不動産ニュース / 政策・制度

2019/1/30

社整審不動産部会、賃貸・管理業の課題抽出

 国土交通省の社会資本整備審議会産業分科会不動産部会(部会長:中田裕康・早稲田大学大学院法務研究科教授)は30日、37回目となる会合を開いた。

 今回は、「新・不動産業ビジョン(仮称)」の策定に向けての課題抽出のため、(公財)日本賃貸住宅管理協会、(公社)全国賃貸住宅経営者協会連合会、(一社)マンション管理業協会に各業界(不動産賃貸業、不動産管理業)の現状と将来像等をヒアリングした後、新たな不動産業ビジョンにおける両業の今後の発展に向けての政策課題にどう対応していくかを議論した。

 日本賃貸住宅管理協会の末永照雄会長は、高度な職業倫理に基づいた専門的な賃貸管理業の確立や業務領域の拡大、賃貸物件の質の向上を図るためには、同省告示に基づき運用されている賃貸住宅業者登録制度の法制化と(公社)全国宅地建物取引業協会連合会・(公社)全日本不動産協会と3団体共同で運用している賃貸不動産経営管理士の国家資格化の必要性を訴えた。
 全国賃貸住宅経営者協会連合会の稲本昭二事務局長は、「賃貸オーナーは経営者である」という意識の変革の必要性を訴える一方で、登録件数が伸び悩んでいる住宅セーフティネット制度について、手続きの煩雑さや手数料などオーナー負担が過大な点を指摘し、制度見直しを提言した。
 マンション管理業協会の広畑義久専務理事は、分譲マンション管理において、居住者と建物という「2つの高齢化」と、管理現場の人材不足を課題として挙げ、2022年までの3ヵ年にわたる中期事業計画で、計画修繕の普及や従業者の処遇改善、IT活用や外国人労働者の活用等に取り組み、今後は、管理組合の財政健全化、管理会社の経営安定化、建物評価にマンション管理が反映される仕組みづくりにも注力したいとした。

 3氏からのヒアリングを受け、サブリーストラブルの回避など「安全安心取引の実現」、「既存ストックの有効活用」、建物の老朽化や居住者ニーズへの対応、管理におけるオーナーの責務など「適切な管理」、賃貸不動産を通じた「エリア価値向上」などの課題解決に向けた対応について委員の意見を求めた。委員からは「賃貸管理業の適正化については、すでに法律と専門資格による適正化が図られている分譲マンション管理を参考にすべき」「賃貸住宅の住まい手の多様化や空き家対策、セーフィティネットの充実などに向け、賃貸不動産経営管理士の国家資格化など人材育成が重要」「不動産オーナーについても登録制度が必要」「良質なハードづくりについてはさまざまな支援制度があるのだから、ストックの維持管理についての支援策や情報開示も用意すべき」「売却を前提に分譲マンションに住んでいる人は居住中の管理費等が安いほうがいいというが、建物の維持管理を考慮して適正な負担を考えていくべき」などの意見が出た。
 また、賃貸仲介時に大きな問題となる孤独死などの「心理的瑕疵」ついて、どこまで遡って説明が必要かの基準がないという指摘に対して、不動産業課課長の須藤明夫氏は「ガイドラインのあり方など、次年度に検討していく」としたほか、賃貸管理業の法制化や賃貸不動産経営管理士の国家資格化等についても検討していくとした。

 同部会は、3月1日の次回会合から、新ビジョン骨子の議論に入る。

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