(公社)全国宅地建物取引業協会連合会の不動産総合研究所は、「空き家・空き地等の流通と利活用を推進するための政策研究会」(座長:中川雅之日本大学経済学部教授)を発足。20日、初会合を開いた。
同協会では、空き家・空き地問題の解決を重要な課題と位置付け、都道府県宅建協会と自治体との空き家協定等の推進や国への政策提言を行なってきた。しかし、協定に基づく取り組みや空き家バンクの実績等は地域による温度差が大きいこと、地方部の空き家空き地は低廉な物件が多く宅建業者が関与しづらいといった理由から、空き家・空き地の利活用が進まないという問題があった。
そこで研究会では、「工夫や適切な支援があれば市場流通が期待できる」空き家空き地の流通・利活用に向け、空き家・空き地を活用した地域コミュニティやまちづくり、移住や二拠点居住、住宅弱者向け住居としての活用などの方策の検討、空き家空き地利活用に向けたさらなる公的支援や政策の在り方を議論していく。全宅連総研が「空き家空き地」をテーマに研究会を設置するのは初めて。
研究会は中川座長のほか、全宅連総研所長の吉村岩雄氏((公社)奈良県宅地建物取引業協会会長)、全宅連政策推進委員長の泉 藤博氏((公社)滋賀県宅地建物取引業協会会長)、学識経験者、弁護士など6人で構成。国土交通省の不動産建設経済局不動産業課と土地政策課、住宅局住宅総合整備課と住宅・経済法制課もオブザーバーとして参加する。
会合の冒頭挨拶した吉村所長は「空き家空き地問題については、全宅連でも重要な課題として長らく取り組んできた。しかし、まだまだ課題は山積しており、さらなる政策の推進と、われわれ業界の努力が必要だと痛感している。研究会での議論を有意義なものとしたい」と語った。
中川座長も「空き家空き地については、全宅連さんも行政も地方公共団体も大きな問題と捉えている。空き家特措法は一定の成果があがってはいるものの、人口減少による空き家の増加には追い付いていない。全宅連さんはじめ民間企業ができること、行政が環境を整えていくべきことを議論する場として本研究会を設けてくれたことは意義が大きい。民間側が取り組むべきテーマについて、この研究会が中核となってとりまとめていくことが、わが国の空き家問題解決に大きな貢献となると考えている」などと抱負を述べた。
今回の会合では、空き家・空き地の現況や国・地方自治体の政策と、全国で空き家・空き地問題に取り組む事業者や不動産業界団体へのヒアリング結果について情報を共有した。ヒアリング結果とその後の委員同士の意見交換では「空き家に関する情報は集まりやすくなっているが、相談はされるものの問題解決まで至らないケースが多い」「市場性の低い物件については参画の動機が薄く、採算性確保は課題」「防火規定などを無視したDIYが増えている」「地方自治体のマンパワーが足りないため、空き家空き地情報へのアクセスが難しい」などの課題が挙げられた。
同研究会は、年度中にあと3回をめどに開催。議論を基に空き家空き地の利活用に向けた提言等をまとめる予定。