不動産ニュース / リフォーム

2021/10/7

築50年の賃貸住宅をリファイニング/三井不

1スパン内側に施工した耐震壁は、より耐震効果が上がるよう壁に合わせて柱部分も補強

 三井不動産(株)は7日、(株)青木茂建築工房との業務提携による「リファイニング建築」の第6弾「1971年築賃貸住宅リファイニング建築計画」(東京新宿区)の解体現場を、報道陣に公開した。

 リファイニング建築は、旧耐震建物を解体することなく、現行の耐震基準を満たし、かつ建物の長寿命化も図る手法。建て替えと比較し、約60~70%のコストで設備、内外観を一新する。新たな躯体建築が必要ないため工期も短縮できる。三井不動産は、竣工後のサブリース等、事業面も含めた老朽化不動産再生コンサルティングを担当する。

 対象の物件(「シャトレ信濃町」)は、JR「信濃町」駅徒歩7分に立地。1971年築、旧耐震基準の鉄骨鉄筋コンクリート造一部鉄筋コンクリート造地上9階建ての賃貸住宅で、敷地面積約968平方メートル。再生後の物件は、延床面積約2,605平方メートル。住戸は、従前3LDK・20戸を1LDK中心の35戸とする予定で、飲食店舗も計画する。賃料については新築相場の9割超となる見込み。4月に着工しており、工期11ヵ月、竣工は2022年3月の予定。

 既存建物をスケルトン化し、補強壁を施工することで、耐震性能について現行基準を満たす。骨組みになった状態でコンクリート躯体の劣化要因をくまなくチェックし、ひび割れや施工不良などを精査した上ですべて補修を行ない躯体の耐久性を新築同等とする。さらに既存建物でネックとなる床の遮音性能について、今回、新たな素材を導入して遮音性能向上を図る。

 耐震補強については、構造耐力上影響のない壁を解体し、建物全体の重量を軽量化。耐震診断で東西方向の体力が不足していることが判明したことから、美観を損ねないよう建物外周部は最低限の補強で、1スパン内側に耐震壁を施工。より耐震性が上がるよう壁に合わせて柱部分も補強する。さらに、鉄骨鉄筋コンクリート造で耐震補強部材を接続する際に使用される「あと施工アンカー」では鉄骨と干渉し埋め込みの深さが足りないことから、短い埋め込み深さで同アンカーの6本分の効果を発揮するアンカー「ディスクシアキー」も採用した。耐震壁を設置することで負担のかかる梁部分は炭素繊維で補強。これらにより耐震性能基準IS値0.31から0.62に向上させる。

 遮音性能については、スラブ厚120mmという条件で建物重量を増やさず遮音性能を向上させることを検討。従来の二重床に加え、天井側に特殊樹脂を用いた軽量の遮音材を1棟全体で採用することで、重量床衝撃音(LH)を1ランク改善させている。

 なお、同計画では、青木茂建築工房の協力のもと、東京大学新領域創成科学研究科・清家 剛教授との共同研究によりCO2排出量削減効果を評価。既存躯体の約84%を再利用することにより、既存建物と同規模に建て替えた場合と比較して、全体でCO2排出量1,721t(約72%)削減できることが判明している。詳細はこちらのニュース参照。

アンカー「ディスクシアキー」を使用している状態
建物重量を増やさず遮音性能を向上させるため、天井側に特殊樹脂を用いた軽量の遮音材を採用

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