トヨタホーム、インターネットを活用したチャット商談を開始
トヨタホーム(株)(名古屋市東区、取締役社長:森岡仙太氏)は、トヨタ自動車(株)(愛知県豊田市、代表取締役社長:豊田章男氏)が運営している、インターネット上の3次元仮想都市「トヨタメタポリス」(http://metapolis.toyota.co.jp)内にある「トヨタホーム・バーチャル住宅展示場」で、新しい営業手法を開始した。営業スタッフと顧客が、それぞれのパソコンからアバター(自分の分身)を使い、直接顔を合わすことなく、チャット方式で商談が行なえるという業界初のサービスだ。本稿はこのバーチャル展示場を活用した営業手法に注目したい。
変わる住宅展示場
同展示場がある3次元仮想都市「トヨタメタポリス」は、インターネット上に東京23区を再現したバーチャル空間「meet-me(ミートミー)」の一角にある。クルマをテーマとした仮想都市で、東京タワーや都庁など、現実と同じ施設をはじめ、クルマの展示場やイベントホール、博物館などさまざまな施設が設けられている。服装や髪形など、自分の好みに合わせて設定できるアバターを操作し、仮想都市内で、ゲームや買物をしたり、クルマを運転するなど、さまざまな行動をし、楽しむことができる。会員登録・利用ともに無料となっている。
同展示場は、この「トヨタメタポリス」内に、6月25日(金)にオープンした。開設した時点では、実際の商談予約はできるものの、バーチャル空間での商談は行なっていなかった。しかし、オープン以降、新規来場者が月に1万人と好調に推移。同展示場を訪れた顧客によるモデルハウス実棟見学の予約や、各地の営業担当者への商談予約も件数が伸び、成約も出始めたことから、アバターを使って商談が行なえる新しい営業手法を10月8日(金)より開始したのだ。
同展示場には、ネット世代をメインターゲットにした企画型商品「LQ」の3タイプを展示している。住宅購入検討者は、アバターを操作し、商品の屋外・室内を、実際のモデルハウスと同様に歩き回り、3次元で見学することができる。
モデルハウスには、外壁やフローリング、クロスなど、内外装のカラーや、水回り設備を変更できるシミュレーション機能が付いている。ボタンを押せば、瞬時に仕様が変わり、コーディネートを検討できるのは、バーチャルならではの特長といえるだろう。
商談を希望する客は、同展示場内で最初の商談日時をネットで予約。予約データを受け取った本部は、建設予定地に一番近い展示場の販売員に担当を割当てる。予約の時間になると、販売員のアバターがバーチャル展示場に出向き、チャットで商談を行なうという流れだ。
販売員は、所属する販売店と個人名を公表するが、利用者はニックネームだけで会話でき、話の内容は、商談室に入ると他の会員には見られない仕組み。プライバシーが確保されているため、安心して商談できるという。
2回目以降の商談日時は、当事者同士の話合いで決めていき、ある程度話が進むと、現実の展示場などでの対面商談に移っていく。
「バーチャル展示場は、あくまで実際の商談に入るためのきっかけづくりです。間を置かず、できる限り早く直接面談の予約をとることが鉄則。社員の営業効率を上げることが真の狙いなのです」(同社営業統括部営業企画室IT推進グループ長・松井志夫氏)。
アバターで商談対応する販売員は、全国27都府県、105名。今後は、さらに対応する販売員を増やしていく方針だ。
記念イベントも盛況
バーチャル展示場がスタートした10月8日(金)には、展示場内のイベント広場で、記念イベントが開催された。
イベント会場には、地域別のブースが設けられ、各地区別に営業スタッフがアバターで登場、顧客とのコミュニケーションを図った。イベント参加者には、実際の展示場に持っていくとプレゼントをもらえるクーポンなど、特典を用意。2時間程の間に、約2,000人が来場し、そのうち1,400名がアンケートに回答した。これによると、男性は53%、女性は47%。20歳代が30%、30歳代が26%と多くを占め、次いで40歳代が19%、50歳代が11%となった。参加者の半数は、住宅購入検討者ではなく、単にバーチャル展示場に興味を持った人だという。
しかしその後、イベント時に発行したクーポンを持参して、実際の展示場に訪れる人が、地方を中心に出てきている。同社では、遠方の顧客にも有効な営業手法であると手ごたえを掴んだようだ。
新しい集客手段として期待
バーチャル展示場を活用することで、顧客も販売員も移動が不要になることから、移動コストも含めた大幅な営業の効率化が期待できる。
イベントを開催するときも、設営費がほとんどかからず、また、モデルハウス1棟の建築費用も150万~200万円にとどまるなど、コスト削減の効果は大きい。そして、これまでのように、スクラップアンドビルドではないため、環境面でも優れている。
「バーチャル住宅展示場なので、他社との競合がなく、当社の商品のみをアピールすることができます。イベントを開催しても、実際の展示場のように、他社にこちらの動きを察知されることがない」(同氏)と企業側のメリットも多いようだ。
さらに、基本的には、トヨタホームの住宅に興味を持つ人が会員となっているため、イベント情報やお得な情報を掲載したメールマガジンを送付すると、折り込みチラシよりも反響が高いという。同社では今後、商談申込み3件に1件の成約をめざしていく。
バーチャル展示場の出展商品は現在1商品3タイプだけだが、今後は幅広い顧客のニーズに応えられるようトヨタホームの全商品を出展していく。
また、このほかにもさまざまな活用方法が期待できる。
例えば、実際に新築住宅を建てる前や、リフォームをする前に、シミュレーションを行なったり、アパートのモデルルームを展示してオーナーや入居者に公開することも可能だ。また、試作品のモデルを展示して顧客から意見をもらうなど、マーケティングに活用するなどの構想もある。販売員の研修もネット上で行なえれば、手間やコストが大幅に削減できる。
チャットで気軽に商談できることで、直接面談のハードルを下げた今回の営業手法は、各住宅展示場での集客数が伸び悩むなか、新たな集客手段として可能性が見えてきた。
顧客との新たな接点創出として、期待したい。(さ)
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