国土交通省は20日、国土審議会計画部会(部会長:増田寬也東京大学公共政策大学院客員教授)の3回目の会合を開催した。
部会では、新たな国土形成計画について検討。同計画については、「地方都市や中山間地域で生活サービスと所得・雇用の機会が維持・確保されていること(暮らし続けることができる)」といった「普遍的価値(目標)」の達成に向けた課題を踏まえ、「ローカル」「グローバル」「ネットワーク」の視点などから整理するとしている。中でもローカルの視点(地域生活圏)については、確保すべき機能等について十分な議論が必要なことから、前回会合から事務局より発表したたたき台をもとに議論を進めている。
今回も、前回委員から出た意見をもとにとりまとめ案を提示。地方で安心して暮らし続けるため必要な機能については、前回発表した(1)日々の日常生活を送ることができること、(2)日常生活に必要なモノ・サービスを購入するお金を「稼ぐ」ことができることに加え、(3)日常に潤いを与える文化的な生活を享受できることを追加。(3)における個別の課題として生物多様性・自然環境・景観、地域のエネルギー、文化芸術、土地・建物の管理などが挙げられるとした。なお、(1)~(3)の機能を支える要素として防災・減災・国土強靱化、情報通信基盤などが必要であるとしている。
必要な機能確保に向けた地域生活圏の考え方として、(1)~(3)において、基本的には一市町村を越えた圏域を意識すべきとした。(2)は、地場産業の企業群が共同で地域ブランドの構築や海外展開などの取り組みを行なっている場合や、企業、大学・研究機関等が協働して、デジタル、グリーン、バイオといった先端技術の開発を行なっている場合などがあると記載。(3)は、自然環境や文化・芸術などは市町村の行政区域と関係なく存在しているものであり、それら地域資源の管理の担い手として都市部の関係人口の取り込みも重要であるとしている。また、(1)~(3)においてデジタルの活用による国民の行動様式の変化を前提に考えていく必要性も示した。
また、圏域が将来も機能を確保するためには、現在の人口規模が10万人程度が一つの目安になるとした。日々の日常生活に必要な機能に関し、現在、人口規模が5万人以上10万人未満の市町村で、医療、福祉、買い物に係る機能はおおむね9割が確保、デマンド交通・コミュニティバスの導入はおおむね8割におよび、人口規模が5万人以上であれば機能を確保できる可能性がある。同時にデジタルの活用、「コンパクト+ネットワーク」の地域づくり等を強力に推し進めていく必要性を示した。時間距離は「60~90分」を一つの目安としながら、「機能」の種類に応じて柔軟に考えるのが現実的であるとしている。圏域の主体については、必ずしも市町村だけでなく、民間事業者・団体などさまざまなステークホルダーをあげている。
なお、これまでの会合で委員からの国民等の理解を十分に得る必要があるという指摘を踏まえ、事務局から「新たな国土形成計画の策定に当たっての考え方」についても提示。地域における「人々の活動」の在り方について、国民が共通して目指しうる具体的な方向性を示すべきとした。また、国や都道府県、市町村といった行政と、民間事業者・団体、住民といった民間のさまざまなステークホルダーが、それぞれ計画実施の主体・パートナーとして、これまで以上に連携・協働して国土・地域づくりを進めていくべきことを、計画全体を貫く考え方として強調。デジタル空間を前提として国土づくりを進めていくこととし、フィジカル空間とデジタル空間を一体のものとして考え、デジタルとリアルを組み合わせることで、豊かで活力ある国土・地域を実現していくとした。
委員からは「地域生活圏を考える際、都市部とつながる主要な鉄道の沿線エリアが一つの目安になると思うが、MaaSやオンデマンドバスなど将来的な地域交通の整備も踏まえて検討すべき」「多拠点居住を実践する際の住民税の負担なども考える必要がある」「多様な人が交流できることという視点がフィジカル・デジタル空間両方で重要。圏域同士を結ぶ仕掛けについても記載すべき」「サテライトオフィス、教育、行政機関など複合的な機能を持つ拠点が地域にあるといいのではないか」「SDGsの考え方の記載があると若い世代に訴求できるのでは」「デジタルに弱い層への教育も課題」等の意見があった。
次回会合(2022年1月27日開催予定)では、地域生活圏に必要な機能ごとの現状や課題、対応の方向性などを検討する予定。その後、同年2~4月に地域生活圏の機能の課題(ローカルの視点から議論が必要な横断的論点に係る課題)などやネットワークの視点からの課題(デジタル・交通、防災・減災、国土強靭化)などについて話し合う予定。5月にグローバルの視点からの課題等(国際競争力ある大都市圏)などを議論し、5~6月に中間とりまとめ案について検討。6月には最終とりまとめを発表する予定。