不動産ニュース / 政策・制度

2016/11/9

重説の“インスペクション”範囲、ガイドラインに準拠へ/国交省

重要事項説明におけるインスペクションの運用について、意見が交わされた
重要事項説明におけるインスペクションの運用について、意見が交わされた

 国土交通省は9日、28回目となる社会資本整備審議会産業分科会不動産部会を開催。5月に成立した改正宅地建物取引業法に盛り込まれた、インスペクションに関する内容について検討・意見交換した。

 会合では、事務局が2013年に策定した既存住宅インスペクション・ガイドラインと、瑕疵担保責任保険の付与を前提とした既存住宅現況検査(瑕疵保険事前調査)の概要について紹介。両者はおおむね共通するとした上で、ガイドラインでは依頼主の希望によってオプション対応としているマンション等共同住宅の共用部調査を、瑕疵保険事前調査では、必須となっている旨を説明した。

 その上で、国交省では、宅建業法上、宅建業者が重要事項として説明する「インスペクションの結果概要」について、ガイドラインと瑕疵保険事前調査の内容はほぼ同等であることから「ガイドラインに基づく検査結果報告書の概要と同程度の内容」とするべきとの考え方を示した。

 また、重説に用いるインスペクションの有効期間は、調査実施以降1年間を有効とし、有効期間内に複数のインスペクション結果があった場合は原則直近のものを利用、調査結果が異なる場合には宅建業者の判断で直近以外を利用することも可能とするべきとの考えも明らかにした。

 これに対し委員からは「共同住宅の共用部調査の扱いをどうするのか」「宅建業者もインスペクションの内容について詳細な説明を求められるケースは多いと想定される。詳細に説明するための資料が必要ではないか」などの意見が挙がり、今後の検討課題となった。

 また、改正宅建業法で定められた重要事項として説明すべき「建物の建築及び維持保全の状況に関する書類」については、新築時の検査済証や建築確認済証、確認申請時の図面類、耐震基準適合証明書などを挙げたほか、新築時以降の調査点検に関する実施報告書類として、インスペクションの調査報告書、既存住宅性能評価書なども盛り込んだ。ただし今回提示した必要書類については、売買契約を想定したものであり、賃貸契約の場合の必要書類については検討していくという。

 これに対して委員からは「既存住宅を売買する時点で新築時のこれら書類を残していない例も多い。新築時から各種書面を保存する公的なデータベースなどの整備が必要ではないか」という意見が挙がった。

 売買契約の締結後に売り主・買い主に交付する書面、いわゆる「37条書面」に盛り込む「構造耐力上主要な部分等」については、原則としてインスペクションなど専門的な第三者による調査結果を重要事項として買い主に説明した場合にのみ記載することを提案。このほかにも写真等を証拠として劣化事象等を売り主・買い主双方が確認、価格交渉や瑕疵担保の免責に反映した場合には37条書面に記載することも考えられるとした。委員からはこのインスペクション以外の部分については「実務を考えると、価格交渉の中で重要になったものを書面に落とし込むのが現実的ではないか」といった声が挙がった。

 次回の同部会は12月26日に行なう予定。

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住宅インスペクション

既存住宅を対象に、構造の安全性や劣化の状況を把握するために行なう検査・調査をいう。日本語の「住宅」と英語のInspection(検査)を組み合わせた造語である。

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