(一社)東京ビルヂング協会は2日、日本工業倶楽部会館大会堂にて、オフィスビル分野における「低炭素社会づくり推進キャンペーン」をテーマに講演会を行なった。
21世紀政策研究所研究主幹、東京大学公共政策大学院教授の有馬 純氏が「パリ協定後のエネルギー温暖化政策の課題」と題し基調講演を行なった。COP21までの道程を説明しながら温暖化交渉が難航する理由として、温室効果ガス排出削減に負担についてどう分担するかなど国益を賭けた経済交渉となる点、国連での全員一致の意思決定プロセスが必要であることなどを挙げた。それにも関わらずパリ協定が合意に至った背景には、米国のオバマ元大統領のレガシーを残したいという思いと、中国国内の大気汚染対策が急務だという考えが大きく影響したためであると私見を述べた。
また米国のトランプ政権下でのエネルギー温暖化対策についても触れ、「もし米国が離脱してもパリ協定体制は崩壊しない」としつつも、米国不在のルール交渉では途上国の発言力が増す恐れがあることなど今後の国際的な取り組みへの影響を予測した。そのような状況の中で日本の地球温暖化対策においてとるべき対応は、「国際交渉の場で、日本の経験を建設的なルール作りへのインプットとして共有すること」、「米国が戻ってこられないようなルールにならないようアンブレラグループと協力すること」、また「技術貢献、米国におけるビジネス機会の追求」などであるとし、米国の対応にかかわらず「いろいろな局面で、やるべきこと、やるべからざることを自分で決めること」が重要であると自論を展開した。
その他、国土交通省住宅局住宅生産課建築環境企画室長の山下英和氏が「建設物の省エネルギー施策の動向について」と題し政府の省エネ対策について話をしたほか、低炭素社会づくりの先端技術の活用について、日本土地建物(株)都市開発事業部副部長の高橋勝巳氏、三菱地所(株)開発推進部参事の奥山博之氏がそれぞれ自社の事例を紹介した。