記者の目 / リフォーム

2008/9/2

「見せる」「魅せる」リフォーム

東急ホームズが、体感型施設を積極展開

 ストック時代の本格到来のいま、リフォーム事業に注力する企業が増えている。しかし、その一方で、リフォーム業界はユーザーの「不満足度」が高い業界でもある。こうしたユーザーの不満や不安の払拭に力を入れているのが、(株)東急ホームズ(東京都渋谷区、代表取締役社長:森敏郎氏)。中身の見えづらいリフォーム工事の「裏側」を見せる体感施設等を首都圏で積極展開。ユーザーの不安を取り除くことで、受注増に結び付けていく方針だ。

「上野毛マンションリフォーム体感館」のリフォーム施工前住戸。むき出しの躯体が確認できる
「上野毛マンションリフォーム体感館」のリフォーム施工前住戸。むき出しの躯体が確認できる
水回りの配管取り回しもすべてチェック可能
水回りの配管取り回しもすべてチェック可能
1枚目の写真のリフォーム完成後の住戸。間取りはオリジナルと変化なく、水回りも化粧直しだけ。建具類だけ、輸入住宅「ミルクリーク」の意匠を取り入れたものに換装している。
1枚目の写真のリフォーム完成後の住戸。間取りはオリジナルと変化なく、水回りも化粧直しだけ。建具類だけ、輸入住宅「ミルクリーク」の意匠を取り入れたものに換装している。
スケルトンリフォームにより間取りも一新し、最新の住設機器により、新築同様にリフォームされた住戸。サッシュは高さこそ低いものの、カバー工法により新品に変えてある
スケルトンリフォームにより間取りも一新し、最新の住設機器により、新築同様にリフォームされた住戸。サッシュは高さこそ低いものの、カバー工法により新品に変えてある
既存戸建てを「TODAY暮らしアップ」によりリフォームしたモデルハウス。外観も、輸入住宅「ミルクリーク」風にアレンジしている。
既存戸建てを「TODAY暮らしアップ」によりリフォームしたモデルハウス。外観も、輸入住宅「ミルクリーク」風にアレンジしている。
1階部分はフルスケルトンリフォームされ、広々としたLDKを実現
1階部分はフルスケルトンリフォームされ、広々としたLDKを実現
床下がどのような状況にあるのかが、一目でわかるよう、部分的にくりぬいてある
床下がどのような状況にあるのかが、一目でわかるよう、部分的にくりぬいてある
2階のクローゼット内部に、全館空調ユニットを収めた。断熱強化も含めて数百万円単位の出費となるが、快適性は格段に向上する
2階のクローゼット内部に、全館空調ユニットを収めた。断熱強化も含めて数百万円単位の出費となるが、快適性は格段に向上する

ユーザーの抱える「3つの不安」を解消

 東急ホームズは今年4月、ハウスメーカー・東急ホームとリフォーム会社・東急アメニックスが経営統合して生まれた会社。注文住宅事業では、試泊ができる展示場「クラスト」や、ライフスタイル提案型の「クラストパーク」などを展開。このノウハウを使い、新築住宅とリフォームモデル住宅とを並行展示する「クラストサイト」を展開してきた。
 こうした一連の事業展開のテーマとなっているもの。それは「見せる」ということだ。

 「リフォームを考えているユーザーが抱く不安は、その会社が信用できるかという『企業への不安』、一体いくらかかるのかという『価格への不安』、そしてどんな工事をしているのかという『品質・施工への不安』という3点に集約されます。当社は、東急ブランドとしての施工実績があり、定価制リフォーム『TODAY暮らしアップ』で企業・価格に対する不安に応えてきました。品質・施工への不安を払拭するためには、リフォームの中身をきちんと見せていくことが大事です」と語るのは、同社取締役副社長執行役員・阿部信行氏。

 リフォームというのは、ユーザーが施工現場を見る機会が極端に少ない。そこで同社は、ハウスメーカーのノウハウを生かし、モデルハウスやクラストサイト、ショ―サイトなどを使い、リフォームの裏側を積極的に「見せて」きた。さらに、その考えを徹底させるためスタートしたのが、今回の「暮らしアップ体感館」だ。

リフォームの「ビフォー」「アフター」を実大展示

 「暮らしアップ体感館」は、実際に使われてきた建物を使い、床下・壁内・耐震補強・部資材の特徴など、通常では見ることの難しいリフォームの「裏側」をユーザーに見せる施設で、リフォーム業界では初の試みとなる。8月23日に首都圏3ヵ所(上野毛、高井戸、横浜)で同時オープンした。

 先日記者は、「上野毛マンションリフォーム体感館」(東京都世田谷区)を見学した。

 同施設は、リフォーム時の仮住まい等に使っている築35年の賃貸マンションを、オーナーの許可を得て展示施設としたもの。体感施設として使っているのは、同マンションの3戸、いずれも元は専有面積57平方メートルの3LDKだ。1戸は、リフォームを開始する前、内装類をすべて取り払ったスケルトン状態で展示。床を貼り込む前のスラブ、天井・床に設置された配管・配線、古い水回りなどをそのまま見せており、スタッフがこれからどのようにリフォームを進めていくかを説明していく。

 残りの2戸は、リフォームが施工済みの住戸で、実際の仕上がりや部材の印象、水回り等の住設機器の使い勝手が体感できる仕組み。いずれも、定額制リフォーム「暮らしアップ」で施工されたものだが、その内容はまったく別物とし、ユーザーに比較検討の材料として提供する。1つは、間取り、水回りは一切変えずに、内装と建具類だけリフォームした住戸。建具は、同社の新築輸入住宅「ミルクリーク」のデザインがいかされたものを使っており、シンプルながら清潔感ある雰囲気を出している。

 もう1つの住戸は、間取りを2LDKに変更したうえで、水回りを中心にふんだんにオプションを施したもので、まるで新築マンションのような快適さを実感できる。サッシュについても、古いサッシュの型枠をカバーする工法で新品同様にリフォームしており、標準リフォームの住戸と比較すると、強烈なインパクトがある。施工費は、前者の約600万円に対し、後者はプラス800万円のコストアップとなる。

 なお、「高井戸クラストサイト体感館」では、実際の戸建住宅を使い、床下の防蟻・防湿構造、屋根や壁の構造を展示するほか、最近のリフォームトレンドである耐震補強について、「制震システム」の展示を行なう。また、「横浜西口リフォーム体感館」は、既存のショールーム内に、実大のマンションリフォーム施工現場と構造模型を展示。「上野毛」「高井戸」同様のプレゼンテーションを行なっている。

リフォームもここまでできる、「全館空調」でさえ施工が可能

 同社はこの「リフォーム体感館」に加え、「TODAY暮らしアップ」による全改装を施した実例モデルハウスを首都圏4ヵ所、宿泊も可能な「ミニ体験館」を首都圏4ヵ所で展開。さらに、部資材展示の「ショールーム・ショ―サイト」を1つの「リフォーム・メガサイト」と捉え、リフォームに関するありとあらゆる情報をユーザーに実感してもらいながら理解を深めてもらう。

 また、構造の補強や住設備のお色直しだけでなく、暮らし方そのものを変えてしまう「ライフスタイル提案」にも力を入れる。たとえば、横浜・市が尾のモデルハウスでは、全館空調の施工を行ない、その裏側を見せている。全館空調は、ユニットだけであれば50万円程度だが、実際には住戸の断熱性を上げるための断熱施工で数百万円のコストがかかる。それでも、「リフォームだってここまでできる」「ライフスタイルがガラリと変わる」ということを訴求する意味で展示しているのだという。

 同社は、これら一連の施設を使って、定価制リフォームのシェアアップを図る。07年度はわずか172棟に過ぎなかった「TODAY暮らしアップ」の受注棟数を、08年度は600棟まで伸ばし、リフォーム事業全体の売上高を137億円にまで引き上げる方針だ。

 定価制リフォームといえば、住友不動産(株)の「新築そっくりさん」が現在ダントツのナンバー1。いまや、年間受注棟数は7,000戸を超え、売上高も837億円に達するトップランナーに、同社は少しでも早く追いつきたい考えだ。(J)

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