国土交通省は6日、第1回「地域価値共創シンポジウム」を開催。8月9日に設立を公表した「地域価値共創プラットフォーム」(関連記事)のキックオフイベントとして位置付けており、会場・オンラインの併用方式で実施した。
冒頭、同省大臣官房審議官(不動産・建設経済局担当)の堤 洋介氏が挨拶。「不動産業は、地域におけるコミュニティ形成において重要な役割を担っており、2022年からスタートした『地域価値を共創する不動産業アワード』の受賞者の活動を広く社会に周知していっていただきたい。国土交通省としても不動産分野に関連する多様なプレーヤーが業種を超えて共創する取り組みを全国に発信・広げていきたいと考えています」などと述べた。
その後、不動産業アワード選定委員長で明海大学不動産学部教授の中城康彦氏が「不動産業者等が地域価値共創に取り組み意義及び期待する役割」と題して基調講演を実施。同氏は国内外の不動産を活用した地域価値共創事例を紹介しながら、今後の不動産市場への展望を述べた。
続いて、第1回アワード大賞を受賞した(株)エンジョイワークス取締役の松島孝夫氏と、第2回大賞のNPO法人福岡ビルストック研究会理事長の吉原勝己氏が「受賞活動と受賞後の変化について」と題して、それぞれ講演。松島氏は、同社が展開する地域活性ローカルファンドの取り組みについて紹介すると共に、事業の成功モデルが蓄積したことをきっかけとしたファンドの進化・拡大が継続していることを紹介。「全国に地域活性ローカルファンドが広がってきている」(松島氏)。
NPO福岡ビルストック研究会は、九州各地でDIYによって築古ビルを再生させ、新たなにぎわいと文化的価値を創出する活動を展開する各事業体で構成する団体。吉原氏は、「当NPOは25の事業体が参加し、不動産オーナーや不動産会社だけでなく、まちづくり会社や病院長など多様な人たちが各地で活動している。受賞によって、地域における認知度の向上や行政区を超えた連携活動の芽生え、大学等での講義依頼など、活動が広がっている」などと話した。
過去の不動産業アワード受賞者による座談会も実施。(株)リクルートSUUMO編集長の池本洋一氏をモデレーターに、(株)まちづクリエイティブ代表取締役・寺井元一氏と(一社)熊本県賃貸住宅経営者協会事務局長・大久保 秀洋氏、ビーローカル・パートナーズ・加藤寛之氏が「地域価値共創の実践者と共に考える:一歩踏み出すために何が必要か」をテーマに意見交換した。コミュニティ形成や福祉といった収益に結び付きにくい活動を行なうケースが多い中で、継続するための考え方等について聞いたところ、寺井氏は「全体最適を考えることが大切。『不動産で稼ぐ』のではなく、『不動産をベース』に活躍する人たちをまちに集めることで地域価値を高められる」と述べた。また、加藤氏は「このまちにどのような人が必要なのかを見極めることが地域価値向上には重要」と語った。福祉分野と連携した居住支援などを展開する大久保氏は「連携することで『何かいいことがある』と考えることが重要。例えば、住宅確保要配慮者の入居が空室解消につながる。オーナーの不安は孤独死や賃料の滞納であり、福祉の団体と連携することで、そうした心配が解消される」と話した。
最後に、同省不動産・建設経済局参事官(不動産管理業)の中野晶子氏が「地域価値共創プラットフォーム」の概要について説明。月1回のメールマガジン配信や、地域価値共創に取り組む関係者同士のリアル交流会の実施など具体的な活動を紹介。さらに、「業種を超えた地域共創の取り組みの積み重ねが、これからの日本において元気で住みやすい地域をつくり、空き家問題など地域の課題解決につながっていくと感じています」などと締めくくった。