海外トピックス

2018/3/6

vol.341 気候温暖化がファッションに与える影響

若い世代にとって自分の手で何かを作るのは新鮮に感じるようだ(イリノイ州レイクフォレスト高校)

 若い世代に新しい考え方が芽吹いてきている。環境問題がらみで消費文化を再考しようという動きである。
 「気候温暖化が木綿に与える影響について」というリサーチの成果をクラスで生徒が発表した。気候温暖化の影響で世界各地に砂漠化が進み、これまでの木綿の栽培に変化が起きて収穫量が激減する地域が出てきたという。インドやパキスタン、中国だ。
 アメリカでも気候の激変でカリフォルニア州及びテキサス州の木綿の収穫量が減り、木綿布の価格が高騰し、ファッションに影響が出てきている、というレポートである。

着なくなったTシャツ、どうする?

 誰もがTシャツを持っているし、少なくとも10枚は箪笥にしまいこんであるだろう。デザインに飽きたりサイズが合わなくなったり穴があいたらどうするかと思案すれば、再利用される割合はごくわずか。85%の人々がゴミとして捨ててしまうと聞いた。
 現代は着捨ての時代とは言え、捨てられるTシャツ、つまり木綿布の総量は莫大だ。残り15%の人々はリサイクルショップに回すか、人にあげる、交換する、ガレージセールで売る等。掃除用の布として再利用する人なんて。今時いないかもしれない。

陶芸用の土をくるんでいたキャンバス地を再利用して縫い上げる(ノースカロライナ州ペンランド工芸学校)
針と糸をもつのは生まれて初めて、という若者が結構多い(イリノイ州シカゴ市)

1枚のTシャツを作るのに、2700リットルの水が必要!

 UNESCO-IHE (Institute for Water Education) の2005年の調査によると、たった1枚のTシャツを育て染めて縫製し、出来上がるまでに2700リットルの水が必要だそうで、水に加えてガスや電気も含むと大変なエネルギー消費量となる。

 最近、化学染料の使用を最小限に抑えつつ衣料を製造する会社がでてきているが、化学染料は廉価のかわりに植物染料の倍近くの水や電気を使う。GAP、パタゴニア、IKEA(イケア)など何社かは製品作りのプロセスにおいて環境を損なわない姿勢を前面に打ち出しているが、こうした社会的責任をふまえた会社が若い世代にすんなりと受け入れられるようになってきたのか。あるいは若い世代を引き付けるキーワードなのかわからないが。

ジーンズを藍染とのり防染で個性的に(テネシー州アローモント工芸学校)

若者の間に、天然素材で環境保全の動き

 必要以上にモノを買い込む消費経済に追従せず、納得できる品を数少なく作って環境保全に貢献しようと試みる若い作り手が目につく。麻や木綿、竹など天然繊維の使用が顕著である。
 天然素材の着心地の良さは今更説明するまでもないが、現在出回っている衣料や日用品や寝具には化学繊維やポリエステル製が多く、それらは化学染料と同じに石油を原料として製造される。それに対し、これ以上石油を使いたくない、という若い作り手達のエコフレンドリー(ECO FRIENDLY) な考え方だ。

アジアに移住、環境にやさしい商品を販売する女性たち

 インドやバングラデシュ、タイ、ビルマの女性達と一緒に少数生産する「カインドクラフト」創始者のローレン・ランシィはニューヨークのファッションデザイナーだが、2013年に東南アジアのラオスに移住、現在はチェンマイで環境保全に留意した染め物や陶器などを選んでネットで紹介、販売している。 
 アメリカからチェンマイに移住し、エコフレンドリーの織物を製作するスタジオ・ナェナも同様に有機栽培された木綿と土地の植物染料を使用。地元の女性たちと服と暮らしの小物を製作して世界中に販売している。 

マイワ社のシャーロットはインドや東南アジアの女性達を指導して仕上がった製品を販売(写真提供:MAIWA カナダ バンクーバー市)
いまや失われつつある手織りだが、その美しさに注目する若い世代のグループが増えてきている(メキシコ ワハカ市)

1枚のドレスを365日着るプロジェクト

 シーナ・マシーケン は必要以上にモノを買い込む現代の消費文化を反省して環境保全に貢献する若い女性。1枚の黒いドレスをアクセサリーでさまざまな変化をつけて365日着るという「ユニフォームプロジェクト」を立ち上げた(1枚の着た切り雀ではなく、実際は同じ型のドレス3枚を洗濯しつつ着通したそうだが)。
 そして寄付を募り、インドの貧しい子供達の学費にした。また、ニューヨークのAYRブランド (1年中着る;all year round の略) のグリーンジーンズは高品質のリサイクル木綿で作られ、たった1カップの水で洗えるという究極のエコフレンドリー。
 しかしながら、(たかが)ジーンズに3万円という価格は、旧世代にはすんなりと受け入れ難いが。

つぎあても「クール!」なファッションに

 アート的にオシャレなリサイクルをしよう、という動きもますます若い世代に活発になってきた。傷んだ服の良い部分だけ切って他のドレスと合わせ縫って個性的なファッションへ。想像力でパズルのようにあれとこれを組み合わせて1枚の服ができあがる楽しさ!膝が破れたジーンズにおばあちゃんが昔つぎをあてたような刺し子ステッチがいまや「クール!」と言われる。
 着捨て、使い捨ての文化から環境保全にまで視野を広げて考えみる。そんな若い世代の波であろうか。本当に必要なものだけを買って大切に使う新しい文化を期待したい。

量は少ないが有機栽培された綿。これから糸を手で紡ぎ、整経して織る(メキシコ ワハカ市)

Akemi Cohn
www.akemistudio.com
www.akeminakanocohn.blogspot.com

明美コーン

コーン 明美
横浜生まれ。多摩美術大学デザイン学科卒業。1985年米国へ留学。ルイス・アンド・クラーク・カレッジで美術史・比較文化社会学を学ぶ。 89年クランブルック・アカデミー・オブ・アート(ミシガン州)にてファイバーアート修士課程修了。 Evanston Art Center専任講師およびアーティストとして活躍中。日米で展覧会や受注制作を行なっている。 アメリカの大衆文化と移民問題に特に関心が深い。音楽家の夫と共にシカゴなどでアパート経営もしている。 シカゴ市在住。

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