不動産ニュース / 政策・制度

2018/1/31

制度創設から6年、サ高住の課題を抽出

 国土交通省は31日、「サービス付き高齢者向け住宅に関する懇談会」の初会合を開いた。

 2011年の制度発足から6年が経ち、登録戸数も約23万戸まで増加したサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)についての課題を抽出し、今後の施策に反映させる狙い。また、サ高住だけでなく、地域包括ケアや住宅セーフティネットとの連携、空き家対策との連携など、現在の国土交通行政のテーマともリンクさせ議論していく。座長には、(一財)高齢者住宅財団特別顧問の高橋紘士氏が就任。高齢者住宅事業者、関連事業者や学識経験者など12人の委員と、厚生労働省、東京都などのオブザーバーが参加する。また、昨年12月中に、懇談会の下部組織として設置された「見守りWG」と「表示・入居相談WG」が、それぞれの課題や方向性について検討している。

 初回会合では、16年5月にとりまとめが発表された「サービス付き高齢者向け住宅の整備等のあり方に関する検討会」で打ち出された施策の方向性と各種データをたたき台に、それら取り組みの現状とデータの推移、2つのWGによる検討内容を概観しながら、各委員が課題点を掘り下げた。

 具体的には、大都市圏では月額平均12万円近くなるサ高住の入居費用の高さ、要介護度や認知症の重症化に対応した適切な介護サービスの提供、これとは逆に必要以上の在宅サービスの提供、エンドユーザーに使い勝手が悪いサ高住運営情報システムなどが指摘された。

 健常者が身体が動くうちに入居することを想定したサ高住が、入居者の8割が80歳以上である点から、しっかりとした介護サービスが提供できるようにすべきとする意見がある一方で、サービスが加重になればなるほど、住コストが跳ね上がり本来のサ高住の意味がなくなるという指摘も多かった。また、サ高住に義務付けられている生活相談サービススタッフの配置が本当に必要かどうか、IoT機器等を活用することによる見守りや状況把握サービスをうまく活用できないかという指摘や、サ高住の入居対象を高齢者に限定せず、母子父子家庭や障害者も含めたセーフティネットの受け皿にしてはどうかという意見もあった。

 こうしたサービスのあり方を検証していくため、利用者の資産状況や従前の居住形態、それらと事業者・各施設との相関関係といったサ高住に係るより精緻なデータを収集していく必要性を指摘する委員や、サ高住だけでなく多種多様な高齢者住宅や施設が、消費者に分かりづらく混乱を与え、ニーズに合った施設を選択しづらいとの指摘もあった。

 座長を務めた高橋氏は、「大都市圏の高齢化や地方のコンパクトシティ化、住宅セーフティネットの構築などの課題について、サ高住で相当対応することができる。事業者や実務者がざっくばらんに議論し、その考えを国民に分かりやすく伝えていくことで、国民の期待に応える良いサ高住としていきたい」と抱負を語った。

 懇談会は常設され、WG含め次年度以降も開催していく方針。

この記事の用語

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)

規模や設備面で高齢者が生活しやすいバリアフリーな住宅(ハード)に、介護・医療などのサービス(ソフト)が付いた住まいをいう。 ハード・ソフトの基準は以下の通り。

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