(独)住宅金融支援機構が事務局を務める「マンションの価値向上に資する金融支援の実施協議会」は3月31日、2022年度の取組結果および今後の方向性について報告書を公表した。
18年度に同協議会の前身となる「マンションの価値向上に資する金融支援のあり方勉強会」を設立。マンション管理等関係団体、民間金融機関等“高経年マンションが抱えている課題”や“民間金融機関が認識している課題”などのうち、金融インフラの整備の観点で特に重要である課題を抽出し、取り組みの方向性を整理。19年度には同勉強会を発展的に解消して、新たに同協議会を設立し、課題解決向けた検討を進めている。
22年度は、通常の修繕・補修を超えたバリューアップ工事等(省エネ工事、専有部分を含めた大規模改修等)の実施に当たり、資金計画等についての課題を整理、有効な対応策を検討した。
マンションのバリューアップ工事については、足元の「長期修繕計画」に経営的視点を入れた上で、それを長期化した具体的な計画を策定するという動きがほとんどないほか、修繕・改修履歴を反映して価値評価がなされていないという問題がある。そこで、長期の経営的視点を入れたマンションの長寿命化工事の各種再生手法の考え方、具体的メソッドを整理。「修繕計画」という概念を超えた、マンションの「長期ビジョン」や価値評価のあり方についても検討することにした。課題を整理するため、バリューアップ工事等を実施したマンション管理組合等にヒアリングを行ない、工事による資金計画の課題、第三者管理方式の運用実態、管理組合が実施した専有部分の工事事例等についての課題をとりまとめた。
ヒアリングの結果、「第三者管理方式となるケースが増えているが、適切に管理・意思決定・チェック、利益相反を防ぐためのルールが十分に整備されていない」「長寿命化工事や建て替えのような多額の費用を要する工事を行なう際に、借り入れをしてまで工事を実施することに抵抗を感じる区分所有者がいるために合意形成が困難になることがある」等の課題が分かった。
23年度は、引き続きヒアリングを実施し、事例の収集を行なうことで、さらなる課題の洗い出しと、課題解決への提言等を検討する。