記者の目

2022/11/2

ウクライナ・ロシアの争いと日本の金融(前編)

 ロシア軍のウクライナ侵攻がスタートしたのは2月24日。気が付けばすでに8ヵ月以上が経過し、今も膠着状態が続いている。戦況の長期化、膠着化に伴い、現地での被害は拡大。そしてさまざまな影響が遠くはなれたここ日本にまで及んでいる。
 しかし、遠く離れた外国の情勢が、なぜここまで日本に影響を及ぼすのか。経済を体系的に学んでこなかった記者には、恥ずかしながらわかるようなわからないような…。
 そこで「月刊不動産流通」で「不動産事業者と地域金融機関のWin-Winな関係に向けて」で連載され、金融を中心にさまざまなデータを分析している佐々木 城夛氏に、ロシアに起因する経済混迷の状況についてインタビューを実施。2回に分けて紹介する。

◆混迷続くウクライナ情勢

 ‐‐ロシア軍が原発までも攻撃するなど、ウクライナ情勢はますます混迷を極めているように思います。金融面でも影響が出ているのでしょうね。

お話をうかがった沼津信用金庫参与
(元・信金中央金庫)の佐々木 城夛氏

 「金融機能は、国や地方公共団体の財政のほか、商取引や市民生活の裏側を支える役割を担っています。そのため、経済的な制裁を加える際に、金融機能を制限することを手段として利用することが珍しくありません。
 国をまたいでの金融取引では、
①  借款のほか国・地方公共団体・公社あるいは個別企業への投融資
②  貿易すなわち輸出入代金や生活費などの送金・受け取り
が行なわれています。日本は、米国を中心とした“西側陣営”に属していますので、ウクライナを支援しています。その手段として、①②の両方に対する経済的な制裁が、米国の主導によってロシアに実施されています。

遠い異国の争いにより、金融にも大きな影響が(写真はイメージ)

 ‐‐制裁の具体的手段とはどういうものがあるのでしょうか?

 「主なものは
(1)金融機関に対するロシア(国)やロシア国内特定企業との取引停止命令
(2)格付機関に対するロシアの国債と社債に対する格付の禁止命令
(3)国際機関であるSWIFT(※Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunicationの略称)に対するロシアの7銀行クループに対するシステムの利用排除命令
 の3つです。

 (1) は、米国金融機関に対する「ロシア国債やロシア企業社債の利払いや償還の米国金融機関からの実施」に対する禁止命令が代表例です。国債などが償還されない事態をあえて引き起こし、資金調達を不安定化させることを目的としたものです。
 (2)は、Moody’sやスタンダード&プアーズなどに対する格付停止命令が代表例です。格付をなくすことで投資家の主要判断材料をなくし、投融資を止めることが目的です。
 (3)は、ほかに事実上の代替システムがない中で、資金をやり取りさせないようにするというものです。資金のやり取りができなければ、そもそも資金の受け入れや支払い自体ができなくなります。その事態を引き起こそうとしているわけです。
 こうした施策は西側諸国が連携して実施しているため、すでにわが国でも、ロシア国内に対する送金などが極めて難しくなっています。

 ‐‐SWIFT以外の送金方法もありそうに思うのですが…? 

 「技術的には、一昔前によく利用されていたテレックス(Telex)などで送金することができます。しかし、できるということと、その送金依頼に金融機関が応じるかどうかは別問題です。
 世界中の外国為替時に送金されている通貨の大部分はドルとユーロです。これらを公式通貨とする西側諸国が、今回の排除を主導していることがカギです。金融機関はどの国でも許認可事業者ですので、西側諸国内の金融機関での送金応諾事実が伝われば、各当局からその理由などを詳しく精査されます。つまり当局から『お叱りを受ける』ことになってしまいます。
 ですから、今回排除された7銀行グループ以外であったとしても、ロシア向けの送金はすでに極めて難しい状況にあります」

◆日本の物価に大きく影響

 ‐‐経済交流が冷え込み、日本にはすでにさまざまな影響が及んでいるように感じますね。

 「日本とロシアとの貿易を見ると、2011年から20年まで一貫して輸入超過・経常収支赤字でした。ですから、貿易の停止により、ロシア側は、獲得外貨が減少することになります。
 日本からの輸出品は自動車など工業製品、輸入品はエネルギーや原材料のほか、カニやエビなどの魚介類が中心です。このため貿易停止後には、日本国内の中古車などの価格が下落し、逆に光熱費や魚介類などの価格が上昇することとなりました」

 ‐‐では、ロシアのウクライナへの軍事侵攻が、今日本で起こっている“物価高の元凶”とも言えますね。

 「物価については多数の要因が相関し合って変動しますので、そのようなことを一概には言えません。しかし、今般のウクライナとロシアによる争いがもたらしている影響は、供給不足を主要因とする原油高と並んで極めて大きいということはいえるのではないでしょうか」

(後編に続く)

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2022/11/17

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