海外トピックス

2020/3/1

vol.366 世界中から視察団が押し寄せるグリーン・シティ。フライブルグの「ヴァーボン」環境モデル地域に密着【ドイツ】

 ドイツ南西部に位置するフライブルグ市の別名は、「ドイツの環境首都」。世界的によく知られたエコロジー研究所やEMI研究所もここ、フライブルグに存在します。シュバルツバルド(「黒い森」)に囲まれ、空気も非常に良く、ドイツ国内で一番温かい地方。そんなフライブルグにある環境モデル地区「ヴァーボン」にはどんな魅力があるのでしょうか。

どう有効活用する?戦後の地域開発

 ヴァーボン地区の開発は1991年にその歴史をさかのぼります。第二次大戦後、フランス国のバラック(駐屯地兵の宿舎)として使用されていたおよそ38ヘクタールの土壌は石油系炭酸水素によって汚染され、飲料水に大きな健康被害を及ぼす可能性がありました。そのため地元民は市の行政・市議会の協力と合意を得、自ら投資家を探し、健康的で環境にやさしい地域開発に取り掛かります。

 その背景には1990年代から続くフライブルグの住宅地価格の高沸と、それに伴う住宅難があげられます。また、フライブルグ近郊(ヴィ―ル市)にて行われた核原発計画と反対運動がこれに拍車をかけたこと、さらに大戦後から続く環境汚染によって自慢のシュバルツバルドが枯死する局面を迎えていたことがあげられます。

 2005年には正式に環境地区「ヴァーボン」として登録、以来、環境意識の高い人たちに人気を得、さらなる開発が進んでいます。土壌の総入れ替えもスムーズに行われており、2026年には100%安全な状態に戻ることを視野に入れています。

ヴォーバンのイメージは都会の真ん中にある、洗練された、緑が豊かな閑静なエコ住宅地。マテリアリズムから離れた生活を目指す

ヴァーボン地域の役割とイメージ

 ヴァ―ボンの一番の特徴は、実質的・具体的な土地開発を支柱としながら、エネルギー開発、都市開発、交通政策にまで及び、成果を上げていることです。

1) 車をできるだけ必要としない生活の確立

いわゆる地域の「公民館」のような役割を果たす「ハウス037」。幼稚園も設置する

 ヴァーボンはドイツ国内のどこよりもマイカー所有率が低い地区です(172台/1,000世帯)。それを可能にしているのは、およそ100m以内に生活に必要とするほぼすべてのものが揃っているということ(幼稚園、小学校、スーパーマーケット等)、地域に存在する400ものカーシェアリング利用者との密なネットワーク(地域で購入した25台の車が常備)、また1970年からバーヴォン地区・フライブルグ近郊にひかれた自転車道の設備(420km)と駐輪場の充実(市内各地に9,000以上)があげられます。

この地域で部屋を借りると自転車置き場ももれなくついてくる
自転車と歩行者だけが行き来できる小道がとても多い

 2)未来のエコ生活の在り方を示した住宅テクノロジー
 

ドイツ国内初のパッシブハウス(省エネ住宅)。住居や仕事場として、30世帯が共同生活をしている。余ったエネルギーは売り買いできるのが特徴的だ

 ヴァ―ボンには、世界・ドイツ国内初の「パッシブハウス(省エネ住宅)」があり、この住居の一部にはエコサンシステム(Ecological Sanitation=バキューム式環境衛生トイレ)が設置されています。

「太陽の船“ゾネンシフ”」、一番左手前にエコ・インスティテュートがある
ドイツ初「プラスエネルギー・ハウスを採用したオフィスが道路沿いに建つ

 地域内にはその他「ゾネンシフ(“太陽の船”)と呼ばれるドイツ国内初のプラスエネルギー・ハウスがあるだけでなく、このプラスエネルギーを商業用に採用したオフィスビルも存在。コジェネレーションシステムの施設が設置され、ウッドチップによって地域の暖房一切が賄われています。その他ヘリオトロープ(エネルギー供給機)があり、所業用施設や住宅地に必要なエネルギーの約3倍もの大きなエネルギーを生み出しています。

駐車場の上部空間を有効利用したカーポート型の太陽光発電設備地区立体駐車場

変わる住まい環境の価値観

 環境を皆で高く意識・共有すれば、地域全体も一緒に潤っていくことをヴァーボンは証明してくれます。年間およそ5,500万円もの賃貸収入があると言われ、「貸し手」の多くもまた、ここに「貸り手」として住んでいます。つまり投資家にとっては非常に魅力的な土地開発の仕方と言えるでしょう。

空地はきれいにされ、多くの場所で手作りの小屋が作られ、鶏が放し飼いとなっている。動物保護にも関心が高く、人々も寛容。ドイツ人ならではの空き地利用法だ

 そんなヴァ―ボンから私たちが学べること、それは今の生活のありかたそのものを根本から見つめなおし、本当に必要なものは何かを見極める目、いらないものを捨てる勇気を持つことだと考えます。私たちのこれからの課題とは、土地利用計画だけに終わらずに、行政と市民とを巻き込んだ交通政策、そしてエネルギー政策を一本化させることなのです。

キュンメル斉藤 めぐみ
ドイツ在住ライター、エディター。「海外書き人クラブ」所属。外資系企業勤務を経て、2015年より近郊のコミュニティーカレッジにてヨガや栄養学のクラス、料理教室を主宰。現在フリーランスライターとして文化・生活情報を提供、寄稿。掲載メディア媒体は、『マイロハス』、『JAPAN CLASS』(東邦出版)、『家の光』(JAグループ)等。

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