記者の目 / その他

2021/9/2

飲食店の新規出店を支援

月500円で銀座に出店

 長引くコロナ禍で大きなダメージを受けている飲食業界。新型コロナウイルス感染拡大防止のため、時短営業や酒類提供の制限、休業を要請されるなど、厳しい経営状況に陥っている。そんなコロナ禍で苦しむ飲食業界を応援しようと、支援に乗り出す企業も出てきている。今回は、飲食店に向けた新しい出店支援の取り組みを取材してみた。

 銀座の一等地にある路面店

初期費用を下げて、店舗出店を応援

 飲食店を中心に店舗の総合支援事業を行なっている店舗流通ネット(株)(東京都港区、代表取締役社長:戸所岳大氏)では、店舗リース事業、店舗不動産ファンド事業などを取り扱っており、飲食店の出店から退店までのワンストップサービスを、都内を中心に4拠点(東京、横浜、名古屋、大阪)で展開している。

 同社が飲食店を対象に提供する支援サービス「ANYONE(エニワン)」は、同社がオーナーから借り上げた店舗を、家賃500円(税込み)で3ヵ月間貸し出し、お試し出店することができるという。

 対象となる店舗は、東京メトロ銀座線「銀座」駅徒歩2分に立地。周辺にはさまざまな飲食店やオフィスなどが立ち並び人通りが多い、数奇屋通りにあるビルの1階の路面店(東京都中央区)だ。面積は15坪。客席はカウンターで9席。もともとは和食居酒屋だった店舗を居抜き物件として、月500円で貸し出すことにしたという。厨房機器や皿などの備品がすべて揃っていて、保証金、礼金、仲介手数料は不要となっている。

 同物件は、約10年入居していたテナントが銀座の別の場所に移転することを機に、テストケースとして今回の取り組みを試みたという。周辺の賃料の相場は坪単価約5万円と、月500円は破格の賃料だ。3ヵ月間お試し出店した後、運営が軌道に乗れば、そのまま本開業することも可能。営業の状況を見ながら、家賃をいくらで設定をするのか、売り上げに応じた歩合にするのか、テナントと相談して決めていくという。

 同社では、あくまで出店の支援を前提につくったモデルのため、うまくいかなかったときも、リスクなくやめられるように、解約料は不要、原状回復も免除にしている。

店舗内装。以前は和食居酒屋だった

独立開業希望者から多くの反響

 飲食業界は、コロナ禍で大きな打撃を受けているため、これから新たに参入したり、店舗を拡大するのは、ハードルが高い状況だ。出店支援を模索していた同社は、店舗運営のリスクを極端に下げることで、個人・法人関係なく、出店の可能性を広げていくことが、業界への最大限の貢献になるとの思いから実施したという。「初期投資を抑えて始められるので、リスクが少なく、これから独立開業する方の力試しや、新しい業態のテストマーケティングの場として利用してもらえれば」(同社代表取締役・戸所岳大氏)。

 テナントを募集したところ、問い合わせベースで数十件の反響があったという。想定していた通り、内見者は現在飲食店に勤務し、飲食店で独立開業したいという個人が8割。残り2割は、飲食業以外のビジネスをしており、飲食店にも取り組んでみたいという法人だった。以前のテナントは和食居酒屋だったため、その内装を生かして、そのまま出店するというのを条件としている。審査を行なった上、出店テナントを決定する。現在、出店テナントはほぼ決まっており、9月中旬に正式に契約書を締結、本格的に稼働させていくという。

 支援の目的は、出店テナントの本業を成功させること。ここで出店したオーナーが、ゆくゆくは多店舗展開へと広げていくというのが同社の目指すところだ。

皿などの備品を一式揃えている

◆ ◆ ◆

 東京・銀座の一等地で力を試したい人、新業態でどれだけ成功できるのかチャレンジしてみたい人など、個人・法人に関係なく募集する同社の取り組み。初期費用が抑えられるため、最小限のリスクで開業することができるのが最大のメリットだ。新しいビジネスを試したい個人・法人が、思い切ってトライできる、ユニークな取り組みだと感じた。成果に期待したい。(さ)

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お知らせ

2024/3/7

「海外トピックス」を更新しました。

飲食店の食べ残しがSC内の工場で肥料に!【マレーシア】」配信しました。

マレーシアの、持続可能な未来に向けた取り組みを紹介。同国では、新しくビルを建設したり、土地開発をする際には環境に配慮した建築計画が求められます。一方で、既存のショッピングセンターの中でも、太陽光発電やリサイクルセンターを設置し食品ロスの削減や肥料の再生などに注力する取り組みが見られます。今回は、「ワンウタマショッピングセンター」の例を見ていきましょう。