不動産ニュース / 政策・制度

2021/11/4

低炭素建築物の認定基準、省エネ性能をZEHに整合

 国土交通省は4日、経済産業省、環境省との合同会議(議長:田辺新一早稲田大学理工学術院創造理工学部教授)等を開催した。

 国交省の「社会資本整備審議会建築分科会建築環境部会建築物エネルギー消費性能基準等小委員会」、経済産業省の「総合資源エネルギー調査会省エネルギー・新エネルギー分科会省エネルギー小委員会建築物エネルギー消費性能基準等ワーキンググループ」、環境省の「中央環境審議会地球環境部会住宅・建築物の脱炭素化に関する専門委員会」の合同会議。

 8月発表の脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会のとりまとめで示された内容を踏まえ、検討を進める。同とりまとめでは、建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(建築物省エネ法)に基づく誘導基準や長期優良住宅、都市の低炭素化の促進に関する法律(エコまち法)に基づく低炭素建築物等の認定基準をZEH・ZEB基準の水準の省エネ性能へ引き上げることのほか、住宅性能表示制度の上位等級として多段階の断熱性能を設定することなどが盛り込まれていた。

 それを踏まえ、(1)エコまち法に基づく低炭素建築物の認定基準および(2)建築物省エネ法に基づく誘導基準の見直し、(3)住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づく住宅性能表示制度におけるZEH水準を上回る等級の設定を検討していく。なお、(1)については3省合同で、(2)は国交省と経産省、(3)については国交省のみで検討する。

 今回の会合では、(1)~(3)の案が事務局より発表された。(1)の認定基準および(2)の誘導基準として、省エネ性能を、住宅はZEH基準の省エネ性能(再エネ除く)、非住宅はZEB基準(ZEB Oriented)相当の省エネ性能に整合させるとした。それに伴い、非住宅については、これまであった外皮基準を項目から外す。また、共同住宅では、外皮基準は単位住戸、一次エネルギー消費量は住棟全体で評価を行なうこととし、ZEHの評価単位と整合させる計画。
 (1)に関しては、共同住宅における評価単位の取り扱いにおいて、一次エネルギー消費量の評価単位は、再生可能エネルギーの導入を前提とするものについては、単位住戸の合計に共用部を含めた、住棟全体での評価を行なうものとする。
 また、ZEH・ZEBにおいて、太陽光発電設備の設置を要件化し、従来の選択項目(節水に関する取り組み、雨水・井戸水または雑排水の利用のための設備の設置など)のうち1以上の項目に適合するものと設定。太陽光発電設備の設置要件は、シンプルかつ条件不利地域や高層の住宅・建築物にも配慮した水準とする。

 委員は賛成の意見が多数だったが、「非住宅で外皮の項目を基準からなくすとしているが、建物の基本性能を求めない形式でいいのか。店舗や商業など用途によっては残した方がいいのではないか」「用途別に具体的な基準を示した方がいいのではないか」「具体的な指標を示すなど、消費者が積極的に採用したいと思える仕組みが必要」「改正後、地域別の実態調査を行ないデータを分析して、それを踏まえた制度の見直しは必須」などの指摘があった。

 (3)については、戸建住宅において、住宅性能表示制度の断熱等性能等級におけるZEH水準を上回る等級(等級6・7)については、暖冷房にかかる一次エネルギー消費量の削減率(概ね30・40%削減)を目安として設定する。暖房期のない8地域におけるZEH水準を上回る等級については、冷房一次エネルギー消費量の削減率や建材の使用実態を考慮し、等級6としてηAC=5.1を設定するとした。

 委員からは「等級が高ければ高いほどいいというイメージが先行しないように配慮が必要」「今回項目に入っていない共同住宅については性能がまったく異なるため、別軸で水準を策定する必要がある」「業界ではZEH+の取り組みがすでに進んでいることから、ZEH+の水準との整合性を取るべき」「実装する場合のコストアップなどを踏まえ、マーケットに適した基準の設定が必要」などの意見が挙げられた。

 今後は、次回会合を24日に開催し、(1)(3)の告示案、(2)の省令案について検討する。その後、パブリックコメントを経て、2022年1月に社会資本整備審議会建築分科会建築環境部会へ報告し、3月の公布を予定する。施行については、事業者の意見等を踏まえて時期を検討していくとした。

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ZEH

年間に消費する正味(ネット)のエネルギー量がおおむねゼロ以下となる住宅。ZEHは、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの略称で、和製英語である。

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