海外トピックス

2021/6/1

vol.381 偉人に思いを馳せ、時間をゆったり満喫。名所「ゲーテハウス」に出かけてみた【ドイツ】

 ワイマールと聞くと、1919年に制定された「ワイマール憲法(ヴァイマル憲法とも表記)」を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。多くの建物が世界遺産として登録され、また99年には欧州文化首都に選ばれたワイマールは、国内外問わず、観光地として非常に人気があります。
 今回は緊急事態制限が出される前の2020年10月下旬に「ゲーテハウス」を訪れた時の様子をリポートします。

若かりしころのゲーテ
老年のゲーテ。面影はまったく変わらず、気品がある

ゲーテの人生の軌跡を追う
「ゲーテ国立博物館」

住宅街の一角にある「ゲーテハウス」の外観。静かな佇まい
「ゲーテハウス」の目の前には、大きな石畳の公園がある

 ワイマールを訪れる多くの観光客のお目当ては「ゲーテ国立博物館」。彼の旧邸宅がほぼ昔のままの形で保存されているだけでなく、その広い建物内部の一部が博物館となっています。現在では「ゲーテハウス」の愛称で呼ばれ、その美しさで定評のある庭園を一目見ようと、主に国内の観光客の間で人気スポットとなっています。

「ゲーテハウス」の斜め向かいにあるレストランは、当時ゲーテの行きつけだったという

 「聖なる泉」という意味を持つワイマールは、神聖ローマ帝国においてはザクセン=ヴァイマル公国の首都でした。そのため当時そこで公務に携わるバッハやゲーテ、シラーといった文化人が交流を持っていたことからも、非常にアカデミックな土地。住む場所としては申し分ないと、非常に人気のある場所なのです。洗練されていて、緑豊かでとても静か。ご年配の住民が非常に多いと感じます。

ゲーテの自筆書簡の一部
鉱石コレクション

 博物館内に足を入れると、文豪として活躍した彼の原作品だけでなく、親交のあった文化人たちと交わした書簡やデッサン、また絵や彫刻などのコレクションなどが展示されています。弁護士として働く傍ら、いくつもの肩書を持っていたことで知られるゲーテ。公務や創作活動の合間を縫っては妹コルネーリアにたびたび会いにいくなどしていた様子から、意外にも仕事一辺倒というよりは、家族想いだったことも伺えます。

ゲーテによるスケッチ

 詩人として多くの素晴らしい作品を残したゲーテですが、とても裕福な家庭で育ち英才教育を受けたことが、彼の後の知的好奇心に大きく影響を与えたことにも触れるべきでしょう。特に自然科学の分野で多くの研究発表をしたゲーテの鉱石コレクションや、実際使ったとされるピック、また研究活動の際の衣装や愛用のベルトなど、いずれも見ておきたいポイントです。

陽が差し込む窓は広く、
どの部屋も明るい構造

旧邸宅の内部。重要文化財がそのまま展示してあるため、部屋にはガードマンがいる
部屋にあるものは全てアンティーク。ドアの作りも独特だ。壁の色はかなり明るいのだが、派手に感じられないのが不思議

 薄暗い博物館を抜けると、光が窓からあふれる旧邸宅にやってきます。このゲーテハウスはほぼ当時のまま保存されていることで知られていますが、それを証明するかのように、廊下は狭くてギシギシ音を立て、また渡り廊下や天井などの風貌も、当時のままの生活感が出ているのが味わい深いです。イスやテーブルを含めた家具一式はどれもとても低めにできていて、当時の人たちがどれだけ小さくて華奢だったかを知ることができます。

寝室にあるイスや引き出し一つ一つになされた装飾で、当時の流行を馳せる
公務で諸外国を飛び回っていたゲーテの持ち帰ったコレクションの宝庫だ

美しくて広い庭園は豊かさの象徴

 廻覧ルート通りに歩みを進めると、最終的に庭園へと続く扉に着く。

近くは車通りもあるはずなのに、庭園内はとても静か。風向きなども計算に入れ、設計されている邸宅なのだろう
庭園に何本かある大木。ゲーテハウスを昔から見守ってきた存在だ

 ゲーテハウスは庭園も含め、全てが自然と一体に溶け込んだ、素晴らしい作りの邸宅です。時間を気にせずに一つひとつをゆっくり見学できたことは、コロナ禍において非常に贅沢で、貴重な経験でした。

季節ごとに違う花々が楽しめる
庭園の一角にはハーブ園もあった

 ドイツでは現行の緊急事態制限は3月8日からは少しずつ緩和され、ゲーテハウスへは人数制限つきで再び入場できるようになりました。いつか元の生活に戻り、当たり前のように芸術を楽しめる機会が持てることを願ってやみません。


キュンメル斉藤 めぐみ
ドイツ在住。「海外書き人クラブ」所属。外資系企業勤務を経て、2015年より近郊コミュニティーカレッジにてヨガや栄養学のクラス、料理教室を主宰。現在フリーランスライターとして、文化・生活情報を提供、寄稿。掲載メディア媒体は、『イングリッシュジャーナル』(アルク)、『家の光』(JA農協グループ)、『サライ』(小学館)、ぐるなび、不動産流通研究所等。

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