不動産ニュース / 政策・制度

2021/12/7

25年度から、すべての新築建物の省エネ基準適合義務化

 国土交通省は7日、社会資本整備審議会建築分科会の第22回建築環境部会および第19回建築基準制度部会(分科会長および各部会長:深尾精一首都大学東京名誉教授)の合同会議を開催。今後の住宅・建築物の省エネルギー対策のあり方について(第三次報告)および建築基準制度のあり方について(第四次報告)の報告案を検討した。

 報告案では、脱炭素社会の実現に向けた、建築物の省エネ性能の一層の向上、CO2貯蔵に寄与する建築物における木材の利用促進、既存建築ストックの長寿命化の総合的推進に向けた方向性を示した。

 新築建築物における省エネ基準への適合の確保に向けて、2025年度以降新築するすべての建築物(住宅を含む)に省エネ基準への適合を原則義務付けるべきとした。省エネ基準への適合審査は、建築基準法の建築確認・検査による(審査対象も整合させる)。省エネ基準への適合確認が容易な場合(仕様基準)は省エネ適判を不要とし、併せて仕様基準のさらなる簡素化・合理化を進めるとした。

 省エネ基準の段階的引き上げを見据えたより高い省エネ性能の確保に向けて、各種誘導基準についてZEH・ZEB基準の水準の省エネ性能に引き上げ、住宅性能表示制度については省エネ基準を上回る多段階の等級を設定する。住宅トップランナー制度の対象に分譲マンションを追加し、住宅トップランナー基準を引き上げるとした。また、建築物の販売・賃貸時における省エネ性能の表示制度の強化も図る。

 既存建築ストックの省エネ化については、増改築部分のみ省エネ基準への適合を求めるなど合理的な規制が求められるとした。部分的・効率的な省エネ改修、耐震改修と合わせた省エネ改修などを進めるほか、省エネ改修について補助・税制・機構融資を総動員して促進。省エネ改修等により高さ、建蔽率、容積率の限度を超えることが構造上やむを得ない建築物を特定行政庁が個別に許可する制度等の導入等を示した。
 建築物における再生可能エネルギーの利用の促進に向けては、地域の実情に応じた制度の導入などが必要であるとした。

 小規模木造建築物等の構造安全性を確認するための措置として、高さ16m以下の3階建ての建築物の構造計算の合理化とこれに合わせた建築士の業務区分の見直し、構造計算が必要となる木造建築物の面積規模を300平方メートルまで引き下げることなどをあげた。中規模建築物の木造化や混構造などの部分的な木造化の促進に関しては、中大規模木造建築物の防火規定の合理化を図り、延床面積3,000平方メートル超を含めあらわしでの木造化を可能とするべきとした。防火上区画した部分への防火規定の適用を除外し、木造化を可能とするほか、防火上分棟的に区画された部分は別の建築物とみなして防火規定を適用する方法を示している。
 既存建築ストックの長寿命化に関しては、既存不適格建築物に対する防火避難規定・集団規定の既存部分への遡及適用の合理化、連担建築物設計制度等の対象に大規模な修繕・大規模な模様替えの追加、明るさの確保を前提とした住宅の居室の採光上有効な開口部面積に関する規制の合理化などを提示した。

 委員からは「再エネの利用促進については、太陽光発電のみを指しているのか、それ以外も含めるのか明確にすべき」「国民の理解を得るためにも、省エネ性能を高めることが健康面や快適性の向上にもつながることや、世界的に見ても高い省エネ性能は今後の不動産価値の指標にもなっていくことなどを盛り込むべき」などの意見が挙がった。

 今後は、今回の会合で出た意見を反映した上で、とりまとめ案を作成。近日中に同案のパブリックコメントを開始し、その内容を反映した上で最終とりまとめを作成する。22年1月20日に第23回建築環境部会および第20回建築基準制度部会合同会議を開催し、最終とりまとめを検討。同日、建築分科会にその内容を報告する予定。

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省エネ基準

建築物の使用によって消費されるエネルギー量に基づいて性能を評価する場合に、その基準となる性能をいう。「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」(建築物省エネ法)に基づいて定められている。

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