国土交通省は10日、「『ひと』と『くらし』の未来研究会」の初会合を開いた。
人々の生活様式が大きく変化する中で、居心地がよい日常の「くらし」の実現へ、各地域に住まい、集う「ひと」に着目。不動産業界が地域の新たな価値・可能性について業種を超えて創造することを目的に、不動産業界と地域コミュニティーデザインの最前線で活躍中のメンバーで構成される研究会を設置。問題意識や課題を共有、今後の政策に反映させる。
冒頭挨拶した不動産・建設経済局長の青木由行氏は「バブル崩壊後、人口が減る地域が広がり、人通りの少ないシャッター街や団地・マンション・アパートの空き家の増加、維持管理のできない公園など、質的にも量的にも“ウェルビーイング”な状態ではない地域が増えている。こうした問題に対処するには、地域の場や空間の機能を意識した取り組みが必要。不動産業はもともと場とか空間をビジネスにしてきた産業であり、従来の役割を超えて地域のコミュニティデザインの核となるようなプレーヤーとしてビジネスを創造・展開していくことが求められる。不動産業界だけでは難しいかもしれないが、地域の暮らしに関わるさまざまな産業の方々と連携していけば可能ではないか」と抱負を述べた。
地域コミュニティデザインを手掛ける実務者として、「大家の学校」を主宰する(株)nest代表取締役の青木 純氏、全国で移住定住プロモーション支援等を手掛ける(合)ミラマール代表社員の川人 ゆかり氏、都市と地域とをつなぎ関係人口を増やす取り組みを手掛ける(株)umari代表取締役の古田秘馬氏が参加。業界団体から、(公財)日本賃貸住宅管理協会、(公社)全日本不動産協会、(一社)全国賃貸不動産管理業協会の役員等が参加する。
初会合では、青木氏、川人氏、古田氏がそれぞれの事業について説明。その後、地域価値創造のために必要な施策等や今後議論すべきテーマについて、3氏を中心にフリーディスカッションを行なった。ディスカッションでは「空き家がこれだけ増えているのに、オーナーが困っていないとか、知らない人を地域に住まわせるとトラブルになるなどの理由で貸してもらえる空き家が少ない」(川人氏)、「多拠点で生活することが当たり前になるいま、宿泊と定住の境目を変える共同賃貸借のような制度が必要」(青木氏)、「車のリースのように、不動産も流動性の高い仕組みがあればいい」(古田氏)、「郊外の住宅街をどうするかは迫られた問題。税制や用途地域制度を見直すべき」(青木氏)、「商店街の地価を上げることをKPIとしているケースが多いが、こうした経済的側面だけを重視してしまうと、地域を活性化してくれる人が借りれなくなる」(古田氏)、「郊外や都市、都心と地方などが同じ制度ということがおかしい。制度のグラデーションが必要」(青木氏)などの意見があがった。
今後は、フリーディスカッションでの指摘が多かった「空き家」「高齢者」や今後の議論の中で指摘された課題について議論を進め、今夏をめどに中間整理を行なう。