(一社)大阪府不動産コンサルティング協会は26日、大阪産業創造館(大阪市中央区)で「不動産コンサルティングフォーラム2024」(不動産コンサルティング近畿ブロック協議会との共催)を開き、会員や関連業界団体関係者などの130名超がオンライン含め参加した。またフォーラム終了後には、創立30周年記念式典・懇親会も開催した。
開催に当たり挨拶した同協会会長の井勢敦史氏は、「毎年開催している不動産コンサルティングフォーラムも18回目となったが、今年はまったく空気感が違う。不動産コンサルティングを取り巻く環境が大きく変わっているからだ。後世に振り返った時『2024年は、不動産コンサルティングが大きく動き出すターニングポイントだった。不動産コンサルティング元年だった』と言われるはずだ」と語った。
続いて来賓として挨拶した国土交通省不動産・建設経済局不動産業課長の川合紀子氏は、「今年6月発表した『不動産業による空き家対策推進プログラム』の目的は、不動産業の力を使って空き家をいかにして減らしていくかにあるが、それとともに空き家を流通させるために課題を整理したり、戦略を作ったりするノウハウを生かし、社会課題を解決して、不動産業の将来を支える産業として実装・自立させていくことも目指している。今後は不動産流通推進センターやコンサルティングマスターの皆さんの力も借り、不動産業が持つ相談スキル・ノウハウを社会に認知してもらい、不動産業に携わる人たちにも媒介にとどまらないビジネスに参画していく機会が増えていけばと考えている」と言及。
また、「大阪府不動産コンサルティング協会さんは、私たちが考えていることを30年前から考え続けている。今後、全国不動産コンサルティングフォーラムや各地域でコンサルティング業務の推進に協力していただく地域ワーキングを立ち上げる。大阪府不動産コンサルティング協会さんは地域ワーキングに登録される条件は必ず満たしているはずで、他の地域ワーキングの皆さんの模範・先駆者となっていただきたい」と激励した。
フォーラムでは、(公財)不動産流通推進センター副理事長の田尻直人氏が、不動産コンサルティングマスター制度の30年間の歩みをテーマに講演。同制度について「次の10年に向け舵を切るタイミングが来た」と述べるとともに、「一般消費者の認知度の低さ」「コンサルフィーを安定して取ることが難しい」「コンサル登録者の年齢層が高い」「各地で活動するマスターへの支援、マスターがつながる場が減っている」といった課題を挙げ、「不動産コンサルティング関係者をネットワーク化し、経験・知見の共有を図る仕掛けが必要」と訴えた。
続いて、きりう不動産信託(株)代表取締役の桐生幸之介氏が、自身が手掛け、同協会を通じて普及に努めてきた「不動産信託」について解説。認知症高齢者の財産処分を不動産信託を使って行なった事例や不動産信託を使い古民家を利活用した事例などを紹介し「これらのニーズにタッチするにはただの不動産業では難しい。不動産コンサルティングであったからこそニーズをつかめた」と語った。
同協会前会長(現理事・空き家対策特別委員長)で(一社)全国不動産コンサルティング協会会長の米田 淳氏は、空き家問題とコンサルティングをテーマに講演。同協会が相談業務等を通じて関わった空き家関連のコンサルティング業務の実例を解説。空き家対策とコンサルティングは相性が良く、継続性が高いことに加え、「一般的な不動産コンサルと違い、資産家や富裕層以外を対象にビジネスが展開できること」をメリットとして挙げた。また、同協会の空き家問題対策支援事業で売買にこぎつけた物件が、23年度は40件・売買価格約2億5,000万円に達し、その媒介報酬が売買価格の約6%となる1,600万円、コンサル報酬が670万円あり、合計約2,415万円(売買価格の約1割)となったと公表。一般的に収益にならないイメージがある空き家の媒介を含むコンサルティングでも、しっかりビジネスになることをアピールした。