(一社)不動産証券化協会(ARES)は21日、2021年で20周年を迎えたことを記念し、「ARESマスターコンベンション/Jリート20周年記念シンポジウム~Jリート20年の軌跡と日本経済~」をオンラインで開催。運用会社の実務者や有識者がその歴史を振り返ると共に、さらなる成長に向けた課題等について議論を交わした。
基調講演として、Jリートの軌跡と今後の展望をテーマに、岡三証券(株)グローバル・リサーチ・センター理事長 エグゼクティブエコノミストの高田 創氏が登壇。現在のコロナ禍による影響については、「潤沢な金融緩和により市場への影響は軽微」とした。
今後のリート市場の成長については、「世界的な低金利で債券の利子収入が喪失する中、安定的なインカム確保の手段としてリートはますます注目されてくる」等と述べた。現在、Jリートは21兆円市場へと成長しているが、「海外と比較とするといまだ限定的」とし、まだ成長の見込みがあり、20年代には50兆円規模にまで拡大する可能性を示唆した。
(株)日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門シニアマネージャー/上席主任研究員の大森 充氏をモデレーターに、パネルディスカッションも開催。「カーボンニュートラルに向けた諸課題とリートの役割」をテーマに、野村不動産投資顧問(株)運用企画部長執行役員の下道 衛氏、ジャパンリアルエステイトアセットマネジメント(株)ESG推進室長の生井健一氏、三井住友信託銀行(株)不動産企画部 ESG企画推進担当部長の髙岡良典氏がパネラーとして登壇した。
カーボンニュートラルに向けた具体的な施策について、生井氏は「ポートフォリオの質の改善を図る。とりわけ空調設備の改修、照明のLED化が重要だ。同時に、GRESBをはじめとした外部評価、物件単位での環境認証を積極的に取得し、投資家にアピールする」と述べた。続けて下道氏は、「オーナー側だけでなくテナントにも協力してもらい、専有部でもできる限りCO2を削減していくことも大切だ」等と語った。
今後の課題については、「現状、環境対策を行なっても物件のバリューには反映されづらい。環境認証等の制度をしっかりと整備・周知してもらうことで、そうした物件の価値が高まり、テナントや投資家が選ぶ基準となっていけば良い」(髙岡氏)等のコメントが挙がった。
そのほか、マスター養成講座の成績優秀者の紹介や、「個人の資産形成とJリート」「Jリートの資産に照らした資本構成の現状と課題」等と題し、パネルディスカッションを開催した。