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2021/3/12

不動産学会、郊外住宅地再生テーマにシンポ

開催会場での研究発表の様子

 (公社)日本不動産学会は11日、シンポジウム「老朽化する郊外住宅地とエリア再生」を、日比谷国際ビル(東京都千代田区)での現地開催とオンライン配信のハイブリット形式で行なった。

 第1部は、国土交通省国土技術政策総合研究所住宅研究部長の長谷川 洋氏、日本大学経済学部教授の中川雅之氏、大東建託(株)賃貸未来研究所所長・麗澤大学国際研究所客員准教授の宗 健氏、筑波大学システム情報系准教授の藤井さやか氏、東京都市大学環境学部教授の室田昌子氏がそれぞれ研究発表を行なった。

 長谷川氏は、「成熟社会に対応した郊外住宅市街地の再生の課題」と題して報告。全国で計画的に開発された郊外住宅団地の現状分析を行ない、住民の年齢構成の偏りや空き店舗の増加などといった課題を提示した。その上で、再生を目指すには「ミクストコミュニティの形成」や「高齢者のQOL向上」といった“シナリオ”を描いた上で、対策を講じることが重要だとした。

 藤井氏は「郊外戸建て住宅地の地区計画・建築協定の等の見直しと課題」として、郊外住宅団地の景観の美しさを形成する要因であった建築協定や地区計画の改定の難しさが再生を阻んでいる側面があると指摘した。

 中川氏は「郊外住宅地のインフラ・公共施設に関する建て替えの課題」、宗氏は「郊外地域の集合住宅団地に関連する再整備・建て替えの課題」、室田氏は「郊外住宅地の空き家化・老朽化とコミュニティ・マネジメント」をテーマにそれぞれ研究報告した。

 第2部では、室田氏をコーディネーターとして各登壇者がパネルディスカッションを実施。人口減少の中で「すべての住宅地が再生できるとは限らない」という視点から「再生する住宅地の判断基準」について意見交換した。中川氏は「国や自治体など何らかの主体が再生する・将来に残す住宅地を決めることなどはできない。基本的に、流出人口の多さなど、マーケットが判断していくことになるだろう」と話した。また、長谷川氏は「基本的に『再生すべきではない住宅地』はあり得ない。しかし、行政が団地再生を支援する際に、規模・防災・インフラ整備などを考慮して何らかの線引きは必要になってくるだろう」と話した。

 また、「選ばれる住宅地になるには」というテーマでは、宗氏が「濃密すぎないコミュニティが必要」、藤井氏は「新住民や新たな価値を受け入れられる柔軟なコミュニティ」など、コミュニティの硬直化は望ましくないという意見が挙がった。

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