不動産ニュース / 政策・制度

2019/2/13

IT重説、賃貸取引の書面の電子化で社会実験

 国土交通省は12日、5回目となる「ITを活用した重要事項説明に係る社会実験に関する検証検討会」を開催。法人間売買取引に係るIT重説社会実験の継続と、新たに個人を含む売買取引に係るIT重説、賃貸取引を対象にした重要事項説明書等(宅建業法35条、37条書面)の電磁的方法による交付(書面の電子化)に係る社会実験の開始を決定した。

 法人間売買取引におけるIT重説の社会実験は、2015年8月末から約3年にわたり実施されているものの、16年4月の宅建業法改正により宅地建物取引業者間の重説が不要になったことから、実施件数は3件にとどまっている。そのため、本格運用への移行の可否を判断できないとして、社会実験を継続する。

 個人を含む売買取引の重説IT化については、17年10月の賃貸取引での本格運用開始から19年1月までに約2万5,000件のIT重説が実施され(専用システムサービスを介したもの)、特段のトラブルが見られないことから、賃貸取引の本格運用のマニュアルを参考に、社会実験を安全に実施するためのガイドラインを策定した上で、19年6月めどに1年間にわたり登録事業者による実験を行ない、検討会で検証する。
 実施にあたっては業界団体関係者等から、売買の重説は賃貸よりはるかに項目が多く時間がかかること、各種図面などスマートフォンの小さな画面では確認できない可能性などが指摘されたため、実験に当たっては「重要事項説明に必要な書面の事前送付」「相手方への説明時間の事前通知」と「録音・録画の取得」を義務付ける。また、取引価格が高額になることから、さらに慎重な本人確認の必要性や、読み上げるだけの重説ではなく、図面や画像を使ったITならではの重説の検証なども指摘された。

 賃貸取引の書面の電子化は、業務効率化やコスト削減などから、インターネットを介したワンストップの賃貸取引を求める声に対応したもの。重要事項説明書等をPDF等のファイルで電子化し、電子署名を施したうえで説明の相手に送付(Eメールもしくはダウンロード形式)。そのファイルを用い重説を行ない、録音・録画する。宅建業法では取引士の記名押印が必要だが、社会実験では登録事業者の電子署名により実施する。また、書面による重要事項説明書等も必ず事前交付し、重説終了後は書面の重要事項説明書に記名押印して送付する。ガイドラインを策定したうえで、5月をめどに3ヵ月間にわたり実験する。委員からは、回線の不調等のトラブルがあったときは、書面による重説への切り替えを認めること、スマートフォンでファイルが開けない場合の対応などが指摘された。

 いずれの社会実験についても、今年8月以降開催予定の次回検討会で実験結果を検証する。書面の完全な電子化については宅建業法の改正が必要なため「社会実験を踏まえ、いずれかのタイミングで業法改正を検討することになる」(同省土地・建設産業局不動産業課課長・須藤明夫氏)としている。

この記事の用語

重説IT化

不動産取引における重要事項説明を、インターネット等を活用して対面以外の方法で行なうこと、またはその方法を導入すること。 重要事項説明は、宅地建物取引士が対面で行ない、書面を交付しなければならないとされていた(宅地建物取引業法)。

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