シービーアールイー(株)(CBRE)は11日、特別レポート「2018 Japan Market Outlook(不動産マーケットアウトルック2018)」を発表した。オフィス、物流施設、リテール、不動産投資の4つのマーケットについて、17年を振り返りつつ、18年以降の見通しをまとめている。
オフィスは、東京と地方で傾向に相違がみられた。東京は、今後も拡張移転やグレードアップ移転のニーズは旺盛で、マーケット自体は堅調の見込み。しかし、18~19年は、過去10年平均を3割近く上回る、約23万坪の大規模な新規供給が計画されているため、19年末時点での空室率は5%弱に上昇(17年度末:約2%)、グレードAオフィスの賃料は8%程度下落。20年には18年度をさらに上回る新規供給が予定されており、借り手市場が加速すると予測した。
地方は、新規供給が限定的であるなどの理由から、賃料の上昇傾向が継続する見込み。
物流施設は、eコマース市場の拡大や省人化投資に伴う大型施設に対するニーズが高まる。中でも大型マルチテナント型物流施設への需要は拡大。一方で新規供給については、今後2年間は高水準で続き、物件の選択肢が広がる一方で、立地によっては需給バランスが崩れる可能性も示唆した。
エリア別にみると、首都圏では、18年に47万坪、19年に55万坪の新規供給が計画されており、19年末のストック量は17年に比べて約40%増加する見込み。空室率は10%を超える可能性があるとした。
近畿圏は、17年に29万坪の大規模な新規供給があったが、18年は20坪、19年は18坪と今後もボリューム感のある新規供給が続く見通しで、空室率は20年にかけて、20%程度の水準で高止まりすると推測した。
リテールは、物価上昇に賃金の増加が追いついておらず、一般消費者の節約志向が継続しているものの、株高による資産効果や為替の安定などで国内富裕層やインバウンドの需要は高まった。しかし、ラグジュアリーブランドの出店ニーズは回復に至っておらず、今後もマーケットへの景気反映は時間を要するとした。
不動産投資は、17年第3四半期末までで投資額2兆6,000億円と前年同期比16%上昇。一方で、売買件数は10年以来の少なさで、同11%下回った。今後は、アセットやエリアによっては賃料の上昇余地が限定的とみられるため、投資家はより慎重になるも、賃料上昇が継続する地方都市のオフィスなどについては投資家の関心が高まっていると推測した。
同日開催した会見で、同社リサーチエグゼクティブディレクターの大久保 寛氏は「当社が16年度末に予測していた通り、18年は大規模な新規供給により、多くのマーケットにおいて貸し手市場から借り手市場へ移行する傾向がさらに強まる。一方で、右肩上がりにならないマーケットもあり、全体としてまだら模様となる」と解説した。