記者の目 / リフォーム

2019/1/10

不人気だった学生向け賃貸が満室稼働に!

 入居者の入れ替わり時期が読みやすい、親の支払いにより家賃の未徴収が問題になることが少ないなど、運営上のメリットが多い学生向け賃貸物件。その一方で、少子化、一般家庭の収入減少などの要因により、1人暮らしをする学生が減少。大学付近の学生街にありながら苦戦する物件が出てきている。今回は、そうした中でも空室が埋まらなかった物件を満室稼働物件に再生した事例を紹介してみたい。同物件は、地方ではまだ少ないソーシャルアパートメントにすることで物件の付加価値を向上し、ルームシェア可能で実家から通う学生でも借りやすい賃料設定にするなど、運営上の工夫も取り入れている。

◆破格値の物件を静岡では新しい物件に

 静岡市を中心に不動産売買仲介、リノベーションを手掛ける(株)オレンジハウス(静岡市葵区、代表取締役:中戸川 豊氏)は2016年4月、投資物件を探していたN氏に、従前、学生向け賃貸アパートだった物件を仲介した。

 同物件は、1988年築の鉄骨造2階建て(静岡市駿河区、総戸数8戸)、JR「東静岡」駅徒歩17分に立地。静岡大学、静岡県立大学など複数の大学が集まる学園地区という好立地だが、近年、同エリアでも実家や近場の静岡県内から通う地元学生の割合が増えており、空室が埋まらず破格値で売りに出されていた。

 同社は、以前、静岡市葵区の分譲マンション2戸をN氏に仲介し、静岡ではまだ珍しかったシェアハウスにリノベーションした経験があった。そのシェアハウスが高稼働で推移しており、購入物件が破格値だったこともあり、今回も静岡ではまだ新しい物件にチャレンジすることを提案。全8戸中1戸を共用スペースとする家具付きのソーシャルアパートメントへリノベーションし、三島など近場の静岡県内の実家から通う学生に“この家賃なら部屋を借りてもいい”と思ってもらえるよう、賃料を押さえられるドミトリー部屋を取り入れることとした。

◆コストをかけずに若者向けの内装に

 施工状態が良かったこともあり、賃料を安く設定することを念頭に、できるだけコストをかけずに改修した。内装のポイントとして各住戸の床を無垢材に変更したが、それ以外に関しては、キッチンをアイアン塗料で塗装し壁にアクセントタイルを貼るなど、室内の雰囲気を若者向けに演出する表層部の改修にとどめた。

従前の内観。施工状態が良かったこともあり、表層部を中心に若者向けに改修することに
キッチンをアイアン塗料で塗装し、アクセントに壁紙やタイルを貼るなど室内を明るい雰囲気に

 また、入居後の生活を始めやすいよう照明やテーブル&イス、冷蔵庫などの家具・家電を設置。そのほかIHクッキングヒーターや室内干し、ディンプルキーなど、今どきの若者世代に当たり前になってきている設備も新規に導入した。

 共用部は、建物の入口に一番近い1階住戸を、イベントやパーティーなど皆で集まって楽しい時間を過ごせる共用スペースに改修。炊飯器や電子レンジ、トースター、たこ焼き器などキッチン設備を充実させ、リビングには、サッカーゲームなど皆で集まって遊べるグッズを用意した。これらにかかった期間は約3ヵ月、費用は外壁塗装含め約800万円となった。

入居者が集まって楽しい時間を過ごせるようにサッカーゲームなども用意

 なお、個室とドミトリー部屋の割合は入居者の希望に応じて臨機応変に対応している。ドミトリー部屋にする場合は、1人が上部ロフトを寝室として利用することを想定し、ベッド下が収納スペースになるロフトベッドを設置。プライバシーを守る目隠しカーテンも取り付けている。

◆低賃料や充実した共用部が高評価

 物件名を「コクーンベース 東静岡」とし、16年11月より入居募集を開始。月額賃料は相場より安くドミトリー1人当たり2万7,000円、個室は3万9,000円(個室)に設定した。また、ルームシェア可能とするに当たり、ドミトリー部屋が結果的に個室とならないよう、他に空き住戸があっても1室2人ずつ順次埋める決まりとした。
 運営は、1棟目と同じシェアハウス運営会社に委託。同社が定期的に入居者以外も参加可能なイベントや英会話等のセミナーを共有部で開催し、お試し宿泊会を実施したこともあり、4月の新入生入学時期には満室となった。安めの賃料設定であるのに設備が充実している点や、皆で集える共用部などが評価されているという。

共用部では運営会社が定期的にイベントを開催しコミュニティ形成を支援
建物外観。外装も従前の色合いを刷新するにとどめ改修費を抑えた

*写真はすべて(株)オレンジハウス提供

◆◆◆

 最近、同社の影響で他社から学生向けシェアハウスが出てきたこともあり、3棟目は様子見だというが、同社では、駅前の空ビルをコワーキングスペースに再生するなど、さまざまな物件を高稼働物件に再生させている。そのコワーキングスペースの稼働状況が良好なことから、1フロア空室が出た隣りのビルオーナーから利活用の相談を受け、ゲストハウスリノべ&運営にもチャレンジしているという。
 空室になっている物件もこのように立地に合わせた工夫次第で高稼働物件になりえる。もちろんその工夫はハードだけなくソフト面も重視することがカギになるだろう。(meo)

この記事の用語

コワーキングオフィス

独立して働く人々が共同利用しながら働く事務所。そのような場所を「コワーキングスペース」ということもある。

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少子高齢化、人口減少などを要因に、働き手不足が深刻化するビル管理業界。その課題解決の糸口を、最新のIT技術を駆使した「ロボット」の活用に見出す声も多い。(株)三菱地所ではここ数年、自社管理物件でのロボットの導入に向け、実証実験を重ねている。