国土交通省は27日、「マンション管理適正化・再生推進事業成果報告会」を開催した。
同省は、全国のマンションに共通する高経年化や区分所有者の高齢化等に伴う課題の解決を促進するため、地方公共団体や管理組合の活動を支援する法人等によるマンションの管理適正化等のための先進的な取り組みについて、マンション管理適正化・再生推進事業による支援を実施している。同事業においてこれまで実施された取り組みについて、昨日に引き続き成果報告会を行ない、今回は地方公共団体の事例を紹介した。
大阪府都市整備部住宅建築局居住企画課は、「マンション管理適正化専門家派遣事業」の取り組みを紹介。派遣マンション事例から、「資金不足により修繕が困難」「区分所有者の所在と連絡先の把握に多大な時間と労力が必要」などの課題を挙げ、「管理適正化に向け区分所有者の理解を得るため、前向きな区分所有者を中心とした組織づくりや、建物の劣化状況を示しながらの説明会を行なうなど、管理適正化への機運を醸成させながら支援していくことが必要」と話した。
福岡市住宅都市局住宅計画課は、専門家派遣による相談実績について発表。「一度で解決できず、引き続き解決に向けて継続的に支援すべき事案が多い」としながらも、具体的な管理方法を示すことで管理費・修繕積立金の区分経理の課題を改善した事例、資金不足の課題を計画的に解決するため、大規模改修工事計画作成のポイント等をアドバイスした事例などを紹介した。
東京都小平市都市開発部都市計画課は、今後のマンション施策の基礎資料を得るための実態調査を実施。同市内の分譲マンション217棟のうち185棟からアンケートを回収した。調査から、10年後、20年後には高経年マンションが急速に増加すること、居住者の高齢化も今後さらに進んでいくなどの課題が見つかったことを報告。「現状、深刻な管理不全の兆候のあるマンションは少ないが、高経年マンションは増加していく。管理計画認定制度により、管理水準の維持向上、管理組合の意識向上を図る」と、今後の施策方針について述べた。
神戸市建築住宅局政策課は、「管理状況の届出・情報開示制度」について説明。マンションの管理組合が管理状況について5年ごとに届出を実施することで、管理組合に適切な維持管理の自覚を促すことにつなげたい考え。また、情報開示を希望したマンションの管理状況を神戸市のホームページに掲載。これにより、マンション購入者等が管理状況を確認することが可能となり、市場評価による管理水準の維持向上が期待されるとしている。届出済みのマンション数は、8月末時点で約17%。「今後、課題検討および制度の見直しを通じて、さらなる届出数の向上を図っていく必要がある」とした。
(一社)京都マンション管理評価機構は、京都市における高経年マンションの管理実態について発表。適正な管理がなされている高経年マンションは、「数度の大規模修繕工事を経験したことで、工事の内容や発注方式に工夫が見られる」「輪番理事と常任理事の併用による役員構成」「予測できない修繕工事のための費用を確保している」といった特徴があるとした。今後の課題については、「高経年マンションの管理組合運営の技法は多様であったことから、その特徴を理解しやすくまとめ、他のマンションの参考となるような“管理対策事例集”の作成が求められる。とりわけ、管理組合の財務状況の詳細な分析は、他のマンションへの助言に有益となる」と話した。