不動産ニュース / 政策・制度

2023/3/30

国交省、インスペクションの活用促進へ

 国土交通省は30日、社会資本整備審議会産業分科会不動産部会(部会長:中城康彦明海大学不動産学部長)を開催した。

 建物状況調査(インスペクション)の活用の促進等を目的とした宅地建物取引業法の改正から5年を迎えることから、既存住宅流通市場の活性化や売り主・買い主が安心して取引できる市場環境の整備を図るため、これまでの施行状況等を踏まえ、さらなる活用促進に向けた見直しの方向性等について議論した。

 同省が22年に実施した消費者・宅建事業者向けアンケートの結果では、建物状況調査の実施率は改正前から増加しており、あっせんを受けた人のうち「希望していなかったが、宅建事業者の説明や説得を聞いてあっせんを依頼し受けた」は36.2%だった。一律に「あっせん『無』」としている宅建事業者が74.1%を占めたのに対し、既存戸建ての売り主媒介の場合、宅建事業者の9.3%が8割超の取引で「あっせん『有』」を示しているなど、取組状況が二極化している実態が分かった。また、消費者が建物状況調査を実施しなかった主な理由は、「早期の契約締結がしたかった」「費用負担を避けたかった」となっており、また、半数以上の宅建事業者が、「費用について売主・買主の理解を得ることが難しい」と回答した。

 これらの結果を踏まえ、議論の論点として、(1)宅建事業者の環境整備・実効性強化、(2)建物状況調査の意義・効果、(3)類似する調査・検査、(4)共同住宅を挙げた。

 (1)では、あっせん「無」とする場合、媒介契約書にあっせん「無」の理由を記載すること、トラブル回避のため、建物状況調査の制約等について、媒介契約書に明記することを示した。また、あっせん「有」とする宅建事業者自身による、ホームページや店頭での情報発信を促進。自治体ごとに宅建事業団体と建築関係団体の連携を促進・支援する。

 (2)では、実施のメリットや実施しないことのリスク等、宅建事業者が消費者に説明する際に用いることができる分かりやすいリーフレットを整備。築年数等、物件の特性ごとに場合分けをして、意義・効果を整理するほか、売り主に対し、告知書の提出を求めるなど適切な情報提供を促進する。実施メリット強化の観点で、インセンティブの付与等支援策も検討。既存住宅状況調査や既存住宅売買瑕疵保険の普及を図るため、地方公共団体では、既存住宅状況調査等の費用への補助といった先行事例があることから、このような関連制度の普及を後押しするための対応を考えていく。

 (3)では、複数のインスペクションを1回で実施できる検査事業者にアクセスしやすくする方策として「既存住宅状況調査技術者検索サイト」の改修を示した。各種の調査・検査に係る内容・技術者について依頼者が理解しやすい解説、依頼者の目的に応じた効率的に検査を実施するためのフロー等を新たに追加すべきとしている。

 (4)では、共用部分について、大規模修繕に係る調査等の既往の調査に併せて建物状況調査を実施し、その結果の活用を促進。併せて、有効期間の見直しの検討を挙げた。「建築及び維持保全に関する書類」(建築基準法の定期報告等)については、重説における保存状況の説明に加え、必要に応じて、その概要等を消費者に情報提供することとする(住宅の売買または交換の場合のみ)。

 これらの内容について、委員からは、「消費者が子供のときから不動産業やインスペクションについての知識が深まるさまざまな取り組みが重要。学校の教育に組み込んでもいいのでは」「リーフレット等では、インスペクションのメリット・デメリットを明確化する。おおよその費用や効果等も提示してほしい」「媒介契約書にあっせん『無』の理由を記載する場合は、その内容が定型文とならないように工夫が必要」「インスペクションを実施した場合のインセンティブがあるといい」「検査事業者を知らない等の理由であっせん『無』となっているケースをなくすために、連携体制の構築は重要。地方自治体によってはマンパワー等の不足の実態があることから、国の支援が必要」等の意見が挙がった。

 今後は、部会長一任で、方向性を固める。同省は、業界団体等と連携しながら具体的な施策を検討していく。

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インスペクション

「住宅インスペクション」を参照。

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