海外トピックス

2024/3/1

vol.414 飲食店の食べ残しがSC内の工場で肥料に!【マレーシア】

 マレーシアでは2015年以降、環境問題、貧困層の撲滅などを目標に経済省などの主導により国家開発計画においてSDG’s(持続可能な開発目標)の実行に取り組んでいる。新しくビルを建設したり、土地開発をする際には環境に配慮した建築計画が求められる。しかし既存の施設でありながら将来を見据えた活動を続けてきたショッピングセンターがある。

 首都クアラルンプールに郊外に位置するワンウタマショッピングセンター(1 Utama Shopping Centre※)は総テナント数713軒(2024年2月現在)を有すマレーシア最大級の商業施設だ。1995年の開業時より持続可能な世界のための取り組み、環境保全を視野に入れた施策が注目されている。

持続可能な社会に対する具体的な活動や施策

屋上では太陽光発電をしている(1Utama広報より提供)

 1ウタマは屋上で太陽光発電を行い、雨水のトイレ活用などを行なっている。太陽光発電パネルからは最大5694キロワットピークの電力を確保し、年間で3715トンもの二酸化炭素排出量の削減につながっている。トイレの水は50%以上が雨水やリサイクルされた水を使用している。

地階にあるリサイクルセンターでは衣類、電子機器などを回収(1Utama広報より提供)
リサイクルに訪れた人専用の駐車スペース

 地階にはリサイクルセンターを設置し衣類や電子機器の回収を行い廃棄物の減少を目指し、条件を満たせば専用アプリにポイントが付与され買い物などに使えるようにしている。リサイクル品を持ち込む人のために専用の駐車スペースも確保している。

東南アジア最大の屋上空中庭園には小さな実験農園も

屋上でひっそりと造園されていた「秘密の花園」

地上35メートルの屋上には「秘密の花園(Secret Garden)」と名付けられた3万平方フィート(2787平方メートル/約843坪)が作られた。東南アジア最大の広さを誇る空中庭園には樹皮やおがくずから作られたバイオカーボンの土壌に500種類の植物が育ち、池や小さな滝がある庭園となっている。

写真左=マレーシア在来種以外の植物の育成にも力を入れている写真右=一坪ほどの水田で試験的に行われている稲作

 緑を屋上に植栽することで建物に熱帯の直射日光があたるのを遮るだけではなく、昆虫や鳥などにとっても都会のオアシスとして貴重な場所となっている。植物学者や識者の意見をもとに養蜂箱を置き、フルーツの木を育て、稲作にも挑戦している。訪れた人の憩いの場を提供しているだけではなく自然の循環システムに近づけるように配慮されているのが特徴だ。

モール内の工場では飲食店から出る残飯から肥料を製造

 これらの取り組みに加え食品ロスにも目を向けた。1ウタマのテナントから出る余剰食品を集め、毎月約6000食を慈善団体や個人の家庭に寄付をする活動を行なっている。

写真左=見学室前にはパネル展示食品ロス問題について解説写真右=肥料製造工場は一般客でも見えるようにオープンとなっている

 だが、食品ロス問題で避けて通れないが施設内にある約160もの飲食関連テナントから毎日出る食品廃棄物(食べ残し)問題だ。廃棄するのにもコストがかかるため有効活用をする方法として、食品廃棄物(食べ残し)から肥料を製造することを発案した。このプロジェクトは W.I.S.E WITH FOOD (持続可能性と環境のための廃棄物イノベーション※) と名付けられている。
※W.I.S.E=Waste Innovation for Sustainability and the Environment

WISEは社会見学を通して児童が食品廃棄について学ぶ機会となっている。

 肥料製造の際に食べ物以外のゴミは可能な限り排除して持ち込まなければならない。そのため各飲食関連店舗ではオレンジ色の食べ物専用のゴミ収集箱を使用し工場に持ち込む前に計量する。自店での食べ残し量を知ることで飲食店側もコスト意識につながったという。

写真左=来客者はガラス越しに製造行程を見学できる写真右=食品廃棄物から製造された肥料。売上は寄付される
食品廃棄物から肥料を製造する循環を発案

 1ウタマでは1日で最大4000キログラムの食べ残しが発生するが2600キログラムを肥料として再生することに成功した。すでに製品化して2リンギット(約60円)で一般客に販売を始めている。そして、その売上は全て慈善事業団体などに寄付されている。

周囲には住宅街が広がり鉄道や高速道路が横を走る

 今マレーシアは首都圏を中心に都市開発が進んでいる。また同時に環境への意識も高まってきている。近い将来、先進国入りすることを目標としているためSDG’sへの関心も高くなりつつある。1ウタマのように脱炭素社会を目指す取り組みを企業責任とする傾向は国内の都市開発にも反映されつつある。

逗子マリナ
マレーシア在住フリーランスライター(海外書き人クラブ)。

海外在住歴はアメリカ3年半、オーストラリア4年。2016年からはマレーシア在住。日本のメディア・企業向けにリサーチ、現地情報収集、観光情報、国際展示会等の取材で幅広く活動中。「地球の歩き方の歩き方webクアラルンプール特派員」。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織海外書き人クラブ会員https://www.kaigaikakibito.com/

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2024/7/24

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