記者の目 / ハウジング

2008/2/22

時代を超えて住み継がれる家とは何か

積水ハウス、「オーナー住宅買取再生事業」を見て考えた

 建てて、壊し、また新たに建てる…。こうした従来の消費型社会からストック循環型社会へ移行しつつある現在、各社が既存住宅の再生事業に熱い視線を送っている。そのようななか、積水ハウス(株)は、同社が建築・販売した既存住宅を買い取り、再販するという「オーナー住宅買取再生事業」を開始した。その首都圏第1号物件、買取再生住宅「EVER LOOP(エバーループ)」(神奈川県秦野市)を紹介する。

首都圏第1号物件の再生住宅「EVER LOOP」。外壁はセラミックパネルに交換している
首都圏第1号物件の再生住宅「EVER LOOP」。外壁はセラミックパネルに交換している
窓ガラスはすべて遮熱断熱ペアガラスに。雨戸は指一本で開閉できる電動シャッターに取り替えた
窓ガラスはすべて遮熱断熱ペアガラスに。雨戸は指一本で開閉できる電動シャッターに取り替えた
システムバスは浴室乾燥機付きの最新のものを導入した
システムバスは浴室乾燥機付きの最新のものを導入した
キッチンは対面式でリビングダイニングとつなげ、家族とのコミュニケーションを重視する造りとした
キッチンは対面式でリビングダイニングとつなげ、家族とのコミュニケーションを重視する造りとした

新しく生まれ変わる家

 積水ハウスの「オーナー住宅買取再生事業」は、オーナーが売却を希望した物件を独自の査定額で買い取り、大規模なリフォームを施した後、再生住宅「EVER LOOP」として新しい住まいを必要とする人に提供するというもの。
 対象となる物件は、同社がこれまでに建築・販売した戸建住宅、および賃貸住宅のシャーメゾン。
 買い取りにあたっては仲介手数料がかからず、また、住宅の構造や基礎部分はそのまま再利用するため、リフォーム前の住宅の一部は姿を残す。たとえ姿形は変わろうとも、ほんの一部でも面影を残したまま住み継がれていくことを喜ぶオーナーは多いという。

 一方、買い手にとってのメリットはというと…。
 この事業は、古くなった部分を新しくし、ただ化粧直しをするというものではない。内装・外装・設備・断熱性能・耐震・防犯機能など、既存住宅ゆえに新築と比べて劣る、もしくは陳腐化している設備・機能等を、新築同様、もしくは新築に近いレベルにまで引き上げたうえで提供される。
 購入した後のアフターサービスも充実している。販売する住宅には「ユートラスシステム保証」を付与。これは、同社新築時の構造躯体および防水の保証期間終了後に有償点検を行なって、10年間再保証されるのだ。

 また、気になる販売価格も、ほぼ新築同然にもかかわらず、新築住宅の70~90%程度で購入できる。壊して一から新たに建てるよりもコストが削減できるため、この価格が実現するのだ。「中古は買いたくないけど、新築となると手が出ない」という顧客にとっては、一考の価値があるシステムではないだろうか。

より長く大事に、より豊かな生活を

 第1号物件は、築20年の2階建住宅、敷地面積155.44平方メートル、延床面積108.83平方メートル。小田急線「秦野」駅から徒歩20分、車で5分の閑静な住宅街の一角にある。決して立地が良いとは言えないが、緑が多く車の往来も少ないため、ターゲットである30代の若い夫婦が子育てをする環境としては適しているだろう。
 ちなみに、販売価格は4,580万円(税込み)、新築の場合は5,500万円が相場だという。

 1階のリビングは、床暖房入りのキッチンと対面式のリビングダイニングがつながる広々とした間取り。リフォーム前は、1階にプライベートルーム、2階にリビングという間取りがあったが、家事動線が長く、使い勝手が悪かったということで、その不便さを解消すべく、1階の中央にあった階段を角に移動し、広々としたスペースを確保した。
 ただし、中央の壁はそのままに。既存の構造を生かして、アクセント壁にしている。

 また、1階の窓枠は既存のものを生かしつつ、窓ガラスはすべて遮熱断熱ペアガラスに変更。横引き雨戸は、指一本で快適に開閉できる電動シャッターに取り替え、防犯性・断熱性を向上させた。
システムバスは浴室乾燥機を、トイレはウォシュレット一体型といった最新の設備を採り入れ、家族が快適に暮らせるよう配慮したという。

 設備は最新技術が導入されているものの、特段、奇をてらった感はない。しかし、より長く大事に、より豊かな生活ができるような工夫が随所に施されており、温かみのある住まいだと感じた。毎日住む家だからこそ、普通が一番なのかもしれない。

本来あるべき住まいの姿とは?

 同社が現在購入済みの物件は94棟、そのうち売却済みの物件は全国で3棟(1月31日時点)。2月からは11物件の販売を開始し、事業を本格化させた。なお、来期は600棟の買い取り、238棟の売却をめざしているという。

 「子供たちが巣立って、2人で住むには広すぎる」「買い物に便利な都心で暮らしたい」…など、住み替えを考えている人たちの気持ちはそれぞれに異なるだろう。しかし、家とともにたくさんの想い出を築いてきたという点は共通しているのではないだろうか。
 同社によると、ある顧客は売却を決断したとき、「まるでわが家を嫁に出すような気分」と表現したという。愛着のある住まいだからこそ、次の家族へ大切に受け継がれたいという気持ちが強くなるのだ。
 
 時代を超えて住み継がれていく家とは、何世代にもわたっていくつもの家族を育み、歴史を積み重ねていくことのできる家ではないだろうか。住まいとは、本来そうあるべきなのだと実感した。(I)

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「海外トピックス」を更新しました。

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