの上振れは住宅取得動向や投資採算、開発・再開発の進捗を通じて地価動向にも波及し得るため、注視が必要である。市場の活力を損なわず、住まいの確保と都市・地域の持続可能性を両立させるため、住宅・土地利用の最適化と多様なニーズに応える供給、そして災害に強いまちづくりの観点から、行政・関係団体と連携し知見を深め、具体な処方を探っていかなければならない。

■三井不動産(株) 代表取締役社長 植田 俊氏

 今般公表された都道府県地価調査では、全国の全用途平均・住宅地・商業地のいずれも5年連続で上昇し、商業地は上昇幅が拡大、全用途平均・住宅地は前年と同じ上昇幅となりました。三大都市圏、地方圏ともに上昇傾向が継続し、景気回復の影響が全国的な地価上昇に波及しています。

 首都圏のオフィス空室率は低水準で推移、賃料は上昇しており、継続する住宅マーケットの好調さや、活況なインバウンド等から商業・ホテルの需要が堅調であり、地価上昇に反映されました。
 東京駅周辺では大規模な再開発が進展しており、本年9月末には「東京ミッドタウン日本橋」が竣工を予定しています。今後は「東京ミッドタウン八重洲」や2029年竣工予定の「YAESU CORE」とも連携し、日本橋・八重洲・京橋を広域な面でつなぐことで、エリア全体の魅力と価値をさらに高めていきます。
 また、中野駅周辺では本年5月には、住宅・オフィス・商業施設からなる複合開発「パークシティ中野」が街びらきを迎えました。今後も、それぞれの地域の特性を生かしたまちづくりを通じ、新たな人の流れや交流、賑わいを生み出してまいります。

 地方圏では、半導体関連企業の進出が進む地域などで引き続き地価上昇がみられます。当社においては、熊本県・合志市と連携した「くまもとサイエンスパーク」プロジェクトを推進するとともに、8月には新千歳空港に半導体関連産業の共創拠点「RISE GATE NEW CHITOSE AIRPORT」を開業しました。地域の産業基盤や特色を生かし、新たな産業を創出することで、新しい時代の地方創生に貢献してまいります。

 先行き不透明なウクライナ情勢や中東情勢など、地政学リスクのより一層の高まりが懸念されますが、日本経済は堅調な個人消費と設備投資を中心とした内需主導に、緩やかな回復が続いています。デフレからの脱却が進み、付加価値や新たな挑戦が正当に評価される社会へと大きく転換した今、付加価値創造を強みとする当社にとって大きなチャンスであり、「産業デベロッパー」として、社会のイノベーション・付加価値創出に、これまで以上に取り組んでいきます。

■三菱地所(株) 執行役社長 中島 篤氏

 令和8年の都道府県地価調査では、三大都市圏で上昇幅が拡大し、地方圏でも上昇傾向が継続した。地域や用途で差はあるものの、全体として上昇基調が続いていることが示された。堅調な住宅需要や企業による設備投資、インバウンド消費の拡大などを背景に、不動産需要は引き続き堅調に推移している。一方で、物価上昇や金利動向、海外情勢の先行きなどについては注視していく必要がある。

 住宅は、引き続き底堅い需要が続いている。建築コスト高騰や用地取得競争の激化、マンション価格上昇の継続など、市場はこれまでとは異なる局面を迎えており、顧客の購入判断はより慎重になっているが、需要は低下していない。「ザ・パークハウス 武蔵小杉タワーズ」や「ザ・パークハウス 心斎橋タワー」など、魅力ある立地や商品力のある物件に対する需要は高いが、金利動向など引き続き注視していく要素もあり、市場動向は丁寧に見ていく。

 オフィスは、企業による設備投資や人的資本投資の拡大を背景に高付加価値型のプライムオフィスへの需要は旺盛で、賃料上昇サイクルも継続している。今後予想される金利上昇局面では、企業のコスト意識は高まる一方、成長投資としてプライムオフィスへの選別は一段と進むと考えている。
 商業施設やホテルについても、訪日外国人旅行消費額の増加や国内の観光需要を背景に、堅調な状況が続いている。
 ホテルは、本年4月に「キャノピーby ヒルトン沖縄宮古島リゾート」を開業したが、観光需要の広がりが地域経済にも波及しているものと認識している。
 総じて当社商業施設は、好調を維持しつつも、物価高を踏まえ、消費者の節約志向が継続するなか、選別消費の傾向が続いている。

 工業地を中心としてデータセンターの開発が進み、またeコマース市場拡大を背景とした大型物流施設の需要も堅調だ。ただし、今後は建築コスト高騰や金利上昇による企業の設備投資抑制の可能性がありうることから、動向には注視が必要である。

 利便性や都市機能の集積、交流機会など、付加価値を備えたプライムエリアはより評価が高まり、高い評価を得るエリアでは次なる集積や投資を生むサイクルが加速していくと考えている。金利上昇や不安定な国際情勢など、不確実性の高い環境下でも日本経済成長の一助となるべく、ハード整備に加えコミュニティ形成や交流促進などソフト面の取り組みも通じて、そこに集う人々の幸せや感動につながるまちづくりを追求し、都市の持続的な価値創造に貢献していきたい。

■住友不動産(株) 代表取締役社長 仁島浩順氏

 中東情勢の長期化や世界各国での金融政策の動向により、為替や株価は大きく変動し、先行きの不透明な経済情勢は高まる中でも、国内では前年度を上回る設備投資や、物価・賃金の上昇から、景気は緩やかな回復基調を持続している。
 こうした中、商業地では継続してインバウンド需要が牽引し、ホテルや商業店舗の需要が高まったほか、東京のオフィスビル市況は、環境改善や人員増を目的とした移転や増床による需要が一層高まっており、空室率は過去最低水準レベルとなり、賃料上昇が継続している。
 住宅地は、住宅取得支援策や賃金上昇を背景に実需は堅調である。一方で建築費の上昇により新築マンションの供給戸数は減少しており、中古取引や既存住宅のリフォームに対する需要が拡大している。

■東急不動産(株) 代表取締役社長 田中辰明氏

 今回の都道府県地価では全国の全用途平均は5年連続で上昇した。景気が緩やかな回復基調にあるなか、3大都市圏(東京、大阪、名古屋)や地方圏などで上昇基調が継続するなど全体的に地価の上昇傾向は続いている。3大都市圏を中心に主要都市ではオフィスビルは空室率の低下や賃料の上昇などで収益性が向上しており、ホテルなどの需要が堅調であることが地価上昇の背景にある。
 商業地は全国平均で5年連続の上昇となった。都市部では再開発が進展している地域では、利便性やにぎわいの向上への期待感などから高い地価上昇が継続している。東急グループのメイングラウンドで、渋谷駅前を中心に「100年に一度」の大型再開発を進めてきた渋谷エリアでも高い地価上昇は継続している。バリアフリー化や回遊性向上などを進め渋谷の街の魅力の向上を図ったほか、駅周辺の新しい大型オフィスビルを中心に IT・コンテンツ産業中心に企業集積が進むなどオフィス需要も好調。賃料水準は上昇し高い稼働率を維持している。
 東急グループが位置付ける渋谷駅を中心とする半径約2・5キロメートルの「広域渋谷圏」を、東京の国際競争力を牽引する街にするべく、「産業育成」「都市観光」「都市基盤構築」の3つのテーマで施策を進めている。「産業育成」ではマサチューセッツ工科大学(MIT)の教授陣との産学連携プログラムなどを通じたディープテック企業の育成を目指すグローバルなコミュニティ拠点「SAKURA DEEPTECH SHIBUYA」や、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科と連携した慶應義塾大学がスタートアップ・エコシステムに関する研究を行う新拠点を設けることで、スタートアップ・エコシステムを共創し、世界に通用するスタートアップ育成を目指している。
 「都市観光」では人気アニメやドラマなどのコンテンツとのコラボイベントの開催、「インバウンドの訪れたい街NO1」を意識した深夜まで遊べるエンタテインメントレストランの誘致や、ライフスタイルホテル「東急ステイ渋谷 恵比寿」の開業によるナイトタイムエコノミーの充実など、街の魅力と回遊性の向上を進めている。「都市基盤構築」では行政や地域社会と連携しながら安心・安全なまちづくりを積極化している。
 住宅地も全国平均で5年連続の上昇となった。住宅需要は堅調で、特に東京圏や大阪圏では中心部の高い地価上昇が継続している。都市中心部の希少性の高い立地や交通利便性等に優れた周辺地域では地価上昇が継続するなど根強い需要がある。当社は「環境先進マンション」として、東京都心部ではJR大崎駅近くで「ブランズタワー大崎」を供給するほか、関西圏では兵庫県西宮市の再開発プロジェクト「ブランズタワー西宮」、札幌では「ブランズ円山裏参道レジデンス」を開発した。住宅需要が堅調な名古屋圏に再進出し「ブランズ星が丘テラス」などを供給している。
 そして、物件価格上昇、住宅ローン金利上昇の影響で郊外の分譲マンション、賃貸マンションが注目を集めており、当社は郊外の分譲マンションではリニア中央新幹線の新駅開発で注目される神奈川県相模原市に分譲マンション「ブランズタワー橋本」を、賃貸マンションでは東京都江東区に入居者は何度でも建物内のサウナ施設を無料で利用できる「コンフォリア・リヴ門前仲町EAST」を開発するなど、特徴ある物件の開発を進めている。
 地価上昇の流れは地方圏にも広がっている。当社の「環境経営」の基盤である再生可能エネルギー事業では北海道松前町など全国で発電所を展開しており、発電した再エネ電気を活用し、全保有不動産(共同保有等は除く)の再エネ化を完了しているほか、北海道石狩市では再エネ100%のデータセンターを開設するなど、再エネを活用した新たな事業にも取り組んでいる。国際的リゾートの北海道・ニセコではリフトの架け替え、レストラン新設など今年度までの3年間で累計100億円超の投資を進め、利便性の向上を図っている。
 不動産市場は当面、都市部を中心に好調が持続するとみているが、段階的な金利の上昇や地政学リスクによる世界経済の不確実性、工事金や物価上昇による国内景気の減速の可能性などの不安定要素もあり、状況を注視していく必要がある。当社は引き続き「環境経営」をテーマに広域渋谷圏などの都市部のほか、佐賀県鳥栖市など全国で産業拠点整備を起点とした周辺地域の活性化に資する「産業まちづくり」事業を「GREEN CROSS PARK」という事業ブランドで始めるなど、地方活性化に向けた地方圏での事業展開も積極化している。これまで培った不動産開発のノウハウや再エネ発電能力を生かして事業展開を進め、新たな不動産の価値を提案していきたい。

■東京建物(株) 代表取締役 社長執行役員 小澤克人氏

 今回発表された地価調査では、全用途平均・住宅地・商業地が5年連続で上昇した。この背景には、オフィス賃料水準の上昇に加え、海外からの観光客の増加により商業施設・ホテル需要が好調であったこと、好調なeコマース市場による物流施設需要の拡大、堅調な分譲マンション需要の継続、さらには再開発の進展により当該エリアの利便性やにぎわい向上への期待が高まっていることがあると考えられる。
 オフィスマーケットは、人材確保を目的とした好立地・ハイグレードオフィスへの移転ニーズの高まりや充実した共用スペース整備等の職場環境改善に対する意識の向上により、空室率の低下とともに賃料水準も上昇傾向にある。特に人材投資の観点から、ワーカーの心身の健康に配慮した高付加価値のオフィスビルに対する評価は一層高まっており、立地や機能による選別がより明確になっている。当社が八重洲一丁目や京橋三丁目にて複数の再開発事業に参画する東京駅東側の八重洲・日本橋・京橋(YNK)エリアでは、「トフロム八重洲 タワー」が今月開業した。本物件ではオフィスフロアのコンセプトを「ウェルビーイング」とし、食を通じてワーカーの生活を支援する食堂や、41階からの眺望を楽しみながら温泉ミストによる湯治体験ができる「喫泉室」など多様なオフィスサポート施設を整備した。また、リニア中央新幹線の整備や複数の再開発が進む品川駅エリアでは、屋外バルコニーや入居者間交流を促進する共用ラウンジなどを備えた次世代型オフィス「Ave.Takanawa」が本年3月に開業した。いずれも好立地であることに加えてこれらの付加価値施策を多くの企業から評価されている。
 商業施設・ホテルマーケットは、海外からの観光客の増加などにより、都市部・観光地を中心に飲食店舗の売上やホテルの稼働率が向上するなど、今後も拡大が期待できる。「トフロム八重洲」の商業ゾーンには、八重洲の老舗や星付きの人気店など、東京発祥の飲食店を中心に68店舗が集結する。また、「博多コネクティッド」によって発展が続く博多駅前エリアにおいて、Park-PFI を活用し店舗棟等を整備した「明治公園」を本年8月に開園した。観光地としては、韓国をはじめとしたアジア圏の観光客を中心としたインバウンド需要が旺盛な大分県別府市において、2027年に日本の温泉文化を体験できる宿泊施設である「kokonoyu 別府」の開業を予定している。
 物流施設マーケットは、eコマース市場の拡大や人手不足などを背景とした物流拠点網の再整備に伴う需要が依然として底堅く、引き続き需要の拡大が期待できる。当社は、都心へのアクセスが良好な東京から千葉の湾岸部において、物流施設を複数開発・計画中であり、環境配慮型物流施設「T-LOGI」シリーズ関東最大規模となる「T-LOGI 南船橋」が今月竣工予定である。今後、半導体関連工場の集積地に近接した熊本市で2件の物流施設を計画しているほか、大都市に近接する千葉県船橋市や大阪市、福岡県久山町では冷凍・冷蔵型の、福岡県北九州市や岩手県北上市では危険物専用倉庫併設型の開発を計画するなど、さまざまなニーズに対応した競争力の高い物流施設を提供していく。
 分譲マンションマーケットは、建築費や住宅ローン金利の上昇など懸念はあるものの、都心部や地域を代表する中心地に位置する良質な住宅への需要は底堅く推移している。当社では、2028年完成予定の乃木坂駅直結タワーマンション「Brillia Tower 乃木坂」や旧三越千葉店跡地において本年完成した「Brillia Tower 千葉」が特に大きな注目を集めている。
 当社は、地政学リスクや景気・金利・建築費の動向といった不動産市況に影響を及ぼす要因について一層注視するとともに、お客さまのニーズを的確に捉え、人々が安全・安心・快適に過ごせるまちづくりに今後も注力していく。

■野村不動産(株) 代表取締役社長 松尾大作氏

 今回の地価調査は、全国平均で全用途平均・住宅地・商業地のいずれも5年連続で上昇を継続した。とくに商業地については上昇幅が拡大した。
 一方で、資材費や労務費を含む建築費は依然として高い水準にあり、各事業セクターを取り巻く事業環境は引き続き厳しい状況が続いている。加えて、金利動向や国際情勢の変化など、市場環境には不確実な要素も残されている。

 住宅市場に関しては、都心部や交通利便性、生活利便性に優れたエリアを中心に堅調に推移している。用地取得は引き続き難易度が高く、供給が急増する状況にはないため、環境は当面大きく変化しないものと認識している。物件価格の上昇が続き、金利も上昇する中、投資目的等での取得は昨年と比較し減速感があるものの、実需の住宅取得ニーズは底堅い状況が続いている。今後の金利動向や物価動向については引き続き注視していく。

 オフィス市場に関しては、企業による拡張移転需要や出社回帰の動きなどを背景に、需給がひっ迫した状況が続いていると認識している。当社保有のオフィスにおいても空室率は低い水準で推移しており、そうした市場環境を背景に賃料も上昇している。昨年開業した「BLUE FRONT SHIBAURA TOWER S」についても全区画で賃貸を開始しており、立地や機能性、環境性能を備えたオフィスに対する需要の強さを実感している。住宅事業同様、用地取得環境は引き続き厳しいものの、計画的に取得を進めることができており、お客様に選ばれる付加価値を備えた商品・サービスの提供によって、引き続き競争力のある事業展開を進めていく。

 ホテル市場に関しては、インバウンド需要を中心に高い需要が継続しており、今後も成長が期待される。現在開発を進める「NOHGA HOTEL 新宿御苑東京(仮称)」をはじめ、多様化する宿泊ニーズに対応した商品・サービスの提供を通じて、成長する市場機会を着実にとらえていく。

 当社グループは、不動産開発や関連サービスの提供を通じて、お客様一人ひとりの「Life」や「Time」に寄り添いながら、新たな価値の創造に取り組んできた。野村不動産グループ2030年ビジョン「まだ見ぬ、Life & Time Developerへ -幸せと豊かさを最大化するグループへ-」の実現を目指し、グループ全体で新たな付加価値を創造し、社会やお客様のニーズの変化を的確に捉えながら、豊かな暮らしと時間の創出につながる事業を推進していく。

■森トラスト(株) 代表取締役社長 伊達 美和子氏

 商業地の地価は、全国的に上昇基調が継続しており、特にインバウンド需要の高い観光地や再開発が進展する東京圏や大阪圏を中心に上昇幅が拡大している。
 東京都心部のオフィス市場では、企業による人材獲得競争の激化や事業拡大に伴う拡張移転の需要を背景に、高機能で競争力の高いビルへの需要が引き続き堅調に推移しており、単なる執務空間ではなく従業員エンゲージメント向上や企業価値の向上に資するオフィスへのニーズが高まっている。
 2025年10月に第2期竣工を迎えた東京ワールドゲート赤坂の「赤坂トラストタワー」においても現在の稼働状況はほぼ満床となっており、都心部のオフィス需要の底堅さを示している。
 関西エリアでは、大阪や京都を中心にオフィス需要と観光需要の双方が堅調に推移しており、再開発の進展やインバウンド需要の拡大を背景として商業地の地価上昇が継続している。新大阪エリアにある当社オフィスビルにおいても高い稼働率を維持している。また、当社グループが経営するホテルにおいても、大阪・関西万博の開催で観光需要が高まった 2025年上半期と比較しても、特にラグジュアリークラスを中心に高い稼働率と客室単価を維持している。
 一方、地方圏では、インバウンドを中心とした旺盛な宿泊・観光需要を背景に地価の上昇が継続しており、観光産業が地域経済をけん引する存在として重要性を増している。一部地域では中国からの渡航自粛が影響しているものの、欧米や東南アジアを中心とした需要は引き続き堅調であり、多様な国・地域からの旅行者に支えられる構造へと変化している。こうした流れは、当社グループが経営するホテルのうち、21施設においても顕著に表れており、2026年4月から7月の宿泊実績の前年比では韓国が約3割増、台湾が約8割増となっている。長野県白馬村では、近年インバウンド需要の拡大を背景に地価の上昇が著しい。2018年より営業している「コートヤード・バイ・マリオット 白馬」においては、宿泊者に占める外国人比率は年々上昇しており、冬季だけでなく夏季においても宿泊需要が増加している。出身国・地域別で見ても、欧米豪だけでなくアジア諸国の宿泊者も増加傾向にある。
 当社グループでは、2026年の訪日外客数を4,200万人前後と見込んでいる。今後は、地域資源の磨き上げや観光コンテンツの充実、人材育成、交通インフラや受入環境の整備などを通じて、地域が持続的に稼ぎ、投資し、成長できる仕組みを構築することが重要である。
 森トラストグループは今年ホテル事業50周年を迎えた。金利上昇や建築費高騰、人手不足といった課題はあるが、これまで培ってきた不動産開発・ホテル運営の知見を活かし、日本各地の魅力向上に取り組んでいきたい。

 

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