不動産ニュース / ハウジング

2017/7/14

2030年の高齢者住宅モデルを提案

Tアライアンスが提案する2030年の高齢者住宅モデル

 (株)タムラプランニング&オペレーティング(東京都千代田区、代表取締役:田村明孝氏)は、このほど「スマートエルダーリビング・モデルプロジェクトvision2030」報告書を発行した。

 同プロジェクトは、同社がコーディネーターとなって活動する組織「タムラプランニング・アライアンス(Tアラ)」(57企業で構成)のメンバー29社が、2030年の高齢者住宅はどうあるべきかを多方面から議論・研究している取り組み。
 16年7月からの1年間の議論を報告書としてとりまとめた。

 30年には団塊世代が高齢者住宅入居者の大半を占めることを想定し、高齢者住宅事業が抱える3つの課題「マンパワー不足」「重度ケア」「社会参加」をもとに、「食事」「入浴・トイレ」「リハビリ」「認知症ケア」「ターミナルケア」「ハード環境」「エネルギー」の7テーマに分けて今後の高齢者住宅運営のあり方や取り組むべきテーマを明確化している。

 「食事」においては、給食というスタイルではなく、居室・共用部・レストランという3つの場面での「入居者が選ぶ自由なスタイル」が求められるとしているほか、「浴室・トイレ」においては「可変性(移動可能)」とすることでマンパワー不足リスクを軽減するとともに、共用浴室を地域に開放することで地域コミュニティの拠点としても活用できるとしている。

 「認知症ケア」では、睡眠、音楽、食事などによる認知症予防のほか、外出、旅行、仕事など、「認知症があっても楽しく暮らし続けられる住宅」を提案、「ターミナルケア」においては、高齢者が人生の終幕を思い通りに迎えられるための仕組みづくりのポイントを居室、社会インフラ、医療、サービス、職員・スタッフ、本人・家族などの各視点から考察した。

 さらに、これらの検討結果を踏まえ、30年に向け目指す高齢者住宅のイメージとして、多様な価値観やライフスタイルを持った高齢者が求める住宅モデル「入居者がこれまでの暮らしを継続できる35.85平方メートルの居室」を提案した(図参照)。

 建物は木造耐火建築物3階建てで、延床面積5,000平方メートル程度(レンタブル比39%)、定員54人程度(1ユニット9人×6ユニット)とし、コンビニやスーパー、外食店、銀行、コミュニティ施設のほか介護関連施設、クリニック等が近隣にあり、共用施設には一般的な設備に加え露天風呂やサウナも設置、地域に開放されたレストランや屋外庭園、温室テラス、植物栽培ユニットなども備えている。30年に想定される建築コストをもとに、入居率を80%とした場合の入居一時金は2,000万円、月額費用25万円程度。

 田村社長は「2年前、デンマークのオールボー市を視察した際、要介護者の増加、生産年齢人口の減少により同市の社会保障費が急増、このままでいけば30年には市民の負担が所得額の100%になってしまうと聞き驚愕した。日本の人口構成を見るとさらに深刻な状況であると感じ、このプロジェクトを立ち上げた」、「(居室モデルについて)30年にこういう高齢者住宅があったらいいなと思う。ポイントは、入居者目線」と話している。

報告書の内容について説明する7分科会の代表者ら(7月13日、東京都千代田区で)

この記事の用語

共用部分

分譲マンションのような区分所有建物について、区分所有者が全員で共有している建物の部分を「共用部分」という。その反対に各区分所有者がそれぞれ単独で所有している部分は「専有部分」と呼ばれる。

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