海外トピックス

2017/9/6

vol.329 大人のアートキャンプ:ペンランド工芸学校(その1)

“Pop-Up Artists’ Books” の教室からブルーマウンテン山脈の夕暮れを眺める(ノースカロライナ州ペンランド。以下同)

 ペンランド工芸学校は陶芸、ガラス、金工、染色、織物、水彩画、鋳物、彫刻、写真、紙作り、ブックアート、木工、版画など、アートと工芸の教育を主眼とした全米で名高いアートコミュニティだ。毎年5月から9月初めまで、特に大人を対象に「アートキャンプ」を開催する。
 1週間または2週間の期間に区切り、全部で7セッション(7期)を開催。1セッションは各工芸分野に分かれ、10か11のクラスがある。

 今年(1917年)の講習は7セッションを全部合わせると107クラスもあった。全米は無論のこと、世界中から各分野で活躍しているアーティスト及び工芸家が講師として各セッションに招へいされ、生徒も各地から参加。工芸/アートを学ぶことを目的として教師陣と生徒たちは短期間ではあるが、制作活動に濃密に集中して過ごすのである。生徒はじっくりと吟味して興味のあるクラスを選択し申し込む。

山脈の麓の過疎地域に忽然と…

キャンパス内に点在する宿舎。それぞれ離れているので、毎日あちこち行き来するのは結構な運動量である

 同校はテネシー州からノースカロライナ州を縦断しているブルーリッジ山脈のふもとの過疎地域にある。電車もバスもなく、近隣の空港からは車で1時間半のドライブ。道中、数軒の店舗と住宅がぽつりぽつりとあるだけで、森や丘や山林の緑また緑だけが延々と続いてゆく。

 「Penland School of Crafts」という道標が見えてきてほっとする。ここからは私道なのかもしれないが、曲がりくねった田舎道をかなりの時間さらに辿ると、ようやく森の中に建物が見え隠れしてくる(遥か昔の映画でご存知ないとは思うが、「レベッカ」でマンダレィの屋敷が突然霧の中に現れるように…)。
 それがペンランド工芸学校である。

リラックスタイムと制作活動のメリハリがキッチリ!

ダイニングホール。ここで200人近い人々が朝昼晩の食事をとる
スクリーンプリントを応用する陶芸技法のスタジオ

 宿舎や食事はキャンパス内に用意されているので外へ出る必要がなく(周囲には本当に店も何もない)、高原の「アートキャンプ合宿」と考えるとわかり易い。
 朝昼晩の食事はダイニングホールでおしゃべりしながらリラックスする時間。一人で参加する人が大勢おり、新しい友達を作る機会でもある。食後はバレーボールをしたり、木の下で寝っ転がったり、散歩したり…。
 そのあとすぐにスタジオに戻って制作にとりかかる。メリハリがきっちりしている。

活動は24時間OK。91歳の参加者も!

8月21日午後に皆既日食をメガネをかけて観察する。絵画クラスでは地面に写った沢山の影をスケッチして作品に応用したそうだ

 生徒はひとクラス12人程度で、資格は18歳以上であれば誰でも(外国人でも)参加できる。91才でお元気な参加者もいらした。
 全くの初心者から上級者まで誰でも講習を受けられるが、課目によっては、例えば陶芸クラスで「最低限ろくろを扱えること」とか、キルト作りのクラスで「ミシンで直線縫いができること」など、最低条件が附してあるクラスもある。

 バケーション気分で参加する人もいないわけではないが、遊び半分だとついていくのは次第に厳しくなってくる。毎日素材と向き合い、教師とも長時間接し、大多数は自分の選んだ科目に真剣に取り組む。
 スタジオは24時間開放されているので、夜中の2時3時まで制作する生徒達が大半である。教師もつきあって遅くまでスタジオにとどまる。昼間と違った意味で気分を緩めて、教師と生徒共々が和気あいあいと親しむ楽しい時間でもある。

初心者でも楽しめる工夫がさまざま

普通の傘に紐を切って一面に覆い、椰子で葺いたように制作した若いアーティスト達。南の島の気分を演出

 全くの初心者でも工芸に興味がありさえすれば絶対に楽しめるように講師は心がける。さまざまな年齢やレベルの生徒がいるのがこれらアートキャンプの特徴でもあろうか。ある程度陶芸の経験があるが、穴窯は知らないので体験して見たいとか、金工の基本は習熟しているが、さらに象嵌の技法を学んでみたい、銀細工は得意だがエナメルの扱い方を習いたい等、さらに自分の技術を広げたり磨きをかけたり、他の技法を学んでみたい生徒も少なくない。

 これまで写真を専攻していたが、全く異なる織物に興味がわいた…など、異なる分野を学んでみたい生徒も。
 アートキャンプ参加の理由はさまざまであろうが、それらを試してみる機会、をペンランド工芸学校は与えてくれる。

Akemi Cohn
jackemi@rcn.com
www.akemistudio.com
www.akeminakanocohn.blogspot.com

明美コーン

コーン 明美
横浜生まれ。多摩美術大学デザイン学科卒業。1985年米国へ留学。ルイス・アンド・クラーク・カレッジで美術史・比較文化社会学を学ぶ。 89年クランブルック・アカデミー・オブ・アート(ミシガン州)にてファイバーアート修士課程修了。 Evanston Art Center専任講師およびアーティストとして活躍中。日米で展覧会や受注制作を行なっている。 アメリカの大衆文化と移民問題に特に関心が深い。音楽家の夫と共にシカゴなどでアパート経営もしている。 シカゴ市在住。

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2017/11/20

「海外トピックス」更新しました

Vol.334 廃線後の鉄道を市民の憩いの場に ~画期的な都心の遊休地活用策 の記事を更新しました。

シカゴ市のど真ん中に東西4.3キロに及ぶ遊歩道があります。元は高架の鉄道でしたが、廃線後草ぼうぼうとなっていた場所。

10年かけておしゃれな公園に様変わりしました。名づけて「606公園」。

さて、「606」とは?