国土交通省は12日、「高齢者の街なか居住への適応に配慮した都市・住宅整備に関する研究」を取りまとめ、発表した。
同研究では、子供世帯との近居や生活利便性の高さ等を求めて地方都市の郊外部から街なかへ転居する高齢者が増加するなか、環境の変化により情緒不安定やひきこもり等、精神的な健康状態を悪化させる高齢者が出てくる可能性もある。そこで少しでも良好な健康状態を維持して生活できるよう、高齢者の街なか居住への適応に配慮した都市施設や住宅等の配置・構造のあり方を検討したもの。
調査都市は、青森市、弘前市、盛岡市、仙台市、富山市、高岡市、金沢市、熊本市の8都市。調査都市内の中心市街地活性化基本計画内に住む60歳以上の住民を対象に、「転居後の2年未満の高齢者(以下、「転居群」という。)」、と「転居して10年以上経過した高齢者・転居していない高齢者(以下、「対照群」という。)」それぞれにアンケート調査(転居群252名・対照群1,227名)およびインタビュー調査(転居群24名、対照群33名)を実施した。
これによると、「転居によって、高齢者の精神的健康はどうなりますか?」という問いへの回答では、転居群は対照群に比べて「住宅仕様」や「まちの安全・環境」への満足度が高いものの、「地域との交流」に関しては、満足度が低く、孤独感が強いことがわかった。
また、「どのような地域であれば、精神的健康を保ちやすいですか?」という質問への回答を分析すると、高齢者にとっては、商業系地区で買い物や通院・文化施設等にも徒歩や公共交通ですぐに行くことができるとともに、街なかであることによる活気が感じられるような地区であれば、高齢期に感じやすい孤独感を軽減でき、精神的健康も良好に保ちやすいと考えられるとした。
これらの結果を踏まえ、同省では「街なかの成熟度が高い地区での居住施設の整備など、住宅・都市施設をあわせて街全体としての一体的な整備を行なうことが重要」とした。