(株)不動産流通研究所は17日、主要不動産流通各社の2020年度上期仲介実績調査の結果を発表した。各社にアンケートを送付し、20社から回答を得た。各社業績の詳細は、本文下にある一覧表を参照。
当期は、期中に新型コロナウイルス感染症拡大による緊急事態宣言が発令され、当該期間中は各社がリテール仲介店舗での営業を自粛、もしくは短縮営業などの措置をとった。多くの企業が継続顧客のフォローや完全予約制の顧客対応に専念し、積極的な新規顧客の獲得はストップしていた。法人仲介も取引延期や中止が相次ぎ、全般的に市場の動きは停滞した。
そうした市場環境を反映し、調査した20社中、ナイス(株)を除くすべての会社において手数料収入が減少した。ナイスも緊急事態宣言下では、完全予約制の対応などを行なっていたが、近年、不動産流通事業を主軸事業の一つと捉えて人員投入を進めるなど強化を続けていたことがこの状況下で奏功したという。
トップの三井不動産リアルティグループは、緊急事態宣言を受けて仲介店舗を休業。すべての数値を大きく減少させた。2番手の住友不動産販売(株)、3番手の東急リバブル(株)も同様に大きく数字を落とした。ただ、リバブルでは6月の通常営業再開後からは実需が堅調に動いており、購入相談件数が前年を大幅に上回り、7~9月は手数料収入・取扱件数共に前年を上回ったという。
回答した各社からのコメントでは、リテール仲介においては6月以降徐々に買い需要が回復しており、9月時点でほぼ前年並みまで戻っているという企業が少なくない。大和ハウス工業グループによると、30歳代のファミリー層に手が届く価格帯の物件が好調だったが、高価格帯の動きが鈍いままだという。一方で景気の先行き不安によって物件売却に関しては様子見するユーザーが多く、売却・購入の情報バランスは購入が強くなっているという声が多い。下期に向けて、売却需要をどう喚起・獲得するかが各社の課題となってきそうだ。
法人仲介に目を向けると、野村不動産グループが大型案件の獲得によって取扱高が増加、法人仲介の手数料が増加した。三菱地所リアルエステートサービスは対面機会の減少によって業績は低調に推移したものの、破産案件や再生案件の相談・成約が目立っているという。
◆主要不動産流通各社の2020年度上期仲介実績
※三井不動産リアルティの手数料収入は、売買仲介・賃貸仲介、賃貸管理収益などを含む仲介セグメントの収益。住友不動産販売の手数料収入には賃貸仲介含む。東急リバブルの手数料収入は賃貸仲介および賃貸関連収益を含む。東京建物不動産販売は2020年12月期第2四半期、ほかは21年3月期第2四半期時点。
※増減は前年同期比。