国土交通省は22日、TKP田町カンファレンスセンター(東京都港区)にて「マンション管理適正化シンポジウム」をハイブリッド方式で開催。約700名が参加した。
基調講演として、各団体がマンション管理適正化に向けた取り組みを発表した。
(一社)神奈川県マンション管理士会会長の牧 博史氏は、「県内約78万戸の分譲マンションのうち、1979年以前築のマンションでは60歳以上の居住者が約8割に上る。建物の高齢化と居住者の高齢化『2つの老い』の課題が顕在化しつつある」と現状について説明。市町村や県マンション管理士会など関係団体と連携し、各市の「マンション管理適正化推進計画」早期策定を支援するなど、県内のマンション全体の管理水準の向上を図っていくとした。
(一社)マンション改修設計コンサルタント協会常任理事の泉谷勝久氏は、建物・居住者の高齢化が招く慢性的な修繕積立金不足の課題に対し、「適切な長期修繕経計画を作成し、柔軟に見直しを実施することが必要」と言及。「長期修繕計画は生きた内容であるべき。業界全体で情報共有し、新技術の素早い展開等により、全国の管理組合支援に取り組んでいく」と話した。
住宅金融支援機構マンション・まちづくり支援部長の山崎徳仁氏は、管理計画認定マンションに対する優遇措置を紹介。マンション管理組合向けに修繕積立金の積み立てをサポートする「マンションすまい・る債」や大規模修繕ローン「マンション共用部分リフォーム融資」、区分所有者向けの住宅ローン「『フラット35』維持保全型」について説明した。
福岡市住宅都市局住宅計画課長の上川正春氏は、マンション管理適正化推進計画に基づく取り組みを披露。マンション管理計画認定申請、長期修繕計画の作成等、マンションの建て替え・改修の検討を支援する補助制度について説明した。「さまざまな支援策を用意し、関係団体とも連携しながらマンション管理適正化を推進していく」(上川氏)。
国土交通省住宅局参事官(マンション・賃貸住宅担当)の下村哲也氏は、今後のマンション政策の方向性について説明。マンションの長寿命化の推進、「段階増額積立方式」における適切な修繕積立金の引き上げ幅の検討、管理不全マンションへの対応強化などを行なっていくとした。「マンションの建て替え等の円滑化については、区分所有法の見直しに応じた事業手続きの整備に加え、住戸面積基準の引き下げ・撤廃を検討するなど、建替事業における各種制約への対応も行なっていく」と話した。
引き続き、横浜市立大学教授の齊藤広子氏を司会に、管理計画認定マンションの管理組合役員による座談会を実施。認定取得に向けた取り組みや、認定取得後のメリットや変化について、「パーク・エステート上板橋」(東京都板橋区、総戸数298戸)管理組合理事長の山元正宜氏、「ステーションプラザ泉ヶ丘」(大阪府堺市、総戸数126戸)管理組合前理事長の土居正弘氏が発表した。
全国の管理組合へのメッセージとして、「健全な組合運営は、組合主体の長期修繕計画と修繕積立金の毎年の見直しにかかっていると感じる。これからは既存ストックをいかに長寿命化させ、資産価値向上を図るかが時代の要請ではないか」(山元氏)、「認定制度に関心があるのであれば、組合側がこの制度を理解し、積極的に管理会社や自治体、マンション管理士等にアプローチ・相談してはどうか」(土居氏)と締め括った。