(一社)日米不動産協力機構(JARECO)は5日、衆議院第一議員会館(東京都千代田区)で2024年度総会およびカンファレンスを開催した。
総会では、23年度の事業報告、24年度の事業計画が発表された。24年度もシアトルへのホームステイプログラム、NAR国際大会への出席などを実施。例年実施している中川雅之理事長(日本大学経済学部教授)を囲んでの研究会は、「不動産再生の最前線」をテーマに、不動産コンサルティングで地域再生に取り組んでいる実務者等を迎え7月から月1回ペースで開催する。全米リアルター協会(NAR)のABR(認定バイヤーズエージェント)資格や、CIPS(認定国際不動産スペシャリスト資格)講座を開催する。
カンファレンスでは、「不動産の持続可能な未来」をテーマに、ESG投資への取り組みや気候変動や災害激甚化に対応した不動産業のあり方を議論した。国土交通省不動産・建設経済局不動産市場整備課不動産投資市場整備室長の本田雄治氏は、ESG投資拡大に向けた同省の取り組みを解説。「ESGを重視した不動産投資は欧米に後れを取っていたが、国土交通省でも不動産TCFD対応ガイダンスの公表・改定や、社会的インパクト不動産の実践ガイダンスの公表などを通じて、事業者や投資家等の理解を求めてきた。ESGのSは社会(貢献)のSであり、サスティナビリティのSでもあると認識してほしい」などと訴えた。
続いて「気候変動や災害激甚化に対応する不動産のあり方」をテーマにしたパネルディスカッションを開催。(株)ザイマックス不動産総合研究所主任研究員の大西順一郎氏、(一財)日本不動産研究所業務部次長ESG支援チームリーダーの古山英治氏、2024年ワシントン州不動産協会会長のジェフ・スマート氏がパネリストとして持論を語った。
大西氏は「JREITに組み入れられているオフィスビルのほとんどがグリーン不動産である一方、市場全体を見ると中小ビルのほとんどはグリーンビルディング認証を取得していない。既存ビルをグリーン化することでどのようなベネフィットが得られるのか、利回りやリスクはどう変わるのかをオーナーや投資家に分かりやすく説明していく必要がある」とした。古山氏は「ESGにおける最重要課題はレジリエンス。不動産のレジリエンスを向上させるためには、評価ツールなどの普及と活用でそれらを可視化していく必要がある」とした。また、ジェフ氏は「われわれは、不動産開発において緑を増やしていくとうたっている。行政の動きや条例、建築規制、地域住民の意見などを常にウォッチし、テクノロジーをうまく活用して持続可能な開発に取り組んでいくべき」とした。