不動産ニュース / 調査・統計データ

2022/5/19

21年度仲介実績、価格上昇反映し全社が手数料増

 (株)不動産流通研究所は19日、「主要不動産流通各社の2021年度仲介実績調査」の結果を発表した。各社へアンケートを送付し、21社から回答を得た。(下段に一覧)

 調査した21社中、すべての会社が仲介手数料収入を伸ばした。特に、相鉄不動産販売(株)が前期比47.4%増、京王不動産(株)が同40.6%増と大幅な伸び率を示した。このほか、同30%以上の増加が4社、同20%増以上が6社となり、2ケタ増となった会社は18社となった。前年度はコロナ禍による緊急事態宣言が発出され、多くの会社が店舗での営業を停止した期間があり不調に終わった会社も多かったが、当期は過去最高業績となった会社も多く、コロナ禍前の19年度の仲介実績に比べても15社が手数料収入をアップさせており、不動産流通市場の急回復ぶりが鮮明に表れた。

 トップの三井不動産リアルティグループは、手数料収入と取扱高が過去最高となり、取扱件数も過去3番目の好業績だった。同社によると、首都圏のリテール、特に都心エリアの取扱件数が2ケタ増となり、事業全体を引っ張った。リテールの取扱平均単価はコロナ前の19年度と比較しても全国ベースで15%上昇しており、取引件数の増加が手数料収入の増加に直結する状況だったという。

 東急リバブル(株)はリテール・ホールセール共に好調に推移し、過去最高業績を記録して、初めて手数料収入額が2番目となった。住友不動産販売(株)も既存マンション取引を中心に取扱件数が過去最高を更新。野村不動産ソリューションズ(株)も過去最高業績を記録した。

 各社からのコメントでは、20年度に比べてコロナ禍の影響が限定的で、リテール・ホールセールともに好調ぶりを感じさせるコメントが多かった。リテールでは、「買いの反響は昨年よりも旺盛で、在庫がさばけていく一年だった」(近鉄不動産)、「買いニーズの高さがエンドユーザー・事業者ともに継続した結果、成約単価もアップした」(小田急不動産)、「外出自粛や在宅勤務の普及で住宅購入ニーズが高まり、低金利政策も相まって順調に推移した」(大成有楽不動産販売グループ)といった「買いの強さ」を示す会社が多かった。ホールセールでも「不動産投資需要自体が堅調な中で、JREITの資産入れ替えなど大型物件の成約が進んでいる」(三菱地所リアルエステートサービス)、「信託受益権の取り扱いは増加したが、現物不動産は減少した」(大和ハウス工業グループ)といった声が聞かれた。

 各社が共通して訴えるのは売り物件の不足。「市場全体としては売却物件が少なくマッチングが難しい」(三菱地所リアルエステートサービス)、「市場に出回る売り物件が少ない状況が続き、物件価格が上昇した」(住友林業ホームサービス)、「売却受託時の競争が激化」(小田急不動産)といった懸念を示す会社も少なくない。

 ただ、直近は若干潮目が変わりつつあることを感じさせる動きもある。(公財)東日本不動産流通機構の既存マンション在庫件数が2~4月の3ヵ月連続で前年同月比増加となった。また、三井不動産リアルティグループでは、年明けごろから売りの情報量が増加に転じ、買いの情報量がやや減り始めているという。一部には価格高騰に消費者が付いていけなくなり、若干の減速感を感じるという声も。新築マンションの価格高騰が続く現状、当面は既存流通価格も高水準で維持していくと言われるが、どの会社も価格の調整局面入りを視野に慎重さを増している。

【主要不動産流通各社の2021年度仲介実績一覧】

 

※三井不動産リアルティグループの手数料収入は、売買仲介・賃貸仲介、賃貸管理収益などを含む仲介セグメントの収益。住友不動産販売の手数料収入には賃貸仲介含む。東急リバブルの手数料収入は賃貸仲介および賃貸関連収益を含む。東京建物不動産販売と住友林業ホームサービスは21年12月期の数値、ほかは22年3月期 
※増減は前年比

この記事の用語

仲介手数料

媒介報酬(仲介報酬)とも。宅地建物取引業者の媒介により、売買・交換・貸借が成立した場合に、宅地建物取引業者が媒介契約にもとづき、依頼者から受け取ることができる報酬のこと(詳しくは報酬額の制限へ)。

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