不動産ニュース / 政策・制度

2022/2/14

国交省、重説書面等電子化解禁へ遵守事項等を整理

 国土交通省は14日、「ITを活用した重要事項説明に係る社会実験に関する検証検討会」(座長:中川雅之氏(日本大学経済学部教授))の8回目となる会合を開催。5月18日までに施行されるデジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律による宅地建物取引業法の改正で、重要事項説明書等の電子化が解禁されることを受け、電子化に当たり遵守・留意すべき事項を議論した。

 会合では、重要事項説明書等の電子書面交付に関する社会実験結果について報告を行なった。賃貸は2019年10~12月および20年9月~21年12月、売買は21年3~12月の間に書面の電子化を実施した宅建士、説明相手に社会実験実施後アンケートした。電子書面交付の実施件数(重要事項説明書、契約締結時書面、媒介契約締結時書面の合計)は、賃貸が1,055件、売買が67件。回答者数は宅建士が賃貸1,065件、売買60件。説明相手は賃貸152件、売買156件。

 アンケートでは、電子書面交付によるトラブルについて賃貸・売買、宅建士・説明相手ともにほぼすべての回答者が「トラブルがない」と回答。電子書面の閲覧についても、説明相手のほぼすべてが「容易に閲覧できた」と答えた。電子書面の見やすさについては、売買では90%が「全体的に見やすく、確認に支障がなかった」としたが、スマートフォンの利用者が多い賃貸では同回答は51%にとどまった。理解のしやすさについても、説明相手の約半数が「紙の書面と同程度」と回答。売買では27%、賃貸では11%が「電子書面のほうが理解しやすい」と答えた。また、ほぼすべての宅建士が電子書面の作成が容易で、電子書面交付に伴う作業や説明に支障がなかったと回答。ほぼすべての宅建士が「電子署名」を利用していた。説明相手の43%(賃貸)、51%(売買)が「今後も電子書面交付を利用したい」と答えた。

 同省は、書面の電子化解禁に向け、社会実験に際し定めた電子化に係るルールに社会実験結果を反映させ、「遵守・留意すべき事項(案)」としてまとめた。遵守すべき事項には、新たに「ダウンロード形式の場合、相手方にダウンロード可能である旨を、専用ページでの閲覧形式の場合、相手方に閲覧可能である旨を通知すること」、留意すべき事項については「相手方が電子媒体を用いた取引に不慣れな場合があるため、操作方法を丁寧に説明することが望ましい」「相手方がスマートフォンのみを用いる場合は、パソコンとの表示上の違いや改変されていないことの確認方法の違いに留意し、画面共有・ハイライトや強調・拡大縮小などの機能を活用し、特に丁寧な対応を行なうことが望ましい」「電子書面の保存の必要性や保存方法についても説明を行なうことが望ましい」などを追加する。

 委員からは、電子書面の「保存の必要性」についてきちんとルール化すべきであるといった意見や、売買の重説書面は文量が多いことから、説明の相手にはスマートフォンではなくパソコンやタブレットなど大画面の機器を薦め、重説にかかる時間の目安を伝えるべきといった意見が挙がった。

 同省は、委員の意見を踏まえた「書面の電子化に当たって遵守すべき事項・留意すべき事項」を、電子化解禁までに政省令、宅建業法ガイドライン、マニュアル等に反映する。書面の電子化解禁をもって、同検証検討会での議論は終了する。中川座長は「IT重説の可否から書面電子化まで、前身の委員会含め8年間にわたり議論してきた。不動産行政は国土交通省の中でもプロテクノロジーの分野であり、さまざまな問題がありながら、それを社会実験で解決し政策に導入することは重要。そのために、立場の違う委員の皆さんと不動産流通を活性化させていくための議論ができたことに感謝したい」などと謝意を述べた。
 また、同省不動産・建設経済局不動産業課長の井﨑信也氏は「今日の議論を踏まえ、書面の電子化が法令上可能となる5月までに、必要なルール整備を行ないたい。今後のIT重説や書面電子化の運用・実施状況や技術の進展、社会情勢の変化などを踏まえ、必要な対応を図っていく」などと語った。

この記事の用語

IT重説

不動産取引における重要事項説明を、インターネット等を活用して対面以外の方法で行なうこと、またはその方法を導入すること。 重要事項説明は、宅地建物取引士が対面で行ない、書面を交付しなければならないとされていた(宅地建物取引業法)。

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